スクナビコナとアマカニ合戦⑤―ネズミたちの合流!さあ、アマノジャクたちのもとへ突き進め!!―

 スクナビコナ一行はネズミの穴の入り口に着くと、穴の中に入っていった。

 ただしキジヒメだけは体が大きすぎるため中には入れず、外で待つことになったが。


 穴の中では、スクナビコナたちがハツカノミコトたちにカニヒコの〝仇討ち〟への協力を頼むと、彼らは快諾した。ハツカノミコト自身は穴の中にとどまることになったが、何十匹ものネズミたちが〝仇討ち〟に参加することになったのである。


 こうしてカニヒコはスクナビコナ、チュルヒコとネズミたち、キジヒメといった面々とともにアマノジャクたちのすみかを目指すのだった。



 一行はアマノジャクたちのすみかへと向かう。カニ、小さな神、キジ、ネズミたち…、はた目から見れば奇妙な一団が、今は〝仇討ち〟という共通の目的のために一つにまとまり、すみかを目指して行進しているのである。


「…着いたぞ……」


 先頭を歩いていたスクナビコナは立ち止まると、前方に小さく見える一軒家を指差す。


「みんな、あそこに見えるのがアマノジャクたちのすみかだ」


 スクナビコナの言葉を聞いて一行は皆、一軒家を確認する。


『あれがあいつらの家なのね?』


 キジヒメはスクナビコナに尋ねる。


「ああ、そうさ」

『だったらさっさとみんなで乗り込んじゃえばいいんじゃない?』

「いや、それはダメだ」

『なぜ?こちらはこれだけ大勢いるのに…?あなたって案外臆病なのね』


 キジヒメは軽蔑するような調子で、スクナビコナに言い放つ。


「僕はビビッてるから今すぐ乗り込まないんじゃないよ!」


 スナビコナはいら立った様子を見せながら、キジヒメの言葉に返す。


『ケーン!じゃあなんでよ?』

「いきなり乗り込んだらあいらを取り逃がす可能性がある」

『取り逃がす?そんなことあるわけないじゃない。これだけ頭数が揃っているのよ』

「これだけの大人数で一斉に乗り込むと、返って現場が混乱したりするものなんだよ。その隙にあいつらに逃げられる危険性があるのさ」

『じゃあどうするのよ。まさかこのままここで待つなんて言わないわよね?』

「いや、とりあえず様子を見る」

『様子を見るって、それは結局待つってことじゃないのよ!』


 キジヒメはいらいらした調子で言う。


「そうじゃないよ。相手の様子をうかがうって意味だよ」

『相手の様子をうかがう?』

「そうさ。そこでキジヒメ、あんたに頼みたいことがある」

『頼みたいこと…、何よ?』


 キジヒメは怪訝そうな表情をしながら、スクナビコナに聞く。


「あんたにはあそこの家に〝偵察〟に行ってもらいたい」

『テイサツ?私が?』

「ああ、あんたは空を飛べるし、ここにいる全員の中で一番素早く動ける。あんたがあの家の状況を調べに行くのに一番適任だ。あんたなら最悪アマノジャクたちに見つかったとしても、捕まるようなヘマはやらないだろう?」

『ふん、当たり前よ』

「じゃあ、お願いするよ」

『…ふう、しょうがないわね。わかったわ、家の様子を調べてくる』

「頼むよ」

『お願いします』


 スクナビコナのみならずカニヒコもキジヒメに〝お願い〟する。


『任せてちょうだい!じゃあ、ひとっ飛びしてくるわ!』


 そう力強く言うと、キジヒメはアマノジャクたちのすみかに向かって飛び立っていくのだった。



「お、帰ってきたぞ!」


 スクナビコナがキジヒメの姿を確認して、声を上げる。しばらく時間がたって、アマノジャクたちのすみかを偵察していたキジヒメが戻ってきたのである。


「どうだった?あいつらの家は……」

『かなりすみかに近づいて家の様子を調べてみたけど、家の中からはなんの反応もなかったわ』

「なんの反応もなかった?」

『ええ、家の中からはなんの気配も感じなかったのよ。多分誰もいないんじゃないかしら?』

「中に誰もいない?…そうか……」

『…ちょっと、スクナ。どうするつもりなのよ?』

「…よし、今からあいつらの家に入ってみよう!」


 スクナビコナはキジヒメの問いに少しだけ考えたあと、答える。


『いよいよなんですね!』


 カニヒコは二つのハサミを真上に振り上げ、気持ちを高ぶらせるような様子を見せながら言う。


「まだあいつらが家の中にいるって決まったわけじゃないけどな。よし、みんなであいつらのすみかの前に行くぞ!」


 スクナビコナの言葉にその場にいる全員が、オーッ、と力強く答える。


 こうしてスクナビコナ以下全員でアマノジャクたちのすみかへと向かって進み始めるのだった。

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