9. 漢字とかな
D2.漢字、カナ書きに関するルールは常用漢字、現代仮名遣いを基本とする。
D3.漢字において、難しい漢字でそのジャンルにおいて使用頻度の高い漢字は使用してもいい。
D4.難しい漢字を使用したい場合は、ルビを振ることも検討する。
D5.助詞、副詞、助動詞、形式名詞、接続詞、代名詞などでは漢字をあまり使用しない。(彼、彼女など例外多数)
■漢字ひらがな表記の選択
どの程度までの漢字を使うか、またルビを振るかは、作者の学力や考え方で異なります。
出版されているラノベを観察すると、漢字は常用漢字よりやや多めで、ルビも多めであるのがわかります。
紙の本ではルビがあっても行間が一定ですが、ウェブではルビがあると行間が空いて不格好になる場合があり、環境が違います。
ルビが多すぎるのも読みにくくなる原因です。
あれ、これ、それ、どれ、あちらなどの指示代名詞などはとくにひらがなを使います。
「してみる」など動詞の後に続く「-みる」「-ない」「-いる」「-おる」のような補助動詞も同様です。
一般的にひらがなに開く単語を漢字にされると、かなり読みにくいです。
なんでもかんでも簡単な漢字で読めるからといって、漢字にしないようにしましょう。
常用漢字に制限する必要はありませんが、簡単さの目安には使えます。他にも、漢字検定準一級まで、人名用漢字表などを基準にすることができます。
また「記者ハンドブック」という書物を参考にするという人も多くいるようです。
常用漢字には、漢字の規定以外にも、読み仮名の規定もありますが、すべてに従う必要はありません。
実際に小説を書いてみると、常用漢字だけでは足りないと思う場面が少なくありません。最終的には個人の感覚だのみです。
読者が読んだときに、その字は読めるかな、という視点はとても大事です。逆に簡単な単語にもルビがたくさん振ってあるとそれはそれで読者の漢字力を舐めてるようにも思えます。簡単な説明はできませんが、うまい具合に程度を見極めてください。
■同音の漢字による書きかえ
常用漢字、正確には昔、当用漢字による制限があったため、いくつかの漢字の単語では「同音の漢字による書きかえ」が行われました。
厳密な紹介ではありませんがいくつか紹介します。
障礙、障碍 → 障害
恰好 → 格好
訊問 → 尋問
綺麗 → 奇麗
理窟 → 理屈
稀 → 希(稀少、稀土類)
蝕 → 食(日蝕、月蝕)
現代でも常用漢字ではないので、書きかえ後の漢字を広く使っています。どちらの漢字を採用するかは作者にゆだねられますが、現代では分かりやすい常用漢字を筆者はだいたいの場合で推奨します。
ただし、書きかえると本来の漢字の持っていた意味と単語の意味が一致しなくなるため、古い表記にこだわる作者もいます。
どちらを採用するにせよ同じ小説内では単語ごとに表記を統一するほうがいいでしょう。
■同形異音語
同じ文字なのに、読み方が異なる、というものがあります。
「拙い」は一般に「つたない」と読みます。「まずい」とも読みます。「潜る」は「もぐる」「くぐる」、「吐く」は「はく」「つく」、「止める」は「とめる」「やめる」、「行った」は「いった」「おこなった」のように、文脈で判断可能な場合も多いですが読み仮名が複数あるパターンの漢字も多いです。
「行った」は「いった」のときは漢字で、「おこなった」の場合はひらがなにする作者もいるようです。「行なった」と書く人もいます。
このような一定しない、誤読の恐れがある場合は出版では簡単な漢字でもルビを振ることがよくあります。マイナーな訓読みなども同様です。
人気(にんき、ひとけ)など動詞だけでなく名詞にも数多くあります。
ウェブ小説でもワザとひらがなに開いたり、ルビをつけたりすると親切かもしれません。
一般的には、どの漢字を使うのかひらがなに開くか統一したほうがよいとされますが、漢字の連続、ひらがなの連続になる場合など周辺の漢字率などを見て、その都度選ぶ場合もあります。小説は公文書ではないので、検索性、統一性よりも見た目や読みやすさを優先することもあります。
またキャラクターや状況に合わせたニュアンスなどで、ひらがなや漢字を書き分けることもあります。
■字体
字体違いもあります。「亜亞」「悪惡」「壺壷」「剝剥」のようにどちらを使えばいいか分かりにくい字もあります。旧字体、新字体、常用漢字、印刷標準字体、正字体、拡張新字体、異体字、俗字、略字などの分類があります。また漢字コードでは新しい規格で字形の入れ替えがあった字もあります。
「竜」が常用漢字で「龍」が異体字ですが、新常用漢字の「籠」が常用漢字で「篭」が異体字のように同じ常用漢字内でも字形が定まっていない場合もあります。
作品中では「龍竜」のように使い分ける場合を除き、統一して使うといいと思います。
