第43話 丁度よい復讐



忙しかった奴隷購入というお見合いも終わり、俺はオークマンにお礼を言った。


「買う側がお礼を言うことは無いぜ、セレスは結局7人も購入してくれた…良いお客なんだからな」


「まぁ、売り上げに貢献出来て良かったよ」


よく考えた静子に出会えたのはオークマンの影響もあるのかも知れない。


田舎に帰る前に奴隷商に寄る。


そんな事はオークマンに会う前には思いもしなかった。


静子との出会いはオークマン無くして起きなかった。


そう考えたら…恩人とも言えなくも無い。


「ありがとうな!」


「こちらこそ、オークマン…色々と助かったよ、困った事があったら言ってくれ」


「なんの話だ?」


「いや、何でもない」


俺が彼に、個人的に感謝していれば良い、それだけだ…


困った事があれば出来る限りで…助けよう。


◆◆◆

帰りは大型馬車2台で村に向かっている。


何故か、奴隷と皆に別れて馬車に乗り込んだ。


「親睦を深める為に、カップルで座った方が良いんじゃないか?」


「儂らは、ちょっと話す事があってのう…それに女性は危ないからセレスに護衛を頼みたいんじゃ」


「そう言うことなら…」


2台の馬車で村に帰った、勿論何も問題は起きないで無事に村にたどり着いた。


此処からが大変だ。


◆◆◆


村長たちと別れ、家に帰ると静子達が待っていた。


「どういう事なのかしら? セレスくん…随分カワイイ娘たちね!」


「ねぇ…セレス可愛い奴隷を買ってあげるのに何の意味があるのかな?」


「セレスさん…説明お願い!」


「セレスちゃん、どういう事なのかしら?」


「解ったよ…説明する…まず村長や相談役たちの嫁にエルフを選んだのは単純にゼクトを悔しがらせる為だよ…勇者になったゼクトが望んでも手に入らない者…それは亜人との結婚、亜人の奴隷…人類の守護者たる勇者は人族以外との婚姻や肉体関係は出来ない…また勇者たる者奴隷の所持は出来ない…小さい頃からエルフに憧れたゼクトには良い薬だ」


子供の頃からエルフが好きだったゼクト…手の届かない夢を只の村長が叶えたなら…悔しいだろうな。



「確かにそうだわ…だけどセレスくん…他は何でかな? 特にセクトールのあれは何…可笑しいわ」


「セクトールの嫁は獣人族の中でも嫉妬深い犬族、その中でも浮気は絶対に許さない種族だ…もし浮気でもしたら、最悪指の3本も食いちぎられる、その覚悟が必要だ…これが静子さんを売った報い…生涯二度と浮気は出来ない…そして幼馴染には悪いがあの三人より美人だ、きっとゼクトも羨ましがる…自分の父親が、自分の恋人と同年代の美人を嫁にしていたら…悔しいんじゃないかな」


「セレスさん…ならあの人には何で…」


「サヨさん、カイトさんはサヨさんが従順で優しいから暴言を吐いたんだと思う…その仕返しにカイトさんの嫁は傭兵だ…口はカイトさんより悪いし、もし暴力になったら、カイトさんの腕の1本も折れる位強いから…もうカイトさんは彼女に逆らえない、尻に敷かれた人生を生きるしかない…どうかな?」


「そう…もう暴言も吐けないし横柄な態度も出来ない…そういう事なのね」


「そうだよ」


「セレスちゃん、私の方も何かあるのよね」


「シュートさんの相手は貴族の娘なんだ、幾らシュートさんがインテリでも『本物』には敵わない…きっとそこには辛い人生しかない、唯一の自慢の知識で勝てない…しかも彼女は護身術も出来るから暴力でも勝てない…つらい人生じゃないかな」


「そう…なんだ、多分あの人は立ち直れないな」


「セレス、カズマの相手も何かあるの?」


「貴族付きのメイドで料理しか出来ない」


「それってカズマの理想じゃない」


「それはカズマ兄さんの理想だけど…本当にカズマ兄さんに必要な人は料理が出来る人じゃ無くて、会計や掃除等身の回りの世話が出来る人間だ…きっと困る事になる…サポートするありがたみを知って貰う為に選んだんだ」


「そう…それは解ったわ」


「だけど…なんかパッとしないわよ、セレスくん」


「セレス…それだけなの?」


「セレスさん」


「セレスちゃん」


「あの子たちをよく見て…何となく誰かに似ていると思わない?」


「嘘…そんな…」


「ああっそう言うことね」


「これは凄いかも」


「あらあら」


俺が選んだ女性の共通点…それは『自分の娘』と何処となく似ている事だ。


女の子なら絶対に嫌がる筈だ…自分の父親が自分によく似た同い年位の女の子とやっている、そんな家に戻れるだろうか?


しかも母親は居ない状態で!


そんな家になんて居たくない筈だ。


本当はやらなくて良い復讐だから…この位で充分だ。


「これ位で良いんじゃないかな? 後は俺達がこの村を出て行けば、ゼクト達は居場所を失う…その後は静子さん以外ともしっかりギルドで籍を入れて楽しく生きよう」


「それでセレスくんはどうするつもりでいるの?」


「王都にでも行って楽しく暮らそう…5人ならきっと楽しいよ」


「「「「セレス(くん)(さん)(ちゃん)」」」」


◆◆◆


俺達は翌朝、王都に向かい旅立った。


静子達もどうやら納得してくれたようだ。


嫁関係を村長たちに世話したせいか…村総出で見送ってくれた。


これからはしがらみを捨てて楽しく生きれば良い…それだけだ。



第一部 完


※第二部は勇者の物語を中心に話がスタートします。


応援ありがとうございました。











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