第4話
「ごめんくださ〜い」
事務所の奥の部屋で寛いでいた一心は、久しぶりに客の声を聞いた。
「は〜い、どうぞ〜、そこに座ってちょっと待って〜」
ちょっと時間をもらって、一心はジャージ姿をジャケットに着替えて、事務所に顔を出すと、中年の何処かで見たような男性が座っていた。
「いや〜お待たせしました。所長の岡引一心です」名刺を差出す。
相手も名刺をくれたので見ると、浅草民営美術館館長金谷義信と書かれていた。
「あ〜あのテレビでやってた、写真展やってる美術館の・・」
「はい、好評で、今も満員の状態なんです」
「それは結構な事で、で、私どもに何か?」
「はい、実は、娘の登美子が行方不明になりまして、警察にも届出したのですが頼りなくて、それでこちらに調査をお願いしたいのですが?」行方不明の娘の写真をテーブルに数枚置く。
「はい、良いですよ。では、状況を話してください」言いながら、マイクスイッチをオンにする。奥の部屋にも聞こえるし、録音にもなる。
「居なくなったのは、6月3日です。浅草の仲店通で中居花怜(なかい・かれん)という友達と午後8時前に別れたようです。そこから10分くらいですから、8時10分くらいには帰ってきてるはずなんですが、朝まで帰らず、会社とかその友達にも電話したんですが、分からないと言われて」
「その中居花怜さんの住所と電話わかりますか?」
「はい、これです」差し出された携帯電話に住所録が表示されている。一心はそれを写す。
「あと、勤務先の会社の名前と所在地、課とか係とか、同僚の名前とか、電話番号を、この紙に書いてください」調査依頼書というタイトルの紙を渡す。
「最後に、今日の日付とお名前と印鑑お持ちなら印鑑。で、費用ですが、基本料金20万で、一月過ぎると20万円ずつ加算になり、3ヶ月で50万円となります。良いですか?そこにも記載ありますから、読んでくださいね。最初の20万は今お持ちで?」
「はい、持ってます。50万用意しましたので、3ヶ月分前払いします。一月で見つかっても返金は要りません。登美子が見つかるのであれば、安いもんです」
「後で、話題の写真を撮影しても良いですか?いや、直接、娘さんには関わり無いのですが、別件で丁度お願いに伺おうかと考えていたところなんですよ。如何でしょう?」
「通常は撮影不可なので、時間外に自宅のインターホンが美術館の玄関の左奥へ進むとありますので、押してもらったら警備の者が出ますので、話して下さい。言っときますから。私も直ぐに一階へ降りて、写真の場所に案内しますので、警備室でお待ちください」
「今日でも良いですか?ちょっと遅くなりますが」
「はい、どうぞ」
金谷氏が頭を下げて帰った後、丘頭桃子(おかがしら・とうこ)警部に電話し、勤務時間後、事務所に来てもらう。
美術館の写真に事件性が有るのかを聞きたかった。噂では死体を写したとも言われているから、一助の親の事件との絡みを聞きたかった。
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