ちなみに「亜悪」は常用漢字で「亞惡」は異体字、旧字体ですから「亜悪」が優勢です。
いっぽう「壷壺」は常用漢字ではありません。常用漢字ではないので、どちらも新旧の関係ではありません。しかし「壺」が印刷標準字体なので、こちらが優勢です。
「剝剥」のうち「剝」は2010年常用漢字になりましたが、JIS第3水準なので使用は好ましくない場合があります。そのため多くの場合「剥」(拡張新字体)で代用するのが一般的です。
優先順位としては、JIS第2水準以内でかつ、常用漢字、印刷標準字体、拡張新字体、という感じでしょうか。
■現代仮名遣い
現代仮名遣いでは、指針として左側ではなく右側のように書きます。一応、だいたいは左側も許容されてはいます。
3つづつ、少しづつ → 3つずつ、少しずつ
すいません → すみません
そうゆう → そういう(同ああいう、こういう、どういう、そういった等)
そのとうり → そのとおり(通り)
どおりで → どうりで(道理で)
おねいちゃん → おねえちゃん
使いずらい → 使いづらい
気ずく、勘ずく → 気づく、勘づく(勘付く)
基ずく → 基づく
力ずく → 力づく(力付く)
力づく → 力ずく(力尽く/強引の意)
カニずくし → カニづくし(尽くし)
黒づくめ → 黒ずくめ(尽くめ)
ひざまづく、つまづく → ひざまずく、つまずく
うなづく、かしづく → うなずく、かしずく
いづれ → いずれ
こんにちわ → こんにちは
美味しいはね → 美味しいわね
飲むは、食うは → 飲むわ、食うわ
こじんまり→こぢんまり
おまちどうさま→おまちどおさま
厳密に見てみると「へ、を、は」以外でも現代仮名遣いだからといって、発音通りではないことが分かります。
例外として、台詞ではわざと音写にする場合もあります。「すいません」「そゆこと」という風に書くことは割合、頻繁に見かけます。
なろうの場合、誤字報告が来る場合もありえます。キャラづくりなのか、それとも誤字なのか作者の認識は重要で、一貫した態度で対応したほうが、台詞がぐちゃぐちゃになりにくいです。
筆者の好みで言えば、一人称でも地の文においては標準的な書き方を推奨します。
■かなの濁点
かなに関する話として、Unicodeには合成用の濁点、半濁点が独立したものとは別にあります。
濁点は「だ」とかの点、半濁点は「ぱ」とかの丸です。
一部の表示環境では、この合成用濁点は見事に文字化けします。
▼▼▼表示テスト
普通の濁点→合成用
だ だ だ → だだだ :通常使用の文字の合成版
か゜か゜か゜ → か゚か゚か゚ :JIS X 0213で追加された半濁点か行
あ゛あ゛あ゛ → あ゙あ゙あ゙ :JIS X 0213にも含まれない濁点あ行
▲▲▲
なお筆者のAndroidでも「あ+合成用濁点」は文字化けしています。これはフォントにも依存します。2020年10月に再確認したところ本番環境では文字化けせず、濁点が無視されて表示されていました。このように表示のされ方は一定ではないです。
ほとんどの縦書き表示ソフト、PDF出力などは合成用でない「あ゛」の場合で、濁点がひらがなの下に来て、日本語の解釈としては、見た目がおかしくなる問題があります。
■難しい漢字について
最近の常用漢字にはJIS第3水準の漢字が「塡剝頰𠮟」の4文字あります。このうち「𠮟」はUnicodeのサロゲートペアというものに属しており、一部のアプリケーションでは正常に扱えません。小説家になろうでも「𠮟」の字は「環境依存文字のため扱えません」と表示され使えません。(なろう版では異体字で代用して書いているので注意してください。カクヨムではサロゲートペアも使えます)
JIS第3水準:塡剝頰𠮟
代用文字:_填剥頬叱
JIS第3、第4水準の漢字は基本的にはShift_JISのファイルでは扱えません。古めのテキストエディタなどを使用している人はご注意ください。5chなどでも文字化けすることがあります。
またJIS第3、第4水準の漢字は、多くのフリーフォントなどではサポート外のため、正常に表示されない場合があります。
なおこの4文字は通常「填剥頬叱」という異体字が使えるので、ほとんど問題にはなっていません。
■伸ばし棒
長音「ー」ですが実はこの記号は本来はカタカナ専用です。ひらがな漢字には使用しません。
「コーヒー」はひらがなだと「こうひい」というふうに書くのが本則です。しかし現代ではひらがなで長音「こーひー」とするのも、許容されています。
「こぅひぃ」のように小文字化する人もいます。
ただし「珈琲ー」のように漢字に続くことはほとんどありません。
問題として、長音が特に文末にある場合、ダッシュと見分けがつかないということがあります。
「委員長、挨拶ー」よりは「委員長、挨拶ぅ」のように書いたほうが文意は伝わりやすいです。
