第87話✤依頼1・スライムのメンテナンス2

 ※前話のタイトルを変更しました※



 ◆◇◆◇◆



 6種類計8匹の小さなスライムを纏わりつかせたメルトはほくほく顔だ。

 そして珍しいことに、無属性のスライムもいた。

 どれも小さい個体だから分裂したてか発生したてなんだろうなぁ。


 スライムの増え方は2種類ある。

 一つが自然発生。

 魔素と環境で生まれる無属性の第一世代。

 第一世代が大きくなって分裂できるようになるまで育つ確率は1割にも満たない。

 しかし、この第一世代の育ち方や環境により属性を持ったり特性が決まってくる。

 もう一つが分裂。

 個として確立されたスライムが沢山の栄養を得たり魔素を取り込んである程度成長すると、核(魔石)を体内で生み出して、それを元に体の一部を切り離して分裂していく。

 メルトの所にいる無属性は自然発生したのだろう。

 この地下にある下水&浄水通路には魔素もあれば栄養も豊富だ。

 どんなスライムが居てもおかしくはない。


「むぞくせいのすらいむさんは弱いの?」

「弱いっていうか戦う術がないんだよ。魔素や栄養を取り込んでいくだけで、他の分裂スライムとは違ってスキルも特性もないからな」

「メルト、このすらいむさん守りたい」

「スライムはクラゲと一緒で分裂するごとに寿命リセットされるから、死ぬまで付き合うのは難しいぞ?」

「うー……」


 聖がスライムたちを気に入ったメルトとあれやこれや話しているのを横で聞いていると、ふと気になって無属性スライムをなんとなしに【鑑定】してみた。

 たしかに発生できる条件はあれど、無属性スライムって見ること自体珍しい個体だからねぇ。

 どれどれ……


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

【無属性スライム】

 現時点では最弱の個体。魔素(魔力)を吸収する事によっていずれは全属性LV:300カイザースライムに至る個体。

 主:エクメルディア

 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


 んんんん??????

 なんか不穏な説明文があったぞ?????


「聖、アレ、鑑定して……」

「え?」

「僕ちょっと見なかったことにしたい」

「え?」


 僕の様子に、メルトが抱えている無属性スライムを聖が鑑定すると……。


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

【無属性スライム】

 現時点では最弱の個体。魔素(魔力)を吸収する事によっていずれは全属性LV:300カイザースライムに至る個体。

 主:エクメルディア

 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「!!?!?!?!?!」

「やっぱり……ねぇ?」

「あー。メルトさんや……」

「なぁに?父」


 聖と僕は鑑定した通りにメルトにそのスライムの事を教えた。


「メルトがこのすらいむさんのあるじなの?」

「うん。幸い、その子以外のスライムはメルトの魔力に寄ってきただけっぽい」

「そうかぁ。メルトがあるじかぁ」


 ふふふ、と笑いながら無属性スライムをそっと抱きしめるメルト。


「まぁ溢れ出た魔力吸ってるだけだし、メルトは長寿種だから何とかなる……かな?」

「かなぁ?」

「父、母。すらいむさんに名前つける!」

「そうだね、いい名前考えてあげな」

「うん!」


 そんな話をしながら歩いていたら、目的の場所まで辿り着いた。

 先ずは下水の浄化を担当しているスライムたちの住処だ。

 僕らが姿を見せると、一抱えするくらいの中サイズのスカベンジャースライムが寄ってきた。


「こんにちわ。この街の人に依頼されて浄化とメンテナンスにきた冒険者だよ」

「……」

「下水の確認をしてからメンテナンスに入るけれど、いいかな?」

「……」


 ……うん、表情読めない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る