第79話✤マルドラの村の依頼6
「え?あの山に?俺が?」
早速マルドラの村に戻り、ロルトさんにご報告をした。
ご報告といっても「明日のアサイチで一緒に山に行かないと後悔します」という謎脅迫だけど。
「いや、お前らがそう判断したなら一緒にいくがな?ところで白いのはいたのか?」
「いたいた」
「本竜がそう望んでいるので」
「メルトは行かないとダメだとおもう」
「……」
これを説得というのかなんなのか……。
ロルトさんは明日一緒に行くことを了承してくれたので大丈夫だろう。うん。
◆◇◆◇◆
「ロルト……」
「おい、これはなんだ??」
今僕らの目の前にはロルトに牡蠣の様にくっついている桃鈴ちゃんの姿があった。
日の出とともにマルドラの村を出発し、「なんか歩きやすくなってないか?この道……」というロルトさんのツッコミをスルーしつつ、昨日桃鈴ちゃんと出会った場所までやってきた。
朝ご飯だろうカレーピザを食べていた桃鈴ちゃんは僕らと……ロルトさんの姿を確認するとすっ飛んできて、ロルトさんにダイレクトアタック……もとい、飛びついたのだった。
「以前ロルトさんを助けた白い竜の桃鈴ちゃんです」
「ロルトさんに会うために人化の魔法を覚えて来て戻って来たんだって」
「皇帝竜王インベリスさんの末娘さんです」
「まてまてまて!情報量が!多い!!」
ロルトさんはそういうと、腰にくっついている桃鈴ちゃんをひょいっとお姫様抱っこすると、座れるようにしてくれとお願いしてきた。
僕は頷くと、空間収納から3.6m四方のブルーシート+厚手のラグ+毛足の長いラグの三段重ねを出し、聖が整地してくれた場所にそれを下した。
その上で先日買ったしっかりした丸型のラグを敷き、その上にテーブルセットとお茶セットを取り出した。
「では改めて。こちら、以前にロルトさんを助けてくれた皇帝竜王インベリスの末娘の桃鈴ちゃん」
「あ、末娘と言っても認知だけの妾腹の娘なのでその辺はお気になさらず」
「……」
「桃鈴ちゃん。以前ロルトさんから剣を向けられてからドキドキして忘れられなくなっちゃったんだって」
「一緒に居たいって」
「……」
ロルトさんは無言で紅茶を飲み干した後、深くため息をついた。
「……ちょっといいか?」
「はい、なんでしょう?」
「以前助けてくれた……というか見逃してくれたのはその……桃鈴であっているのか?」
「はい!他のメンバーが逃げてしまい、フラフラになりながらも鋭い眼光で見つめてくれたのを覚えてます!」
「俺は……お前に剣を向けたんだが?」
「剣ですか?超強力な魔法武器や神代のアーティファクトでもないただの剣が竜の鱗に通ると思います?」
「おもわんなぁ……」
おもわないよねぇ。
というか桃鈴ちゃん、最初から敵意を向けられていることすら問題視してなかったんだ……。
「人間の俺の所に来る事での、竜族の見解は?」
「お父様は忙しいし末端の子が何してようと問題にすらしないので、お母様に事情を話したら当たって砕けろ!という言葉を頂きました!」
「いやそれ、俺が砕けるからな?」
「?」
「で、桃鈴はどうしたいんだ?」
「出来れば貴方が天に召されるまでおそばに居たく思います!あ、延命をご希望でしたら方法はいくらでもありますので!」
「……それ、他の人間には絶対に言うなよ?討伐対象になるぞ……」
「わかりました!」
始終にこにこしている桃鈴ちゃんにタジタジなロルトさんを見ているとなぜかほっこりしますね。
「俺も男だ。剣を向けた責任、助けてくれた恩、それにここまで想ってくれた桃鈴の心に報いたい」
「では!」
「一緒に居よう、桃鈴」
「はい!!」
エンダァァァァァ!!!! ってやつですね。
あー。蜂蜜たっぷり入れた紅茶とピーカンナッツタルトがおいしー。
あまさかんじなーい。
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