第5話 これから

昨日はドキドキして眠れなかった。


嫌な言い方だが、この世界で初めての恋愛対象だ仕方ないだろう?


しかも静子さんは奴隷として売り飛ばされたのがショックなのか泣いていた。


俺は手を握ってあげて生殺しの状態で眠った。


「おはよう」


「おはようございますセレスくん」


いきなり目が合ってしまった。


「あっごめん」


手を握ったままだった。


「うふふっ良いのよ、寧ろありがとう…私が泣いていたから握ってくれていたんでしょう? 優しいねセレスくんは」


今までも勇者パーティで一緒に幼馴染と寝た事はあるけど…


対象外と対象内じゃ全然違う。


彼奴らと寝ている時は『娘』や『姪っ子』と一緒に寝ている感覚だったし。


これは全然違う…正直言えばドキドキして眠れなかった。


中身は中年体は少年…これはなかなか辛い物がある。


「それじゃ一緒に出掛けようか?」


「出かけるってセレスくん、何処に行くの?」


「朝食を食べて、次はギルドに行こうと思う」


「朝から外で食べるんだ凄い…」


確かに村じゃ食事するところは一軒しか無かったし朝からはやって無かったもんな。


「前もって頼めばこの宿屋でも食べれたけど、この辺りは普通にモーニングが美味しい場所があるから、そこに食べに行こう」


「私、結婚してから外食なんて殆どした事が無いから楽しみだわ」


「そう、俺は勇者パーティだったから旅から旅で外食か野営での食事ばかりだったよ、とりあえずお腹がすいたからいこう」


「はい」


◆◆◆


食堂についても静子さんはメニューで困っていた。


だから、普通のモーニングを二つ頼んだ。


「これ凄いわね、沢山の料理がお皿に乗っているわ」


いわゆるモーニングプレートだ。


確かに村に居たら食べないよな。


「そうだよね、確かにこれは村じゃ無いよ…とういうか村には食堂じたいが1軒しか無いもんね」


「そうだわ」


「だけど、俺は静子さんの手料理が食べたい」


「うふふっ、そう? それなら材料さえ買ってくれれば作るわよ」


「そう、うん凄く楽しみ」


勇者がチートだと言うけど静子さんもある意味チートの様な気がする。


料理も美味しいし、掃除を含み家事は万能…そして凄い包容力。


確かにメルたちは美少女だけど、まだ子供だから『包容力』が無いんだよな。


聖女のマリアだって全然及ばない。


俺が女性に一番求めるのはこの包容力。


一緒に居て疲れない…うんこれが一番だ。


「どうしたのセレスくん、そんなに見つめて」


「いや、幸せだなと思って」


「そう、そう思って貰えて私も嬉しいわ」


ただ一緒に食事するだけでも…本当に楽しい。


◆◆◆


冒険者ギルドに来た。


目的は静子の冒険者登録と賃貸物件を探す為だ。


「これはセレス様、今日はどういったご用件でしょうか?」


こういう所はSランク、待たずに応対して貰えるから得だ。


「冒険者の登録とパーティ申請をお願いしたい」


「そちらの女性とですか? 失礼ながらもうロートルも良い所じゃないですか? セレス様ならもっと」


静子さんの顔がドス黒い顔になった気がした。


「うふふっ、確かにもうおばさんですわね…ですがセレスくんと組むなら、そうね『元の方が良いわ』登録じゃなくて資格復活申請の方にするわ」


「静子さん、冒険者だったんですか?」


「ええっ、だけどその事は元の旦那も息子のゼクトも知らないわ、結婚する時には辞めていたからね、まぁ二人ともプライドの塊だから黙っていたのよ」


「そうですか? なら此方に少し血を頂けますか? まさか血液登録のないDランク以下って訳じゃないですよね!」


「うふふっ調べて見れば解るわよ」


「はぁ~」


何だか溜息をついていて態度が良くない気がする。


流石は静子…こんな状況でもニコニコしている。


血液を採り、暫く待った


奥から髭もじゃの男が焦ったように走ってきた。


ギルマスのベルダーだ。


「まさか、復帰されるのですか?」


「うふふっ、まぁね、この齢になって良縁に恵まれたから復帰しようと思うのよ、駄目かしらベー坊」


「ベー坊は止めてよ静子さん、これでももうギルマスなんだからさぁ」


「そうね、ごめんなさいね、ベルダーさん、それで私の復活申請は大丈夫かしら?」


なんだか凄い話になっているな。


俺、これでもS級なんだけどな。


「ああっ、勿論だとも『黒髪の癒し手』が復活するんだ反対なんかするもんか!」


え~と何これ?


「静子さん『黒髪の癒し手』って何? 」


どこかで聞いた気がする。


「ああっセレス様、静子さんも元S級冒険者だ、俺の世代の憧れの存在で、回復師(ヒーラー)として右に出る者は居なかったんだ! 流石に同じS級とはいかないが、A級から再スタートにしよう…どうかな」


「うふふっ構わないわ」


「そう言ってくれると助かる…それじゃ私はこれで失礼させて頂きます…後は頼んだぞ」


「はい…そのすみません失礼しました」


S級とA級のパーティだが、静子は奴隷の為稼いだものは全部俺の物になる。


最も財布は一緒にして静子にも自由にお金を降ろせるようにしたから何も関係ないな。


だけど、そんな実力のある冒険者ならなぜ、簡単に奴隷になったんだ?不思議でならない。


今日の夜にでも聞いてみるか。


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