第27話 マリアナが心配してくれていました
長い口づけから解放された私は、ゆでだこの様に顔が真っ赤だ。やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。
「ジュリア、顔が真っ赤だよ。可愛いね」
そう言って私の頬に口づけをした。この人、さっき自分の意見を言うのが苦手と言っていなかった?さっきから恥ずかしいセリフをバンバン言っているじゃない。
「もう授業が始まってしまっているね。あと10分程度で授業も終わるし、終わってから戻ろう。先生には、僕から伝えておくから安心して」
ふと時計を見ると、随分時間がたっていた様だ。2人並んで近くのベンチに腰を下ろす。
「そうそう、ジュリアが開発したおせんべい、早速話が進んでいるよ。今日も君の父上と僕の父上が王宮で話をしているんじゃないかな?」
「そういえば、お父様がそんな様なことを言っていましたわ。私の為に雇ってくださった料理人たちも、今日は王宮に行っている様です」
私の作ったおせんべいが、まさか王家の目に留まるなんてね。でも、本当に貿易が成功するのかしら?
「父上もかなりおせんべいを気に入っているからね。それに、おせんべいが広がれば、開発者でもある君の地位も上がるよ。そうなれば、もう君の事を変り者令嬢なんて言う人はいなくなるよ」
どうやら陛下は、変り者令嬢と言われている私の汚名を返上する事も目的の様だ。私の為に色々と動いて下さっているなんて、なんだか申し訳ないわね。
「さあ、そろそろ授業が終わる時間だよ。そろそろ行こうか」
「はい」
授業が終わる少し前に教室に戻ってきた。そして授業が終わり、先生が教室から出て来たタイミングで、リュカ様が先生に話しをしてくれた。
令嬢からの暴言も事細かく話してくれ、特に怒られることなく済んだ。さすが第二王子のリュカ様だわ。先生からの信頼も絶大な様だ。
「ジュリア、よかった。登校したらあなたとリュカ殿下の姿がないから、心配していたのよ。大体の想像はつくけれど、大丈夫だった?」
教室に入ると、すぐさま私の元に飛んできてくれたマリアナ。
「心配かけてごめんね。でも大丈夫よ」
「本当に?どうせ令嬢たちに愚痴愚痴言われたのでしょう?可哀そうに」
「本当に大丈夫よ。それに、リュカ様が令嬢たちに言い返してくれたし」
「えっ?リュカ殿下が?」
目を大きく開けて、固まるマリアナ。そんなに驚かなくても…リュカ殿下も同じことを思ったのか
「ジュリアは僕の婚約者だからね。これからは僕がジュリアを守るから、マリアナ嬢はジュリアを気にしてもらわなくても大丈夫だよ。それに君がジュリアに近づくと、兄上が怒るからね。極力ジュリアには近づかないでほしい」
何を思ったのか、マリアナにそんな事を言い出したのだ。確かに王太子殿下には色々と言われたけれど、王妃様もかばってくれたし、これからも仲良くしたい。
そう言おうと思った時だった。
「リュカ殿下にとやかく言われる筋合いはありませんわ。そもそもあなた、入学当初からジュリアが好きだったのでしょう。それなのに、今までジュリアを守れなかったくせに、よくそんな事が言えますね。とにかく、ジュリアは私の親友ですので、私たちの仲を邪魔する事だけはしないでくださいね。さあ、ジュリア、次は移動教室よ。一緒に行きましょう」
私の手を掴み、歩き出したマリアナ。チラリとリュカ様の方を見ると、マリアナを睨んでいた。
「本当に何なのよ、あの男!王家の力を使って、無理やりジュリアを婚約者にしたくせに!そもそも今まで令嬢たちに囲まれて、鼻の下を伸ばしていたくせに!ジュリア、リュカ殿下との婚約が嫌だったら、そう言ってもいいのよ。私が王妃様に頼んであげるから!」
真剣な表情で、私にそう言ったマリアナ。
「ありがとう、マリアナ。でも、リュカ様はそんなに悪い人ではないし、今日も私の為に、令嬢にしっかり意見を言ってくれたの。それに何より、私の事をとても大切に思ってくれているし。正直まだリュカ様の事を好きかどうかよくわからないけれど、これから少しずつリュカ様の事を知っていきたいと思っているの」
「そう…ジュリアがそう思っているなら別にいいけれど…でも私、リュカ殿下って苦手なのよね。いつも作り笑いを浮かべて、何を考えているか分からないじゃない。それに、リューゴ様の実の弟なのよ。今まであまり感情を表さなかった分、リューゴ様級、いえ、それ以上にジュリアに執着するのではないかと思って…王妃様の話しでは、陛下もかなり嫉妬深かったみたいだし…」
リュカ様が私に執着?あの王太子殿下の様に?
「う~ん、王太子殿下みたいに執着するリュカ様か。あまり想像できないけれど…」
「とにかく、何かあったらすぐに報告して。私に出来る事があったら、あんでもするから」
そうマリアナに言われたが、リュカ様はやっぱりそんなタイプではないと思うんだけれどな。ただマリアナは、あまりリュカ様が好きではない様だ。その事だけは理解できた。
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