第158話 何でも一緒は堪らない
ちょっと投稿遅れました。
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俺、立石達也。東京での住居が決まった後も大変だった。諸手続きもそうだが、引越しも大変だった。
俺と早苗それに涼子が一緒に引越す事になり、俺だけなら少ない筈の荷物が、早苗と涼子の分を含めると二トントラック一台では足らず、二台になってしまった。四トン車にしなかったのはマンション前の道路事情を考えての事だ。
引越し日は、玲子さん、四条院さんも同じだ。こちらも二トントラックが二台だ。女性というのはどうも物持ちらしい。
午前中にそれぞれの引越しが終わり、みんなで昼食を挟んだ後、この前購入した家具が搬入された。これはそれぞれが自分の部屋で対応した。
俺の所もベッドや洋服ダンス、ローテーブルやソファ、更には勉強机や本棚、テレビ、食事用のテーブルや椅子、食器類、食器棚といったものまで搬入し終わると流石にちょっと疲れた。
リビングでソファに座りここで暮らすのかと思いに浸りながら落ち着いたと思った矢先、何故か早苗、涼子、玲子さんそれに四条院さんと加奈子さんまでやって来た。
なんだあ?それに玲子さん、四条院さんそれに加奈子さんどうやってこのマンションに入ったんだ?意味分からずに取敢えずみんなに部屋に入って貰うと
「達也、これ私の部屋の鍵。いつでも来て良いよ」
「えっ、何言っているの本宮さん、達也がそれ受け取るなら私のも」
と言って涼子と早苗が俺に鍵を渡して来た。
それを見た玲子さんと四条院さんまでもが
「達也さん、これ私の部屋の鍵です」
「達也、じゃあ私の部屋のも」
結局俺の手には四人の部屋の鍵が乗っている。はぁ、高校生の時の方がまだよかった。と思っていたら早苗が今度は
「達也、鍵頂戴」
「いや、それは」
「えっ、桐谷さんに渡すなら私にも下さい」
と玲子さんが言って来た。流石に四人に俺の部屋の鍵を渡す訳には行かず、
「皆には渡せない。鍵は予備が二つしかないんだ。一人に渡すと皆に渡さなくては行けなくなるから誰にも渡さない」
「「「「えーっ!そんなあ」」」」
なぜかハモっている。
加奈子さんがその四人の後ろからウィンクしている。後で寄こせという意味だろう。
本来なら五人で近くのファミレスか何かで引越し祝いでもするのだろうが、加奈子さんも含め、集まっている子達の事を考えるとそれが出来ない。だが皆がやりたいというので
「「「「「引越し完了!かんぱーい!」」」」」
何故か全員が俺の部屋に居る。四人座りのテーブルでは足りず、ローテーブルにまでケータリング料理が並んだ。
何でいつもみんな一緒なんだ?
だがこれだけでは終わらなかった。
そう履修登録だ。これはWEB化された学務システムから登録しなければならないが、初めての事もあり仕方なく加奈子さんを頼る事になった。
必修、準必修、選択等があるが一覧で見ていても多すぎて分からない。だが問題になったのが第二外国語の選択だ。
加奈子さんは自分が取っているフランス語を俺に選択するよう希望したが、早苗と玲子さんが何故かドイツ語だと言って反対した。涼子と四条院さんは俺と同じ所ならどこでもいいらしい。
多分フランス語を取ると加奈子さんと一緒になるから嫌なのだろう。意図は分かるが、俺ははっきり言ってどっちでもいい。
だが、大学卒業後を考えると加奈子さんと同じフランス語が良さそうだ。そこで
「第二外国語はフランス語で第三外国語をドイツ語にしてはどうだ?」
「「そう言う意味で言っているんじゃない」」
と一蹴されてしまった。
結局この時の決着は着かず、実際の登録の時までに決める事になった。何となく問題の先延ばしの様な?
