我が試練の塔!

感 嘆詩

第0階層

 名は体を表すというか、彼女は泥のような瞳で名乗った。



 耳長共の名付け方は良くわからない。水に由来する名前が多いようである。



 全身が傷だらけで指もいくつか欠けていた。



 話に聞けば運もなければ才能も無い。古今類を見ぬ「丸耳の耳長」。情に篤い耳長も、ここまで血が薄ければ冷遇するのだろうか。



「勝ちたい」



 時を置くごとに気持ちが高まっていくのか、彼女の瞳は熱を帯びてきた。泥沼が熱泥に変わっただけであるが。


 ドロドロとした。劣等感、裏返しの功名心、名声欲。


 苛まれ、焦がれ、乾いた自己を粉々に砕かれてしまったら、その粉粒と涙が混じりあってこのような泥水へと成り果ててしまうのかもしれない。



「わたしは勝ちたい」



 何にか。全てにか。



「あなたの塔に入れてください」




 いいだろう。我が試練の塔は俗物にこそふさわしい。



「良い目をしているね」



「それは冒険で役に立ちますか?」



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