冒険者登録

 「おお、ここが冒険者ギルドか」

「ほら、ザグもアリスも呆けてないで冒険者登録しに行くよ」


俺たちはノベリスク領の冒険者ギルドに来ていた。どうせ、試験のために王都に行くのは4月になるのだからそれまで暇つぶしと実力アップと小遣い稼ぎを兼ねて冒険者登録をすることにしたのだ。


「よし、じゃあ開けるぞ」


レストンとアリスがゴクンと唾を飲み込む。


「ボウズ達!ようこそじ……」


俺はパタンと扉を閉めた。レストンとアリスには見えなかったようだが、俺たちを出迎えていたのはよく日焼けしたスキンヘッドの男だった。なんかいろいろ疑問はあるが、なんで扉の前で待ち構えているのだろう?しかも異世界の冒険者ギルドと言えば美人のお姉さんが出迎えてくれるものではないのだろうか?別に美人のお姉さんに会いたいわけでも何でもないが。それにしてもあれはない。


「うん。今日は帰ろう」


もしかすると運が悪かったのかもしれない。明日当たりに出直せばもうちょっとまともな出迎えがあるかもしれない。レストンもアリスも俺の反応に何か感じるところがあったのか、バッと回れ右をして帰ろうとする。


「ちょっと待ったぁ!」


バン!と冒険者ギルドの扉が開き、中からスキンヘッドのおっさんが出てきた。ふんどし一丁で。衝撃が強すぎたのかアリスが泡を吹いて気絶する。


「お前たち!冒険者登録をしに来たのだろう!」

「そうですね」

「ならなぜ帰ろうとしている!」

「「アンタがそんな恰好してるからだよ!」」


正確には格好ではなくてそもそもおっさんが出てきたところで帰ろうとしていたが。


「むう……昔はうけたのになあ」

「というか、冬なのにそんな恰好をして寒くないんですか?」

「寒いよ。寒いに決まってんじゃん。と、そこはどうでもいい。冒険者登録するんだよな?するよな?」


男がズイズイと顔を近づけてくる。危ない。あと一歩踏み込まれていたら男の顔面をぐちゃぐちゃにしているところだった。


「は、はい……」


レストンが男の気迫にのまれコクコクと返事を返す。


「そうかそうか!」


男は上機嫌になると半ば強引に俺たちの肩をつかんで冒険者ギルドへと引きずり込んだ。


「さあ、じゃあ冒険者登録をするからこの水晶玉に触れてくれ」


レストンが先にしてくれと目で訴えてくるので仕方がなく俺が先に水晶玉に触れる。俺が水晶玉に触れると水晶玉から文字が浮かび上がって来た。


ザウグレス=リームロック

年齢:12歳

性別:男

種族:人族

魔力量:4000000

魔力強度:900000

魔術適性:火、水、風、土、氷、雷

スキル:《転生の神》ランク6

    『無制限時間制御』ランク6

    『無制限空間制御』ランク6

    『無制限物理法則制御』ランク6

    『無制限物質生成』ランク6

    『無制限飛行』ランク6

    『無制限地形操作』ランク6

    『直截干渉無効』ランク6

    『炎神の加護』ランク6


「な、な、なんじゃこりゃー!」


男の叫び声が冒険者ギルド中に響き渡り、何があったのかとギルドにいた冒険者たちがわらわらと集まってくる。そのほとんどが俺のステータスを見て驚いて男のような叫び声をあげるか気絶するものまでいる。……ミャーマのやつ、俺の力を三分の一くらいにしたとか言ってたけど嘘ついたな?


(いやいや、君が化物過ぎて三分の一してもそのお化けステータスなだけだよ?)

