第18話

「相原、おはよう」

学校へ向かって歩いていると、何故か徳山先輩が声を掛けてきた。

「おはようございます」

後ろから歩いて来ると、徳山先輩は私の隣に並んで歩き出す。

「先輩、今日は榊先輩は?」

キョロキョロ辺りを見回すと、徳山先輩は私の行動に吹き出すと

「お前なぁ……、俺は紺野か榊の付録か!」

って頭を軽く小突いた。

「先輩、私と一緒に居たら誤解されますよ」

並んで歩いている時点で、既に誤解されそうだとアワアワしていると

「相原は……誤解されたら迷惑?」

そう言われてしまい、驚いて先輩の顔を見上げた。

「え……?」

驚く私が徳山先輩を見上げた瞬間

「と〜く〜や〜ま〜!!!」

と叫ぶ甲高い声。

そして背後から徳山先輩の背中に乗っかる紺野先輩に、私は何故かホッとした。

「紺野!朝から元気だな〜」

苦笑いする徳山先輩に

「お前、新しい彼女か?」

って呟いて、私の顔を見て固まった。

「紺野先輩、おはようございます」

思わず苦笑いして挨拶すると

「え?」

と驚いた顔をして、私と徳山先輩の顔を交互に見る。

「何?お前ら、いつの間に?」

って聞かれて、徳山先輩が苦笑いしながら

「何勘違いしてるんだよ!偶然、見掛けて声掛けただけだよ」

そう言って背中に乗ったままの紺野先輩に答えた。

「ふぅ〜ん」

口をへの字にしてそう呟くと、徳山先輩の背中から飛び降りて

「お前、こんなチンクシャ好みだったけ?」

って呟いた。

「チ……チンクシャって……」

思わず呟いた私に、紺野先輩は私の顔を見て

「チンクシャにチンクシャって言って、何が悪いんだよ!」

そう言いながらあかんべしてる。

「紺野先輩には言われたくないですね!」

「はぁ?お前、本当に生意気だな!」

「はぁ?先に喧嘩売って来たのはどっちですかね!」

徳山先輩を挟んで言い争う私に、徳山先輩は苦笑いをしたまま

「お前等、どんだけ仲良しだよ」

って呟いた。

その言葉に、私と紺野先輩は一斉に徳山先輩を睨み

「「仲良くなんかない!」」

って叫んでしまった。

すると徳山先輩は驚いた顔をした後、吹き出して

「ほら、仲良しじゃないか」

って笑い出した。

私と紺野先輩は顔を見合わせた後、ハッとして顔を逸らした。

「ほ〜んと、可愛く無いヤツ!」

そう叫んだ紺野先輩に、私は

「お互い様です!」

って言い返した。


……しかし、この朝の一件以来、私と徳山先輩が付き合っているという噂が広まってしまったのだ。

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