第26話 初めてのお友達

「オズー、次の時間抜け出そうよ」

「駄目だ、魔法の勉強は奥が深い。もっと知りたい」

「実践した方が早いよー」

「構造を知ることに意味があるんだよ。それに、座っとくだけだろ?」

「1時間も座っておくなんて無理だよー」

「駄々こねるなって。みんなも真面目に受けてるだろ」

「もういい、寝るもん!」

「いっつも寝てるだろ」


 次の時間は、剣術や、魔法の原理などを学ぶ講義だ。

 1つ1つの動きの意味や、状況に応じた戦い方など、知らないことがたくさん知れるいい機会だ。

 しかし、アリアは座学になると、必ず寝るのだ。

 それなのにアリアは、オズが分からなかったところを簡単に、そして分かりやすく説明してくれる。


「それにしても、なんで聞かなくても分かるんだ?」

「実際にしてたらわかるでしょー」

(本当は、前世で嫌というほど聞かされてきたからなんだけどね)


 なぜわかるのかと言うと、勇者だった時にひたすら勉強してきたからなのである。

 しかし、100年も経てば、新しいことも増えている。

 それなのに全部分かっているのは、新しいことは、全部アリアが考えたことであったからである。

 その為、自分の思うことが正解になるのだ。


「それじゃあ、始めるぞー」

「スヤスヤ……」

「もう寝てるし」

「アリアの奴、もう寝てる」

「今日の内容は、起きていても難しい内容です」

「アリアちゃん、大丈夫かな」

「人の心配より、自分の心配をしたまえ(キラーン)」

「この間に追いつくよぉー」


 4人は、アリアが寝ているのを見て、さらに燃えてきたようだ。

 実技で負けて、座学でも負けたら、彼らのプライドはボロボロになってしまう。


「アリア!」

「は、はぁいー」

「余裕そうだな。それじゃあ、この瞬間移動テレポートの原理を説明しなさい」

「あ、アリアが使ってるやつだ」

「こ、これは、まだ謎も多い魔法で、説明なんてできる訳ないだろ!」

「流石に使えても、原理は分かってないでしょう」

「これは、無理だろうね(キラーン)」

「私も使いたいなぁ」


 寝ているアリアに腹が立ったのか、先生は現時点では、答えることのできない質問をしてきた。

 瞬間移動テレポートは、勇者しか使うことができないだけでなく、目に見えなので何が起きているのか全く分からないのだ。

 それに加えて、弱点が見つからない様にする為、勇者は周りから秘密にするように言われていいたのである。

 その為、全ての事は推測でしかないのだ。

 こんな質問に答えられる訳がない。

 教室は、静まり返り、アリアに注目が集まる。


「はーい。瞬間移動テレポートは、閃光ライトニング透粋スルーステルスの融合です」


「……」


「……は?」


 アリアの回答に全員が固まってしまった。

 アリアの回答は、これまでにない内容で、現実味が無く、信じがたい。


「ではオズ君、言われた通りにやってみて下さい。できる訳がない」


 先生は、アリアをバカにするような口調で言った。

 恐らく、分からないから適当に発言したと思っているのだろう。


「わ、わかりました。閃光ライトニング透粋スルーステルスを上手く組み合わせてっと」


 ヒュン!


「え⁉」

「あ、できた」

「まだ荒いけど、これなら使えるね」


 なんと、1発で成功して見せたのだ。

 オズが見せた瞬間移動テレポートは、アリアが使っているのに近いものだった。


「俺もしてみる! えい!」


 ゴツン!


「イテテー。できねぇ」

「調節が難しいからねー」


 ジャックが言われた通りにしてみたが、壁に突進しただけだった。

 瞬間移動テレポートは、魔力の細かい調節が必要なので、オズのように超天才でなければ簡単にはできない。


「私、やってみるー。ほい」


 ヒュン!


「できた。やったぁー」


 次にやってみたシェリーは、1発で成功さした。

 シェリーは、魔法に関しては天才肌だ。

 瞬間移動テレポートが使えたことが嬉しいのか、初めての笑顔を見せた。


「こ、これは、本当だったのか……」


 先生は、アリアの発言が正解だと知り、腰を抜かしている。


「アリア、教えてくれてありがとぉ。気に入ったよぉ。なかよくしよー」

「是非! よろしくね!」

「ほーい」


 シェリーは、アリアのことを気に入ったらしく、2人は友達になった。


「友達、できた!」


 アリアは、オズ以外の初めての友達ができたことに、これまでにない程の喜びを感じていた。

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