第7話.「人気小説の条件は◯◯です」はあまり気にしなくていい

 人気の小説になる条件にいうものはやはりあって、長いタイトルは人気になりやすい。


 ネット小説の上位人気作を見てもらってもわかる通り、一般小説でも村上春樹氏の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」や、岩崎夏海氏の「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」、ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』などのように、長いタイトルは読者の目につきやすい為、人気作になる傾向があるのだ。




 ……と言えば、いかにもそれっぽく聞こえる気がしないだろうか。


 では以下の文章はどうだろう。



 人気の小説になる条件にいうものはやはりあって、短いタイトルは人気になりやすい。


 ネット発の小説でも「無職転生」は人気だし、湊かなえ氏の「告白」や宮部みゆき氏の「模倣犯」、田中慎弥氏の「共食い」や宇佐見りん氏の「推し、燃ゆ」は芥川賞も受賞した。

 四文字以内の短いタイトルは読者が一目で覚えやすく頭に残りやすい為、人気作になる傾向があるのだ。



 ……このように、自説に都合の良い例だけを引っ張り出してくる手法はチェリーピッキングと呼ばれる詭弁である。


 今回は極端にわかりやすい例にしてあるが、このような詭弁はけっこう巷に溢れていて、納得してしまう形で紛れている。


 人気小説になる為には◯◯しよう!と例を挙げてくるパターンをよく見かけるが、小説に限らず、世間には株で勝つ方法とか恋愛を成就させる方法とか、色んな指南書があり、どれもいかにもそれっぽく文章にチェリーピッキングを紛れ込ませているので、読者はつい引っ掛かりやすい。


 ただ、やはりこれはあくまで詭弁なので、この手法では確実に正しいものとは言い切れないのだ。


 本当に正しさを求めるなら、統計学的に求められるサンプル数を集めて、それらの傾向を分析する必要がある。


 でも、ただ一つ注意点が。


 これは確かに詭弁ではあるけれども、必ずしも結論が間違っているとは、言い切れないところ。


 もしかしたら本当に正しいのかも知れないし、やっぱり間違っているのかも知れない。


 なので、この手のものは参考程度にとどめておいて、あまり捉われずにそんなに気にする必要はないと思う。


 小説のタイトルに話を戻せば、最終的には自分の気に入ったタイトルをつけて、自己特有の色を出してゆこう。


 新しいブームというものは、人と違う発想から生まれるのだから。


 因みに私はタイトルをつけるのが下手である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る