第24話 自己紹介

「それじゃあ、早速始めるぞー」

「どんなことするのかな?」

「楽しみだ」


 オズとアリアは、検査終了後にSクラスで講義を受けている。


「最初の講義だし、全員いるよなー」

「せんせー、1人帰りましたー」

「やっぱり1人はいるか」

「イケてるじゃないか」

「イケてるわけないじゃん」


 広い教室には、生徒は5人しかいない。

 他のクラスには、30人程度がいるので、それに合わせた広さで建てられている。

 机は、教室の前方に6つ綺麗に並べられている。

 1つ机が余っているので、Sクラスは6人のようだ。

 先生は、初日から全員が揃わないことに驚かない。


「流石Sクラスだな」


 先生は、むしろ感心している。

 Sクラスの生徒は、天才たちの集まりでもあるので、普通の家庭の様な生活をしている者はとても少ない。

 その為、常識のある者は滅多にいない。

 むしろ、いる方が珍しい程だ。


「せんせー、今日は何をするんですかー?」

「今日は、オリエンテーションだ。全員の仲を深めてもらう」


 このSクラスは、実際に戦いに行き、技術を向上させる講義が多い。

 その為、クラスメイトと仲良くなることで、助け合いの気持ちを生み、さらなる力の向上を目指すのだ。

 しかし、Sクラスで初日から友達を作ることのできた者はいない。

 プライドが高いのか、衝突ばかり起きる。

 問題児が多いのがSクラスの特徴だ。


「オズ、友達を作るチャンスだよ!」

「そんなに興奮するなよ」

「オズだって楽しみでソワソワしてるくせに」

「し、してないし!」

「ゴホン! それじゃあ、端から自己紹介を」

「ほーい。私はシェリー、よろしくねー」


 始めに自己紹介をした女性『シェリー』は、魔法が得意であるそうだ。

 長く白い髪と、眠たそうな目が印象的で、話し方のせいか、どこかふわふわした様な雰囲気が感じられる。


「オズとどっちが魔法上手なんだろうね」

「僕であってほしい」

「じゃあ、次」

「はい。名前はサーシャです。よろしく」


 次も女性で『サーシャ』だ。

 身長が高く、赤い短髪で見た目は熱血系だが、眼鏡をかけていて、話し方からは真面目で、頭が良さそうに思える。

 剣術と作戦作りが得意であるそうだ。


「頭良さそうだねー」

「女子のデカさじゃないぞ」

「じゃあ、次」

「おう! 俺はジャック! よろしくな!」

「暑苦しー」

「絶対バカだわ」


 次に、元気よく自己紹介をした男性は、『ジャック』だ。

 暗く長い髪に、優しそうな目で性格とは真逆の見た目だ。

 身体はあまり大きくないが、剣術を得意とするらしい。

 みんなからの印象はよくないようだ。


「つぎー」

「アリアです! みんなと仲良くなりたいです! よろしくー!」

「か、かわいいー!!!」


 アリアは、元気いっぱいに声を出して、自己紹介をした。

 すると、ジャックが一目ぼれしたようで、心の声が漏れたようだ。


「あ、ありがとう」

「仲良しになれたじゃん」

「うん、でもなんか違うような」


 これに関しては、アリアも納得してないようだ。


「最後だなー」

「はい。オズです。よろしく」

「冷めてるねー」

「アリアちゃん、可愛すぎる!」

「静かにしてくれないか」


 オズの自己紹介は、ジャックの漏れた心の声で遮られ、みんなからの印象は特になかった。


「それで、欠席しているのがダリアだ」


 シェリー曰く、欠席している男性の『ダリア』は、1言で言うとカッコつけらしい。

 ジャック以外は、あまり期待していないらしい。

 ジャックだけは、


「楽しみだ!」


 と言い、ワクワクしている。

 そうして、すぐに講義は終わった。

 アリアとジャックの関係以外は、特に発展は無かった。

 天才たちが集まったSクラスで、オズとアリアはどれ程の実力なのか。

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