第24話
「特異型のマンドライーターの討伐、お疲れ様でした!!今回の件はギルドマスターに報告させていただきます。そして、こちらが報酬となっております。
……えぇと、一つ聞きたいのですが何やら喧嘩でもされましたか?」
「いえ、ミルアが勝手にやってるだけなので」
報酬の金貨が入った袋を受け取って受付嬢の質問に回答する。
あの道中でのミルアの狐耳事件から一日経過して王都アルフィリアへと辿り着いた、のはいいが…ミルアが僕に罰(デコピン)を与えた後、恥ずかしかったのか拗ねた。それも現在進行形で。
「夫婦喧嘩も度が過ぎると離婚に発展しますのでお気をつけて下さい。それと、今回のマンドライーターの素材はまだ墓夜の森に?」
「えぇ、まだまだ残ってますよ。凍ってますが」
「なるほど。冒険者を派遣しましょう」
「お願いします。言ったようにマンドライーターの花びらにはミルア曰く耐魔法がついてると」
「今回のマンドライーターの花びらは後ほど査定してまたお支払いさせていただきます」
「分かりました。では。…ミルア、行くよ」
「……ん」
ミルアと手を繋ごうとする。すると、いつもなら指を絡めてくるのだが…やはり恥ずかしいのか指を2本だけ僕の指に絡ませてきた。いつもとは違うミルアを見れて幸せです。
◆
「あっ!レオさんにミルアさん、帰ってきたんですか?」
宿に帰ってくると同時に元気看板娘のララさんがタッタッタッとやって来た。
「えぇ、つい先ほど帰ってきましたよ。ララさん」
「お疲れ様です!お部屋はまだ一日残ってますけどどうします?」
「延長していいですか?もう気に入りましたので」
「わー!そう言ってもらえると嬉しいです!」
僕は金貨一枚をララさんに渡す。
「一旦これで、泊まれるだけお願いしてもいいですか?」
「分かりました!7日間宿泊できます。あっ、お風呂とお食事込みですが大丈夫ですか?」
「えぇ、お願いします」
「お釣りの銀貨9枚です!」
ララさんがポーチから銀貨を取り出して渡してきたのでそれを受け取る。しかし…
「危なくないですか?盗まれたり…とか」
「大丈夫です!盗ませません!」
…ララさんから一瞬だけ、圧を感じた。もしかしなくても強い?
「では!ごゆっくりどうぞ!」
「あっ、ララさん少しいいですか?」
「はい?」
危ない危ない、忘れるところだった…
「空いてる時間…というか、少し聞きたいことがあるのですが…二人きりになれませんか?」
「浮気ですか〜?いやー、奥さんがいる前で堂々と言うなんて凄いですね」
ララさんがニヤリと笑ってそう言ってきた。隣からとてつもない圧を感じ取ったので慌てて訂正する。
「ち、違いますから!ただ聞きたいことがあるだけです」
「分かってますよ〜。うーん、では…今夜の11時にまたここに来てください」
「分かりました。ありがとうございます」
「いえいえー、それでは私は仕事をしてきます!」
「頑張って下さい」
「ありがとうございますー!」
ララさんは本当に元気だ。…何が元気の源なのか気になるな。まっ、聞くつもりはないけど。
「…レオ」
「ん?」
「…や、なんでもない。浮気したらダメ」
「だからしないって!」
「浮気はダメ。でも、あくまで浮気。ちゃんと正妻の私に許可を取るのなら奥さん増やしていいよ」
「あのなぁ……」
「強い者の種子は残すべき、レオは強い。沢山子供を作らないと」
「食堂で語ることかな!?は、早く部屋に行かないと周りの人に迷惑だから」
一応、食堂は騒がしいので話は聞かれてないようだが…こんな会話を聞かれたら普通に恥ずかしくて死ぬ。
という事で部屋へ。
「レオ、奥さんは3人まで」
「まださっきの続きするの!?」
部屋に入って開口一番ミルアがそう言った。