とくに「挨拶ーー」となっていると、ダッシュの代用なのか、判断に迷います。
■外来語のカタカナ表記
外来語のカタカナ表記について、かなりさまざまな表記があります。
コンピューター、コンピュータ
エスカレーター、エスカレータ
ソファー、ソファ
パーティー、パーティ
ツインテール、ツインテイル
クラスメート、クラスメイト
メイク、メーク
ダイア、ダイヤ
ファイア、ファイヤ
バンパイア、ヴァンパイア、ヴァンパイヤ
ウインド、ウィンド
ウエイトレス、ウェイトレス
サンドイッチ、サンドウィッチ
コンマ、カンマ
アルト、オルト
トロル、トロール
表記ゆれする単語は数え上げられないほどです。
調べてみると政府の文書のルールも複雑で例外も多数あり、公文書においても正しい書き方などという話になると魔境です。
ある程度の推奨はありますが、どの表記が絶対的に正しいということはあまりないので自分で判断して、作中ではなるべく統一して書くといいと思います。
表記ゆれではなく、外来語由来で濁点などで誤記だとされる単語もかなりあります。
ベット(bet/賭け)↔ベッド(bed/寝台)
ドック(doc/医者,dock)↔ドッグ(dog/犬)
バック(back/後ろ)↔バッグ(bag/袋)
同、マジックバッグ、トートバッグ、エコバッグ、ボストンバッグ、スクールバッグ、ショルダーバッグetc
ティーバッグ(tea bag)、ティーパック(tea pack)、ティーバック(T back)
ポット(pot)、ポッド(pod)、ボット(bot)
ゴット→ゴッド(god)
グット→グッド(good)
バッグパック→バックパック(backpack)
コボルト(独/kobold)↔コボルド(英/kobold)
アンデット→アンデッド(undead)
デッドボール、デッドライン、デッド・オア・アライブ
ピラミット→ピラミッド(pyramid)
色々→スタンピード(stampede)
アボガド→アボカド(avocado)
バトミントン→バドミントン(badminton)
コミニュケーション→コミュニケーション
シュミレーション→シミュレーション
■誤字修正
漢字、カタカナ、ひらがな、どのタイプでも誤記は結構見つかります。書いた後、1回でもいいので見直して誤字脱字を減らすと、見た感じはよくなります。
おすすめは、執筆後に誤字チェックをします。それから修正、推敲、改稿などをしたとして、投稿サイトに公開する直前に最後にまとめて一度確認します。
逆に、どんなに何回も見直しても誤字を100%撲滅するのは難しいです。誤字が100個あるなら99個直すぐらいの気持ちでいるといいと思います。
なかには漢字を間違えて覚えている場合などは能動的に調べないかぎり気が付きません。
誤字修正率99%を100%にするレベルで見続けるよりは、なろうの場合は誤字報告機能を活用し、作者は感想返信や続きの執筆など、他のことにリソースを割いたほうが効率的です。
うまく割り切って誤字とは付き合いましょう。
わざと誤字ネタや崩し言葉、異なる漢字を使っている場合、そこに誤字報告が来る場合があります。
そういう場合は、圏点を打ったりして強調すると、意図がはっきりしていいと思います。
▼▼▼
臨時パーティー組んだ。軽く「よろし
▲▲▲
なお、誤字報告機能を大歓迎という人は、あらすじ、1話目のまえがき、1話目あとがきなどで一度でいいので表明してあると、安心して報告しやすいです。
いわゆる感想、評価クレクレは最新話でするのが定石ですが、読み終わった後に再度誤字を探して再読する人はほとんどいないため、1話目またはあらすじをおすすめします。
■音声読み上げ
スマホアプリでも、Windows系のアプリでも構いません。
音声読み上げを使用すると「ひらがな、カタカナ系」の誤字をかなり発見しやすいです。
以前は読み上げ精度などもいまいちなものが多かったのですが、日本語解析エンジンの向上などにより、だいぶ改善してきたようです。
スマホでは、ユーザー補助ツールとして、かなり精度の高いものが最初から搭載されています。
WindowsでもMicrosoft Haruka Desktopあたりからだいぶ改善された気がします。
おすすめなので、一度お試しください。
Androidでは「聴く小説」「なろう朗読」などがおすすめです。
聴く小説については、なろうの下書き表示も読み上げに対応しているので、公開前でもチェック可能です。
Windows/Chrome、(or Mac)では手動インストールが必要ではありますが拡張機能「novels-reader」が比較的おすすめのようです。
Mac、iOSはごめんなさいわかりません。
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