四章 ルーテナ 後編
第113話 後編の序的な。
リュードの街の聖堂は、二つの国境を挟んで両側に入り口があった。
大聖堂と言ってもいいほどの大きさの聖堂の中央にはには真横を向いた神のモニュメントが鎮座する。そしてその前には大きな鉄格子で二つの国を分けていた。
信者たちは、横向きの神に向かって両側から手を合わし祈りをささげるのであった。
ただ、お互いに信者たちがそこから両国を行き来することは出来ないが、聖堂に勤める聖職者たちはその限りではなかった。ウィルブランド教国の超国家的な存在もあり、自由に国境を通ることが出来た。
深夜。その聖職者の通用口を通る人影があった。
「まさか、こういうルートがあるとは……思っても見なかったろ?」
「なんで……教会の人が……」
「真実に近い人間ほど、真実に気が付いてしまう。……よくある事さ」
「そんな……」
ナハトの一言に前を歩いていた司祭がチラッと後ろを向く。司祭は後悔なのか不安なのか、何とも言えない顔をしていた。
「あの気持ち悪いガキがな、国境に張り付いてる」
「鷹斗君が?」
「なんだあれは。不死身なのか?」
「……貴方の攻撃が弱かっただけじゃないの?」
「ああ? そんな訳ねえだろ? 沸騰した眼球まですぐに治っていく……ぞっとしたぜ」
喋りながらも、自分の雷撃を受けながら向かってきた少年の姿を思い出し、ナハトがブルっと体を震わせた。
誰もいない通路を歩きながら桜木がボソッと呟く。
「なんで私が……」
「自分の心の弱さを嘆け」
「……」
「あの少女じゃなくてもよかったとはな」
「人でなし……」
「ひゃっひゃっひゃ……まさか、そこら変に歩いてる奴らの命まで脅しの素材になるなんてさ。この世界で生まれ育った俺達には理解できねえよ」
「だって……」
「ま。五年後十年後も同じいい子ちゃんで居られたら。本物だ」
ナハトの言葉の通り、桜木が逃げようとすれば目の前にいる無辜の市民を殺す。そう脅され。結局桜木はナハトの言うとおりになっていた。
寝静まった聖堂を抜け連邦側の通用口から出る。
「こんな時間じゃ、城門空いていないでしょ?」
「ん? ここは二つの国で管理されているおかしな街だ。増築に増築を繰り返し、互いに国の見栄を体現している。そういう街は色々とな、綻びがあるんだ」
ナハトは事も無げに言ってのける。
先を歩くナハトの後ろを桜木がついていく。
※さて。ゆっくりと始めます。よろしゅうに。
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