「うん」
「うん!?」
肯定以外の言葉が来ると思っていたら肯定の2文字がミルアの口から発せられた。
「レオって私以外を好きになる?」
「ならっ……ないとは言えない。ごめん」
「謝らなくていい。男はそんなものって聞いたことがある」
うーん、その情報は嘘だね。というか、誰から聞いたの…
「レオの新しい嫁候補はミラ、ララ。この二人」
「勝手に決めないでくれる?というよりその二人は無いよ」
「なぜそう言い切れるの?」
「それはっ……ミラさんには長い事お世話になってるから異性というより姉っぽい。そして、ララさんはないかな?年下だから…?」
「ふぅん?でも、新しく作るのはまだダメ。ちゃんと私を好きになってから」
「…う、うん」
ミルアはそれでいいのか?と思ったが、ミルアの目を見て大丈夫だと思った。
「それより、レオ。前から気になってたけどレオが戦闘中に時々言ってるあれって何?断、とか烈とか」
「あれは自己流の剣技だよ。何回も試行錯誤しながらやってるから剣技の中には下位互換と上位互換が存在してるけどね、例えば【滑】、これは相手が武器を使ってきた時に使う剣技だよ。
相手の攻撃を滑らす、受け流す。これが【滑】他にも【流】これは最小限の動作、そして全速力で相手の急所を攻撃する剣技。他にも様々な剣技があるね。その場で色々使いこなすのが僕の戦い方だよ」
「へー、剣技…」
「ミルアには魔法があるからいいんじゃない?」
「でも、強力な魔法を使う時に行う詠唱は隙だらけ。だから魔法使いは詠唱しながら戦うなんて事も珍しくない」
「そうなのか。…なら、何か剣でも買う?」
「いい、私には血の剣や魔法で剣を作ることも出来る」
「そうなの?…それって今出来る?」
「うーん、少し危ないから無理。それに、魔力で形を維持してるから冒険者に気づかれる」
「なるほど…なら、今度見せて?」
「任せて。…と言っても出来るのは水と火魔法のみ。中級以上じゃないと適性の問題で剣が爆発したり自爆する」
「そんなに危険なものなのか…」
「その分、強い。込める魔力でも切れ味や強度も変わる」
「へー」
魔力が高ければ高いほど強くなるって…理論的には限界がないんじゃないのか?
んー…大賢者様とかならとてもつもない剣を生み出せそうだ。
「…でも、魔力の減少量が多いから短期決戦向け。もしかしたら魔法式を改造して消費魔力量を少なくしてる人もいるかもしれないけど、そもそも魔法式の改造自体が高等技術。出来る人は限られてくる」
「魔法式の改造?」
「そう。どんな魔法にも魔法式は存在してる。例えば、ファイアボール、この魔法式は簡単に言うなら術者から魔力を吸収し、その魔力を火の塊に変換し何処へどんな速さで飛んでいくのか、それら全てが魔法式で作られてる」
「なるほど…その魔法式を改造って事は効率を上げたりとか?」
「そんな感じ。無駄な部分を無くしたり、逆に強くするために増やしたりなど」
「…なかなか想像が出来ないな。魔法式というものがね〜」
「魔法式は広範囲に作用する魔法を使った時に分かる。もしくは、詠唱中だったり、発動が遅い魔法だったり、意外とある」
「いつか見れるかな?」
「多分」
「見れたらいいな。…さて、色々教えてくれてありがとうね」
「私の方もレオの剣技について知れた。今まで何言ってるんだろ、って思ってたから」
「お互いに知らない事を知れて良かったね」
「うん」
中々に有意義な時間の過ごし方だった。…しかし、魔法か。今まで身体強化系の魔法を使っていたけど、それにも魔法式は存在してる事も分かった。今度調べてみよっかな?
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