ちなみにオリエンテーションを兼ねた合宿も有ったが、これは全員がキャンセル。加奈子さんも行かなかったようだ。
仕方ない所も有るが俺個人としては学生ライフの出発点で有る為行きたかったのが本音だ。
なんだかんだと色々な用事をこなし、入学式がやって来た。場所は九段下にある有名なイベント会場葡萄館だ。
俺達は入場する前に決められたクラスに行くと、他の人達はオリエンテーションで仲良くなっているみたいで、そこに俺達が行くと誰という顔をされた。でもその内、
「皆可愛いというか綺麗というか」
「そうだな。一線画している子達が四人入った感じだ。オリ合宿来れば良かったのにな」
「でも一人怖そうな人がいるけど」
「ボディガードじゃねえか」
何言っているんだ、こいつら。と思いながら時間になったのでクラス単位で入って行った。これはオンラインでも見れるが学生一人に対して同伴二人の参加が許されている。
俺と玲子さんそれに四条院さんの所は母親が、早苗と涼子の所は両親が出席した。
午前十時二十分から始まった入学式も無事に終わると、それぞれの親と一緒に皆で食事をして別れた。今日は流石に加奈子さんはいない。
この後は皆で自分のマンションの部屋に帰る予定だ。まだ慣れていないが大学から駅二つ目というのは本当に便利だ。両親に感謝しかない。
玲子さん、四条院さんと別れて、俺達のマンションのエントランスに入ると
「達也、まだ前期の履修登録全部終わっていないから一緒にやろう」
「私も。達也いいでしょう?」
早苗も涼子も受ける科目は全く一緒だ。
「ああ、良いよ。ノートPC持ってくればいい」
「「うん」」
彼女達は五階、俺は六階なので一度別れて自分の部屋に入り部屋着に着替えると
二人がやって来た。お互い隣同士なので当然だろう。
しかし、この二人は表面上だけかもしれないが上手くやっている。涼子がしっかりと立ち位置を分かっている所為か、多少の事を俺にしても早苗は何も言わない。時々俺の顔を見て怒った顔をするけど。
早苗は加奈子さんに対しても同じようにしてくれると嬉しいのだが。
しばらくして俺のスマホが震えた。画面を見ると玲子さんだ。直ぐに出ると
「達也さん、前期履修科目の登録が終わっていません。一緒にやって頂けませんか?」
「それは…」
チラリと早苗と涼子の顔を見るとじっと俺の顔を見ている。電話の相手が分かった様だ。
「良いですよ」
受ける授業は同じだ。
「達也なんで断らないの?」
「だって、受ける授業一緒だし、良いじゃないか」
「受ける授業はみんな一緒なんだから自分でやらせればいいじゃないの」
「それを言ったら早苗も同じだろ」
「分かっているけどさ」
全く達也にはその辺もっと理解させないと。
もう一度スマホが震えた。マンションの入口に着いた様だ。監視カメラを一度のぞいた後、直ぐに入り口のドアを開けた。
入力の仕方は加奈子さんから聞いている。履修科目もみんなで決めた。はっきり言って俺の部屋でやる必要あるんだろうか?
登録が無事に終わりこれでみんな帰るのかと思いきや
「達也さん、本日の夕食はどういたします?もし考えて無ければ私の所で食べるか、もしくはここで私が作りましょうか?」
「ちょっと、待ってよ。何勝手な事言っているの。達也のご飯を作るのは私の役目よ。立花さんが口出す話ではないわ」
「何を言っておられるのですか。部屋が近いからって毎日作る事が決まっている様な言い方はしないで下さい」
「はぁーっ!」
これは不味い。
「二人共止めろ。今日の夕飯は自分で作る。言い争うのは止めろ!」
「「達也(達也さん)出来ないでしょ!」」
「はい」
うーっ、立場弱い。実際料理なんか作った事が無い。カップ麺か冷凍食品をチンして終わらすつもりだった。
結局、五人で近くのスーパーに買物に出かける事になった。しかしまいったな。なまじ距離が近くなった事と実家から離れた事でマウントの取合いになっている。これは対策を立てないと不味いぞ。
――――――
達也、高校生時代より皆さん近付いたようです。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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