第24話 散策

3国王の集う城の完成祝いの会も無事に終了した。


今日は、オルメテアの街を散策することにしていた。


街は静かな中にも活気のある比較的大きな、雰囲気の良い街である。


ルーセリア国境にも近いせいかセンスの良い品物が多く、エリアリーゼやエルセフィアは、とても喜んでいる。


街に出た二人は、楽しそうで見ているエルシードも笑顔になってしまうのだ。


街の人達も歓迎してくれており、良く話しかけられる。


「新しい城主様は、天使様をお連れになられていらっしゃるのですね。」

街の人達には、高評価だ。


「僕の婚約者なんだ!」自慢げに答える。


「こんなお美しい方々、お二人ですか、いやぁ羨ましい。」


「いえ、私は侍女の様な者ですので。」

エルセフィアは、頬を赤らめて慌てて取り繕う。


「婚約者様は、こちらの天使様だけですよ。」改めて紹介した。


「失礼致しました。天使様は、まるでこの世のものではないかの様な美しいお姿ですが、貴方様もとても城主様とお似合いでしたのでつい・・・」

エルセフィアの中のモヤモヤした気持ちが形になり始める。


そうか・・・私は、知らずにご主人様に、好意を抱いていたのだ。

そう気づいたのだ。


「だめぇエルは、私だけのものなんだからぁ」

拗ねたエリアリーゼもまた可愛いいのだ。


周りもほんわかとしてしまうのだ。


「勘違いさせてごめんなさい。少し離れて歩きますね。」


少し距離をとるエルセフィアは、少し淋しそうだ。


「はぐれると危ないから、離れなくていいよ。エルセも大事だ。」


「勿体ないお言葉です。」エルセフィアは、紅くなって押し黙る。


本来アルカテイルの血を引く、伯爵家令嬢であるエルセフィアは魔剣士という立場はあるものの、正式にエルシードの婚約者としての権限は十分い持ち合わせているのだ。



町も少し外れにかかると、少しガラの悪い男たちが闊歩する区画にたどり着く。


「こんな荒れた場所もこの町にあるんだね。」周囲を見渡す。


ガラの悪い男たちが3人に視線を向ける。


「なんだ、お坊ちゃんには勿体ない美人を二人もつれているなぁ」


「天使族のハーフもいるぜ」いやらしい顔をして、近づいてくる。


「よぉ、お嬢さんたち。そんなヒョロヒョロなガキの相手してないでこっちに来なよ。良い思いさせてやるぜ。」


「こんな雰囲気のいい街にもこういう奴らは居るんだな。少しづつ改善しないといけないね。」


「なに、カッコつけてやがる。」

ならず者はシミターを抜いて、エルシードに突き付けてくる。


「エルやっちゃえ!」

エリアリーゼはエルシードが馬鹿にされたのが気に食わない。


周囲にはいつの間にか10人以上のならず者が集まる。


目当ては二人の美女である。


エルシードはゆっくり双剣を抜くと、

「エンチャント、ディメンションバースト」

ならず者を切り殺さないように魔法付与を行う。


ゆっくりならず者達の囲みに自ら入っていく。


一斉に戦闘が始まる。


剣が交わる音すらしない。


《ズドッバシッドシャーン》


エルシードの双剣は軽くならず者をたたき伏せていく。


かなわないと思うや、ならず者は美女二人に目標を変える。


二人に迫るが、目の前にエルシードが空間転移する。


「残念だったね。この二人は君達が触れていい女性じゃないんだよ。」

冷ややかに話す。


ならず者は逃げ出して散開していった。


「うんうん、カッコよかったよ。」

エリアリーゼはご機嫌だ。


「ここはあまりいい場所じゃないね。戻って食事摂ったら城に帰ろうか。」

予約した町のレストランに入る。


「暗いけど雰囲気があるレストランですね。」エルセフィアの感想である。


「ここは、地域の季節の料理や特産物を出してくれるお店だって聞いたよ。」


運ばれてくる料理は、この季節にしか味わうことのできない、山菜の芽や、魚料理など素朴なものだ。


味付けも薄味で素材を楽しむように作られている。


それぞれが、このみのお酒を頼み、味わっている。


エリアリーゼの前にはきれいな色の果実酒が運ばれてくる。


給仕のフードを被った小さな女の子から受け取って、香りを楽しみながらゆっくり口をつける。


それを確認するように見ている店の隅に座っていたフードを被った男性3人が店から出ていく。エルシードの一行を観察していたようだ。


食事を終わるころには、エリアリーゼはテーブルに伏せて眠っていた。


起きない天使を抱き上げると城への帰路に就いたのであった。



城に戻り、眠っているエリアリーゼをゆっくりベッドに寝かせて、しばらく横に座って、顔を見つめる。


長い睫毛・ぷくっとして艶やかで宝石のような唇、微塵の乱れもない整った容姿である。


子供のころから毎日顔を合わせている、幼馴染の顔は気付くと、この世のものとは思われない美しさとオーラを帯びている。


ふっと、この宝物を失うことの恐怖を感じ、思わず眠っている天使に口づけをする。


「うっっふぅ・・・」


天使は、気付くと力いっぱい抱き着いてくる。


エリアリーゼのその真っ青で透き通るような瞳がエルシードを見つけて艶やかにほほ笑む。


「見つけたぁ、もう離さないよ。」しっとりと絡みついてきた。

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