(ご冗談を)

(いやマジだって)


「次僕やっていいですか?」


わらわらと集まる冒険者を押しのけてレストンがそう言った。


「あ、ああ」


俺のステータスに面食らっていたスキンヘッドの男は我に返ったかのようにうなずいた。それを見てレストンが水晶玉に手を置く。


レストン=トリリア

年齢:12歳

性別:男

魔力量:106000

魔力強度:6000

魔術適性:火

スキル:『全属性耐性』ランク5

    「毒吸収」レベル87 ランク1


「んなっ!?始祖の魔術師と同じくらいの魔力量だと!?」


レストンのステータスを見た男がまたもや驚いて叫び声をあげる。冒険者も何人か集まってきたが、俺に比べれば魔力量も魔力強度もそうでもなかった為そこまで騒ぎにはならなかったが、俺が先にしていなければ絶対に騒ぎになっていただろう。


「アリスはどうする?」


俺、レストンと順調?にステータス検査が終わったので次は当然アリスの番なのだが、目の前の変態のせいで未だに泡を吹いて倒れている。


「載せれば勝手に鑑定してくれるんじゃない?」


そう言ってレストンがアリスの手をもって水晶玉に触れさせる。


アリス=テーゼンツィッヒ

年齢:12歳

性別:女

魔力量:40200

魔力強度:7800

魔術適性:風

スキル:『空中歩行』ランク4

    『水面歩行』ランク4

    『水中呼吸』ランク4

    「短剣」レベル198 ランク4


「う~ん……わたしは?」


アリスは目を開けるとキョロキョロとあたりを心配そうにうかがう。


「なんか変なものが見えたんだけど気のせいだったんだね」


いいえ。気のせいではございません。よかったあの変態を着替えさせておいて。


「あとは職業決めだな。基本的には一度選んだ職業は代えられないから注意してくれ。一応の話だがメイン職業とサブ職業と決められるからな。まあ、ステータスカードに乗るのはメイン職業だけだが」


ふんどしスキンヘッドおじさんは思いのほか親切であった。


「じゃあ、俺はメインを魔術師にしてサブに魔剣士でお願いします」

「いいのか?サブ職業を設定できるとは言ったがメインを極めた冒険者くらいしかサブ職業なんて設定しないぞ?」

「たぶん大丈夫です」

「僕は魔法使いでお願います」

「あいよ」


俺とレストンがすんなりと決まったのに対してアリスは決めかねているようだ。


「なにで迷ってんだよ」

「魔法使いと、戦士」

「嬢ちゃんのスキルなら暗殺者とか、盗賊とかが向いてると思うけどな」

「じゃあ、サブに二つ設定することってできますか?」

「できるにはできるが」

「じゃあ、メインに暗殺者、サブに盗賊と魔法使いでお願いします」

「わかった」


男が何かにカリカリと書きつけている。


「手間を掛けさせて悪いが、この魔道具に手をのせてくれないか?」


見た目はさっきの水晶玉にいろんな魔道具がひっついた感じだ。さっきの順番の方がいいというので、俺が魔道具の上に手を置く。数秒後、チーン!という音とともに一枚のカードが出てきた。


「ほら、これが冒険者カードだ。なくすんじゃねえぞ?なくしたら再発行には30万エンかかるからな?」


それは高い。なくさないようにしなければ。


「それにお前の魔力を通すと文字が浮かび上がるからな。あと、それはおまえの魔力にしか反応しない」


俺は試しにレストンに手渡して魔力を流してもらった。確かにレストンが魔力を流しても文字は浮かび上がってこない。今度は俺が魔力を通すとステータスカードに文字が浮かび上がる。職業:魔術師と記載された隣にレベルが書かれている。そこに書かれていたレベルは……290。


「これってレベル高いんですかね?」


俺は男にステータスカードに魔力を通したまま見せた。すると男はブッと噴き出し俺からカードを奪い取って何かの魔道具にステータスカードを通す。


「魔術師レベル290で魔剣士レベル387だと……」


結構高いっぽいな。その後もレストンが魔法使いレベル83、アリスが暗殺者レベル43、盗賊レベル48、魔法使いレベル79と好成績?を残したが、俺のレベルが異常すぎたせいであまり騒がれなかった。

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