元勇者だって青春がしたい
田中
プロローグ
魔王討伐
「・・・ついにやったか。」
魔王デスガーランドが倒した。光の粒になって消えていくのを見送った。
「ぐはぁ」
血を吐いた。
俺の体も限界のようだ。
意識が途切れそうだ。
回復魔法も使えそうにない。
長かった。。。
10歳の時に勇者召喚で呼ばれた。
それからが地獄だった。
毎日毎日、モンスターとの戦いだった。
レベルを上げ、スキルを磨き、そして敵の戦力を削いでいった。
そして30年。
そう、30年戦い続けた。
もう40歳だ。
ようやく魔王を討伐したが、傷が深過ぎたみたいだ。
俺の人生はなんだったんだろうな。
戦い続け、いつの間にか頭には白髪が混じり、顔には深い皺が刻まれていた。
この世界に来てからのことを思い返しても、戦いだらけだ。
ただ1人、魔王を追い続けた。
仲間がいた時期もあったが、最後の10年はずっと1人ぼっちで、まともに人と話をしていない。
単身魔王城に乗り込み、配下を皆殺しにし、そのまま連戦で魔王デスガーランドも倒した。
どうだ、我ながらよく頑張ったじゃないか。
あぁ、目の前が暗くなってきた。
このまま死んでしまうんだな。
悔しいな。
もし次があるのなら。。。
目の前が真っ暗になってから、どれぐらいの時間が経っただろう。
急に目の前が明るくなった。
「レイン。
聞こえていますか?」
「ああ、聞こえてるよ。」
ここはどこだ?
誰の声だ?
周囲は真っ暗だ。
その暗闇の中に美しい女性が光輝いている。
俺は立っているのか?
よくわからんな。
「はじめまして。
私は女神、エルカレナです。
最初にお伝え致します。
レイン、あなたは死にました。
あなたは今、魂だけの存在になっています。
肉体は魔王城に残されたままです。」
「そうか。」
「潔く受け入れて頂き、有難うございます。
なかなか受け入れられない人が多いですからね。」
「自分の傷が致命傷だったかどうかぐらいはわかるさ。
それで俺になんの用だ?」
「レイン、改めて有難うございます。
あなたのおかげで世界は救われました。」
「無様にも死んでしまったがな。」
「たった1人で魔王デスガーランドを倒すなんて、想像を越える偉業です。胸を張ってください。」
「そりゃどうも。
でも、死んだらすべてお仕舞いでしょ。」
「そうでもありませんよ。」
ニッコリと微笑む女神エルカレナ。
思わず見とれてしまう美しい笑顔だ。
「どういうことだ?」
「魔王討伐の功労者を無下にするほど、女神は薄情ではありませんよ。」
「ほぅ、では何か『ご褒美』があるということか?」
「ウフフ、ご明察です。」
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