第29話 私の作ったお菓子が注目を浴びています
リュカ様と婚約をしてから3ヶ月が過ぎた。最初は私に文句を言っていた令嬢たちだったが、次第に意見をはっきりと言う様になったリュカ様が、令嬢たちを厳しく注意。さらに、私に危害を加えようとした令嬢たちを厳しく罰したことにより、すっかり私に手を出す令嬢はいなくなった。
もちろん、マリアナも私をしっかり守ってくれた。ただ…相変わらずマリアナとリュカ様は仲があまり良くない。
そんな2人を見た王太子殿下が
「君のせいであんなにも穏やかだったマリアナが、こんなにも勇ましくなってしまった。リュカも今までニコニコしていたのに、すっかり自分の意見を言う様になったし。君のせいで、僕の可愛いマリアナとリュカが!」
そう文句を言われた。でも、私は何もしていないので
「そうおっしゃられても、私は何もしておりませんわ。それに王太子殿下は勇ましいマリアナや、自分の意見をはっきり言うリュカ様はお嫌いですか?」
そう聞いてやった。
「イヤ…嫌いという訳ではない。もちろん僕はマリアナを心から愛しているし、リュカも大切な弟だ。変な事を言うのはよしてくれ」
かなり動揺していた王太子殿下。少しづつではあるが、王太子殿下の扱いも慣れて来た。
そして、陛下やお父様が力を入れていたおせんべいの件だが、お饅頭などの和菓子も合わせて話が進められた。他国への売り込みと同時に、先日王都に専門店が出来た。
もちろん、私も色々とアイデアを出させていただいた。陛下専属の執事の話しでは、私が作ったお菓子たちは他国でもかなり人気の様で、既に数カ国から購入依頼が来ているとの事。
さらに王都にオープンしたお店も、連日超満員で、買えない人が続出する程人気らしい。
そんな人気のお菓子の発案者が私だと知ったクラスメートたちが
「スリーティス嬢が、あの有名なお菓子を発案したんだって?そういえば、以前おせんべいを持ってきていたね。あの時はすまなかった。もしよかったら、また持ってきてくれないかい?」
「私もおせんべいとお饅頭を頂いたけれど、本当に美味しかったわ。さすがリュカ殿下の婚約者ですわ」
「こんな素晴らしいお菓子を生み出すなんて、スリーティス嬢は天才だ。おい、誰だよ、変り者令嬢なんて言ったやつは」
と、なぜか手のひらを返した様に、私をもてはやしてきた。ただ、マリアナとリュカ様がそれが面白くない様で
「何なのよ、あの子たち。散々ジュリアの事を変り者令嬢だと言って、避けていたくせに。有名になった途端、コロッと態度を変えるのだから。あんな奴らの為に、お菓子を持ってくる必要は無いわよ。正直、お金を払ってもらっても、買ってほしくないわ」
「本当だ!そもそも、ジュリアは僕の婚約者なんだ。それなのに、令息どもが馴れ馴れしくジュリアに話しかけてくるなんて。本当に油断も隙もない!ジュリア、令嬢はともかく、令息とは話してはいけないよ。わかったね」
そう言って怒っていた。ただ、リュカ様は怒るところが若干ずれている気がするが、まあいいか…
今日もいつも通り授業を終え、帰る支度をする。
「ジュリア、帰ろうか」
私の元にやって来たのは、リュカ様だ。婚約してしばらくしてから、なぜかリュカ様が送り迎えをしてくれるようになった。どうやら1人で馬車に乗せるのが不安らしい。
朝はお兄様とお姉様も一緒だし、帰りはお姉様もいると伝えたのだが
「君は僕の婚約者なんだ。万が一の事があるかもしれないからね。とにかく、送り迎えをさせてほしい」
そう言われてしまい、断る理由もないのでお願いしている。
「リュカ様、今日は王都に出来たお店に顔を出そうと思っておりますの。ですから…」
「それなら、僕も行くよ。そうだ、せっかくだから、王都の街も一緒に見て回ろう。僕たち、デートをした事がなかっただろう?」
リュカ様の言う通り、2人でデートをした事がなかった。前世では制服デートに憧れていたのよね。よし!
「分かりましたわ。それでは早速参りましょう」
リュカ様の手を握り、馬車まで向かおうとした時だった。
「待って、ジュリア。私たちも一緒に行ってもいいかしら?私も新しく出来たお店が気になっていたのよ」
声を掛けて来たのは、マリアナだ。隣には王太子殿下もいる。
「マリアナ嬢、僕たちは今からデートをするんだ。邪魔をしないでくれ。そもそも、王太子と王太子の婚約者が、街をウロウロするのは良くないだろう?」
「デートなんて、いつでもできるでしょう?それに、私たちは変装していくから大丈夫ですわ。ねえ、リューゴ様」
「ああ…」
少し気まずそうな王太子殿下。ダブルデートか。それもいいわね。
「わかったわ、マリアナ。リュカ様も、いいですよね。ダブルデートもきっと楽しいですわよ」
「ダブルデート?」
「はい、2組のカップルが一緒にデートをする事です」
「2組のカップルか…わかったよ。ただし、マリアナ嬢、僕たちの邪魔はしないでくれよ」
「邪魔の意味がわかりませんが…とにかく、早く行きましょう」
私の手を掴み、歩き出したマリアナ。
「おい、ジュリアを連れていくな。兄上、マリアナ嬢がまた暴走していますよ。しっかり止めて下さい」
すかさず私をマリアナから奪い取ると、王太子殿下に抗議をしている。慌てて王太子殿下が、マリアナの手を取った。
あんなに嫉妬深かった王太子殿下。それがいつの間にか、毒が抜けた様に大人しくなった。
実はマリアナ、今まで王太子殿下に自分の気持ちを伝えていなかったらしい。元々マリアナの気持ちを無視し、ほぼ強引に婚約をした2人。ずっと王太子殿下は、いつかマリアナが誰かを好きになって、自分から離れていくのではないかと不安で、つい束縛してしまったとの事。
「あれだけずっと一緒にいるのだから、私の気持ちを知っていると思っていたのだけれど…やっぱり自分の気持ちは、きちんと言葉にしないとダメね」
そう言ってマリアナは笑っていた。マリアナも王太子殿下が大好きだと伝えた事で、殿下の心にも少しゆとりが出て来たのだとか。特にこの国一の美少年リュカ様と、美しいマリアナが恋に落ちるのではと、見当違いな心配もしていたとの事。
でもリュカ様は私と婚約し、さらにマリアナからリュカ様に関する愚痴を聞いてから、2人が恋に落ちる事はないと確信したのも大きいらしい。
何はともあれ、王太子殿下の強い執着が落ち着いたのは私にとっても喜ばしい事だ。仲良く馬車に乗り込む王太子殿下とマリアナを見て、つい笑みがこぼれるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。