第40話✤お肉しかでない天国

 ※39話のタイトル付けを忘れておりました……。


 ◆◇◆



 肉ダンジョン。

 創世より在りて人々の救済を担う、救いのダンジョン。

 10~15階層から構築されていて、ボス部屋は5階刻みなのは通常と同じなんだけど、ボスはそれまでに出てきたモンスターのビッグバージョンが3匹位しか出ない。

 他のモンスターもレベルが低く、正直、5階層までならそこらのいい感じの枝でも頑張れば倒せる。

 実際はダンジョン前に木剣や古びた革鎧程度の武器防具の有料貸出もあるし、冒険者なりたてでも行ける初心者ダンジョンだ。


 そしてそのドロップ品目はダンジョン名通りのお肉。

 

 それがこのダンジョンなのだ。


「目指すはレア肉!行きますわよ、皆様方!お覚悟は宜しくて?!」

「「「「イエス、マム!!!」」」」

「姉様のサポートはお任せ下さい!」

「ミィ、大丈夫だとは思うが、疲れたりしたら俺か枢にちゃんと言うんだぞ?」

「解っておりますわ、クレイ様」


 意気揚々と足並みを揃えるが、どう見ても過剰戦力な7人であった。




「……本当にお肉しか出ないのですね?」

「そうだね。あ、鹿肉みっけ!」

「母ー!こっちは猪肉ー!」

「お?ジャイアントボアの肉だって。蛇の方」


 ミルッヒちゃんを切り込み隊長として先頭に立たせ、手当り次第、他のパーティに迷惑を掛けない範囲で一掃して行く。

 ミルッヒちゃん。剣聖のスキルを持っているのは解ってたけれど、一薙ぎがほぼ範囲攻撃なんだよね。

 自分を起点に扇状に範囲攻撃になるの。

 そして真正面にいる敵には、およそ1.5倍ダメージが行くみたい。


「これは……王家に伝わる剣聖しか持てない剣よりも使いやすいですわ!ありがとうございす、聖様!」

「いいって。収納のコヤシだったんだから、使える人に使ってもらえれば嬉しいよ」


 聖が不良在庫だからと手渡した大業物の脇差に、そんな固有スキルは無いはずなんだよね。

 剣聖スキルと過剰精錬した大業物がベストマッチングしちゃったのかな。

 うん、将来が恐ろしい。


「お?クレイ殿下、枢。ミスリルリザードの肉だってさ!」


 聖が肉が包まれた朴葉をみてそう告げてきた。

 うん、この朴葉、何の肉が名前が焼印されてるんだよね。

 それに合わせてなのか、ダンジョン前の店とかギルドには、肉の種類に合った調理法のレシピを買うことが出来る。

 美味しく頂きましょうね、て事らしい。


「肉ダンジョンでも魚介類とか野菜果物なんかも落ちれば良いのにねぇ」

「そうだな。その方が余程救済のダンジョンらしいよなぁ」

「なんでお肉だけなんだろうね?タンパク質は大切だけど、それだけじゃしょうがないのにねー」


 聖とクレイ殿下と首を傾げながら会話中。

 救済ダンジョンなら、肉野菜魚介類果物乳製品くらいは出してもいいんじゃないかなぁ?なにか制限とか裏技的な物があるのかな?


 まぁ、その辺り解りそうなのと言えば、我らが邪龍ちゃん位か。

 そっとメルト……邪龍ちゃんをチラ見したら、こちらの視線に気づいたのか、にんまりと笑っていた。


 あれは知ってても言わないやつだな。

 邪龍ちゃん、その辺天邪鬼だから、僕らが死ぬ頃に教えてくれそう。


「父ー!母ー!!ローストビーフ!!ローストビーフ!!!」


 と、大きめの朴葉に包まれた肉をみて、メルトがウキウキと大声を上げた。


「なぁに?いい肉?」

「随分でかいな?」

「えっと、えーごらんくまつざかうし、だってー」

「「でかしたメルト!!!」」


 メルトが倒したタヌー(狸のモンスター)からは、レア肉の部類だろうA5ランクの松阪牛のサーロインだった。


「なんですの?それ」

「A5ランクってなんだ?」

「マルシル、解る?」

「僕も聞いたことが有りませんね……」


 他の4人が集まってきて、メルトの抱えた肉を覗き込む。


「これは僕らがいた世界の最高級ステーキ肉なんですよ。ローストビーフにも出来ますし、しゃぶしゃぶにも最適ですね。この大きさならステーキがいいかも」

「ローストビーフは?」

「モモ肉の方がいいかも。個人の好みだけどね」


 朴葉を解いて肉を見る。

 すっごいサシが入っててキメ細かくて綺麗。

 重さは……1.5kgほどか。

 もうひとつあればしゃぶしゃぶもやりたいな。


「ラクト、メルトさん、まつざかうしを探しますわよ!」

「「イエス、マム!」」


 うん、ここが3階層なのだけど、深くなればドロップ変動があるかと言うとそうでも無いんだよね。

 完全ランダム時の運。

 でも、このメンツだとなんか引き当てそうなんだよねぇ。

 邪龍ちゃんもメルトも、お肉大好きだから……。


「我々は今まさに!大希肉時代の幕開けを目にしているのですわ!」

「にーく!にーく!」

「まつざか!たんば!みやざき!せんだい!」

「タン塩!タン塩!」

「ぼ、僕はビーフシチュー食べたいです……」

「聖様、クレイ殿下。我々大人組はモツと洒落込みませんか?」

「いいな。俺、香草焼きも好きだよ」

「熱燗が欲しいな」


 ……うん、ダメだこのメンツ。肉しか見えてない。

 いい大人も交じってもー。

 あ、僕はハンバーグ食べたい。粗めのひき肉と脂身少し入れて香草で焼いて、チーズ掛けたジューシーなやつ。


 5階のボス前セーフティエリアで一旦休憩することになっているので、拾得物の確認が今から楽しみだね!

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