第29話
「…今日も今日とて依頼だね」
「うぅー、朝から依頼するのは…体が拒絶反応を」
「はいはい」
ベットからのそのそと動こうとして動けてないミルアを横目に僕はグッと伸びをした。
ギルマスにスタンピードが起きるまで滞在して欲しい、そう言われた日から今日で4日目。
僕とミルアは特にこれといった事はせず、依頼をただ受け、それを完了していた。
ミスリル冒険者に頼む依頼はやはり珍しいもののようで、僕とミルアはゴールドとシルバーの依頼を受けていた。
「ご飯できましたよー!」
いつものララさんの声を聞いて僕はミルアが包まってる少し羽毛が入った掛け布団を引っ剥がす。
「んぎゃっ…」
ダンッと音を立ててミルアが床とぶつかった。思っていたよりも重い音が鳴り思わず声をかける。
「大丈夫?」
「むむ……痛い」
大丈夫だったようだ。…とはいえ、反省だ。反省。
「ごめんね、ミルア」
「布団を引っ剥がすとは…重罪」
「重罪!?」
「そう、私の至福時間を強制的に終了させたから重罪」
「罪の内容は?」
「……特に何も考えてない」
口先だけだったのか…
「うーん、よしっ!今日は休みにしよう」
「え、いいの?」
「うん。今日は互いに自由行動としようか」
「っ!」
「ここ最近、ずっと二人きりで行動してたからね。たまには二人別々、自由にね」
そういう時間も必要だと思ったからねー。
「…分かった。じゃあ、私はあれ買いにいく」
「ん?」
「下着」
「言わないで?…はぁ、分かった。というより、ごめんね?欲しかったのなら気付かずに」
「…気付かれない方が嬉しい」
…それもそうか。
「あのー!レオさんにミルアさん?起きてますかー!」
「あ、行かないとララさん怒っちゃうね」
「うん。ララの怒るところは恐ろしい」
「…あぁ、うん」
あれは2日前だったなー。
朝ご飯を食べていると、何やら朝から酔っ払った一般客がララさんに対して…なんだったか?確か『よぉ、っく…お前、中々に綺麗だなぁ?おぅ、どうだ?俺が抱いてやろうか?んん?』などと言って、僕は立ち上がって少しお灸を据えてやろうかと思ったらね、ララさんが『あははー、ここは娼館でもないですし、私は娼婦でもないですよ?それに、貴方みたいな人は朝から気分を害する存在なので退場してもらいます、ねっ!』と、言って笑顔で男の足を蹴って、大の男をこかしたのだ。
あれは驚いたな…ララさんが見かけによらず強いってのも分かったし。
そのあと、ララさんは『あとは誰か後処理お願いしますねー?私は仕事が残ってるのでっ!』と言って忙しそうに動き回った。
慣れてる人は『流石ララちゃんだね〜』とか『またか〜ははっ』と笑いながら言っていた。
それを見た日から僕とミルアは密かにララさんは怒らせたらダメと誓い合った。…とてもララさんに失礼なことだとは思ってるけどね?
僕とミルアは慌てて一階に降りてテーブルに着く。既に料理は用意されていたので内心怒ってないかと少し不安だ。
朝食を食べ始め、しばらくしてララさんがやって来た。
「おはようございます!レオさんにミルアさん」
「おはよう、ララさん」
「おはよう」
ララさんの元気な声に僕もミルアも元気に挨拶を返す。
「そういえば、今日は少し遅れてましたが、何かありましたか?」
「何もない」
「ミルアが中々起きなくて、それに手間取ってしまた」
「レオ!?」
別に言っていいだろう。うん、ララさんもミルアの朝弱すぎる問題に関しては知ってるし。
「今日は昨日よりも大変でしたか?」
「えぇ、それはもう」
「…酷い」
「事実だからね」
「うぐ…」
「あははー、それより今日はどうするんですか?今日も依頼を受けにいく感じですか?」
「いえ、今日は休みにしました。互いに自由に、と言う感じで」
「そうなんですね。…私もお休みと行きたいところですが、週一でしかお休み取れませんから」
「そうなんですか?」
「はい」
「…辛くないの?」
「ミルア」
いきなり踏み込んだ質問をミルアがしたので咎めるように名前を呼ぶ。
ミルアもすぐに自分が言ったことに気づいて何かを言おうとしていたが、その前にララさんが喋った。
「辛くない、と言ったら嘘になりますが、慣れましたよ」
「すみません、ララさん」
「大丈夫ですよー。それに、従業員用の部屋に住んでますし中々に快適です!少し部屋は狭いですが、無料なの私的には嬉しいです!
変わってるかもしれませんが、働いていると楽しいですし、体力や脚力もつきますので一石二鳥ですよ!」
ん?…気になる言葉が…あ、なるほど。引き締まった体を作れるって意味かな?
「頑張って下さい。…って、いつも似たようなことしか言ってませんね」
「いえ!全然大丈夫ですよ。とても嬉しいですし、これからも頑張っていこうと言う気持ちになれますので!あっ!では、ごゆっくり!!」
そう言ってララさんは他のテーブルに行った。そちらでも、元気に笑顔で接客している。
「…ララは凄い」
「ミルアも似たようなこと言ってるね」
「そんなもの。言葉が思いつかないから仕方ない」
「ははっ、それもそうだね。…さて、食べ終わってから自由行動って感じにいこうか」
「分かった」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます