第28話 魔族の子

 オズとアリアが入学してから、1ヶ月が経った。

 今日も、普段通りに屋外での活動が始まろうとしている。


「全員揃ったなー。それじゃあ、今日からこの講座はある素晴らしい先生に任せる」

「誰なんだろうね?」

「魔術のスペシャリストだったらいいな」

「同じくぅ」


 素晴らしい先生に教えてもらえる、というのでみんなワクワクしている。

 アリアは、剣術が得意な先生であってほしいと思っている。

 オズとシェリーは、魔法が得意な先生であってほしいと思っている。


「やっほー」

「緊張するなー」

「シェリー、じゃなくてレイじゃん……」

「もう1人は、お、おい、マジかよ……」


 2人の男女がこちらに向かって歩いてくる。

 1人は、シェリーの母親のレイだ。

 魔族の血を引いているだけあり、魔族のオーラが感じられる。

 オズはもう1人の方を見て、もの凄い動揺を見せた。

 その男は、魔族のオーラではなく、魔王に近いオーラが漏れている。


「今日から、剣術の活動を指導する、レイでーす。よろしくー」

「僕は、魔法の方を担当します。ジークです。よろしく」

「じ、ジーク、なんで人間界に……」

「オズ、知っているの?」

「い、いや、知らないよ」


 なんともう1人は、魔王が直々に指導した『ジーク』だったのだ。

 これから、Sクラスを教えるのが、元魔王の弟子のジークと元勇者の側近のレイとなった。

 オズとアリアは、半ば絶望している。

 それは、自分が転生者であると、みんなにバレてしまう可能性が高くなるからである。


「えぇー、教えるのが、なのー」

「いいじゃないのー」

「まだまだ教えてないことがあるからね」

(ジークの子供なら、瞬間移動テレポートを使えてもおかしくないな)

(って、そんなことより、なんで人間と結婚してるんだよ!)

(しかも、子供ってできるものなのか?)


 魔族と人間との間には、子供はできない。これは、昔から言い続けられている。

 人間は、魔族が邪悪だからと。魔族は、人間が弱いからだと。

 このことが、魔族と人間を対立させる原因の1つとなっていた。

 しかし実際にシェリーは、人間と魔族の血が流れている。

 レイの場合は、親が人間を食べ過ぎたからだといわれている。

 このことが、オズとアリアに疑問を持たせていた。


「それじゃあ、2班に分かれようか」

(本当は魔法がしたいけど、レイさんの方に選ばれますように)

(剣術極めたいけど、レイとの関りを減らしたいよー)

「オズ君は、魔法の方だね」

「あ、はい」

「アリアちゃんは、剣術の方ね!」

「はい……」

(レイ、笑っていやがるよ)


 本人たちの希望は叶うことなく、選択された。

 2人は、渋々認めて活動に参加する。

 レイは、沢山いじる事ができるので、嬉しそうにアリアを見ている。


「アリア、ちょっといいか」

「あ、うん」


 オズは、アリアをみんなから離れたところへと呼び出した。


「男の奴、魔族だぞ」

「え⁉ 本当なの⁉」

「ああ、オーラが漏れてる。それで、女の方も見えるんだが、何か知らないか?」

「え、えっとー」


 アリアは、オズからジークが魔族だと聞いて、アリアはシェリーの存在を納得した。

 シェリーは、魔族であるのだと。

 このことが広まると、いいことは無いと思ったアリアは、転生の事を除いて、レイが魔族の血を引いていることを話した。


「そうだったんだな。大丈夫だとは思うが、一応注意はしておこう」

「わかった。これは、シェリーにもバレないようにね」

「分かってる」

「2人ともー、そろそろ始めるよー」

「はーい」


 ジークに呼ばれた2人は、みんなの元に戻り、活動を始める。

 オズとアリアを越す可能性があるとすれば、魔族として覚醒したシェリーだけだろう。

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