第33話 私もリュカ様の役に立ちたいです

翌日、早速リュカ様と一緒に領地を見て回る事にした。かなり土地が広い様で、1日では全て回れないとの事。時間はたっぷりあるのだ。ゆっくり領地を見て回ろうと言う話で落ち着いた。


今日はブドウ農園を見学する事になった。農園に行くのだから、やっぱりズボンよね。


早速家から持ってきたジャージに着替えた。メイドたちが何とも言えない目で私を見ていたが、気にしない事にした。


「リュカ様、おはようございます」


「ジュリア、おはよう。もしかしてその格好、噂に聞くジャージかい?」


さすがリュカ様だ。私の事をよく知っている。


「はい、そうです。この格好なら汚れても大丈夫ですし、動きやすいのでお手伝いも出来ますわ」


せっかくならブドウの収穫とか手伝えたらいいな、なんて思っている。


「なるほど。ジュリアらしいね。でもその格好、とてもよく似合っているよ」


そう言って笑っていた。


早速ブドウ畑に向かう。私がすぐに迷子になると思っているリュカ様。何度も


「勝手にどこかに言ってはダメだよ。君はすぐに迷子になるのだから」


と、耳にタコが出来るくらい私に言って来たのだ。失礼ね、そんなにすぐに迷子にならないわよ。そもそも今日は、リュカ様から離れるつもり何てないし!


それでも心配なリュカ様は、ずっと私の腰を掴んでいた。


ブドウ畑に着くとちょうど出荷時期なのか、せっせと収穫を行っていた。せっかくなので、1房食べさせてもらう事に。


渋みもなく、とても甘くておいしかった。さらに、ジュースやワインの工場も案内してもらった。ワイン工場であまりにも私が物欲しそうにしていた為か


「ジュリア、17歳になったら好きなだけワインを飲んでもいいからね」


そうリュカ様に笑われてしまった。


翌日は、酪農の方を見学した。この日ももちろんジャージで向かう。せっかくなので、乳しぼりをさせてもらった。さらに、搾りたての牛乳も頂く。あぁ、何て美味しいのかしら?さらにチーズやバターなどの加工工場にも連れて行ってもらった。


それにしても、昨日のブドウといい、かなり加工の方にも力を入れている様だ。リュカ様曰く


「作ったものをそのまま売るより、何かに加工して売った方が領民にとって、より多くの収入を得られるんだ。少しでも領民の暮らしを安定させるのが、僕たち王族や貴族たちの仕事だからね」


との事。まだ13歳なのに、民の為に色々と考えているなんて凄いわ。日本ならまだ中学生なのにね。そんなリュカ様の役に立てたら…そんな事を考えてしまう。


3日目は、農業の見学に行った。お芋を中心に作っている様で、たくさんのお芋が植えられていた。この日も芋ほりを手伝える様に、ジャージで向かった。さらに、畑に行くという事で長靴も履いていく。


「ジュリア、今日はまた凄い格好だね」


そう言ってリュカ様が笑っていた。早速畑を見学させてもらう。ちょうどジャガイモの収穫の時期の様で、たくさんのジャガイモが収穫されていた。


せっかくなので、私たちもジャガイモ掘りをさせてもらった。ツルを抜いた後、土の中に残っているジャガイモを掘り出していく。傷がつかない様に、丁寧に掘り起こす。これ、地味に大変ね…


「ジュリア、腰が痛くないかい?そろそろ次の工程に行こう」


リュカ様に連れられ、次の工程へと向かった。ここでも加工品が作られているのかしら?そんな風に思っていたのだが、どうやらジャガイモはそのまま出荷する様だ。綺麗に洗われたジャガイモたちが、箱に入れられている。


「リュカ様、ジャガイモは加工しないのですか?」


「ああ、ジャガイモは料理人たちが直接調理するから、そのまま出荷するんだよ」


そう教えてくれた。なるほど。


ふと端っこの方によけられているジャガイモの山を発見した。


「リュカ様、あのジャガイモたちは、出荷しないのですか?」


「ああ、あれは小さかったりジャガイモに傷がついていたりして、出荷できないんだ。領民に配ったりもしているのだが、それでも余ってしまうものは破棄している」


何ですって、捨てているですって!なんてもったいない事を。これは何とかしたいわね。


視察が終わると、早速厨房へとやって来た。領地でとれたジャガイモを薄くスライスし、塩水に付ける。私が急に料理をし始めたものだから、料理人たちが集まって来た。きっとまた私が新しい料理を作ると思っているのだろう。


「ジュリア、一体何を作っているんだい?」


やって来たのはリュカ様だ。


「ジャガイモを使った、お菓子を作っているのです」


「ジャガイモを使ったお菓子かい?それは興味深いね」


リュカ様も興味津々で見ている。塩水につけておいたジャガイモの水分を、丁寧にふき取る。さらに厚切りにしたお芋も準備した。そしてそれらを、油で揚げていく。


「ジュリア、火傷には十分気を付けてくれよ。油が飛ぶと、とても痛いから」


急にそんな心配をしだしたリュカ様。そういえばリュカ様はここに来た日、てんぷらを作ってくれた時火傷をしたのだったわね。


「心配して頂き、ありがとうございます。でも、十分注意しておりますので大丈夫ですわ。リュカ様こそ火傷をしない様に、少し離れていてくださいね」


次々と上がっていくジャガイモたち。そう、私はポテトチップスと、フライドポテトを作っているのだ。今思うと、スナック菓子が大好きだった私。どうして今までポテトチップスの存在を忘れていたのかしら?


上手にあがったポテトチップスとフライドポテトに、塩を振れば完成だ。


「さあ、出来ましたわ。皆食べてみてください」


早速ポテトチップスを振舞う。


「サクサクしていてとても美味しいね。塩味がまた癖になるうまさだ。こっちも中はホクホク、外側はサクサクした食感が絶妙にマッチしている。どちらもとても美味しいよ」


「これはお菓子感覚で食べられますね。とても美味しいです」


あっという間に無くなってしまった。


「捨ててしまうジャガイモたちも、こうやって加工すれば立派なお料理になると思うのです。ただ、ポテトチップスもフライドポテトもその場で食べる必要があるので、王都に出しているお店で販売するといいかと」


ポテトチップスもフライドポテトも、どうしてもすぐにふにゃっとなってしまう。だから、やはり出来たてを食べてもらえるお店などがいいのよね。


「なるほど…確かにこれなら、形が悪くても問題ないな。さすがジュリアだ、僕はちょっと執事と話をしてくるから、これで失礼するよ」


そう言うと、リュカ様は急いで厨房から出ていった。リュカ様の役に立てた様でよかったわ。

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