第6話 クラスで浮いてしまいました

翌日、気を取り直して貴族学院へと向かう。とにかく、一度第二王子に謝罪しておこう。これから4年間、貴族学院に通うのだ。令嬢に嫌われてしまったら、きっとこれから大変な事になる。少しでも印象を良くしておかないと。


「ジュリア、着いたよ。今日も迷子になるといけないから、俺たちがクラスまで送ってやろう」


すかさず手を差し出すお兄様。


「ありがとうございます。でも昨日、しっかり見取図を確認しましたので、もう迷子にはなりませんわ。それに私はもう13歳です。いつまでもお兄様やお姉様に甘えている訳にも行きませんので」


これ以上目立ちたくはない。そう思ったのだ。


「わかったよ。でもジュリアは俺たちの大切な妹だ。何かあったら遠慮なく頼って来るんだよ」


「ありがとうございます、お兄様」


お兄様やお姉様と別れ、早速教室へと向かう。確かこっちだったわよね。


教室に着くと、既にたくさんの生徒が来ていた。


「皆様、おはようございます!」


私は元気よく皆に向かって挨拶をした。でも…なぜか皆こちらを見て固まっている。私、何かおかしな事を言ったかしら?


「おはよう、スリーティス嬢。今日は迷子にならなかったかい?」


私に話しかけて来たのは、第二王子だ。わざわざ迷子に触れるなんて!そう思ったが、ここは大人の対応をしないと。


「はい、お陰様で、今日は大丈夫でしたわ。昨日は先生から庇っていただき、ありがとうございました」


とりあえず他の令嬢の手前、昨日の件のお礼を伝えた。


「僕は当たり前の事をしただけだよ。それより、何か困ったことがあったら遠慮なく相談してもらって構わないからね」


そう言ってほほ笑んだ第二王子。この人、悪い人ではなさそうね。そう思っていると


「殿下は本当にお優しいのですね。素晴らしいですわ」


「殿下、あっちで皆とお話ししましょう」


令嬢たちが一気に第二王子を囲い込み、連れて行ってしまった。そして、私は見逃さなかった。何人もの令嬢が、すごい形相で私を睨んでいたことを…


もしかして私、令嬢たちに嫌われてしまった?

そんな不安が、頭をよぎる。

でも、とにかく第二王子には謝ったのだから、問題ないはず。そう自分に言い聞かせる。


その後は普通に授業をこなす。休み時間、せっかくなので令嬢たちと仲良くなりたくて、周りを見渡す。でも、既に令嬢たちのグループが出来ていた。


そうよね…子供の時からお茶会などに頻繁に参加している令嬢たち。既に仲の良い子たちくらいいるわよね。それに比べて私は、ほとんどお茶会にも参加せず、ずっと日本食や、日本の服などを開発していた。


は~、お母様の言う通り、もう少しお茶会などに参加しておけばよかったわ…


“あなたはいつも訳の分からない事ばかりして!令嬢なのだから、お茶会に参加しなさい。貴族学院に入った時、困るのはあなたなのよ!”


そう言われていたのよね。まさか本当に困る事になる何て…


結局休み時間はずっと1人で過ごした。


そしてお昼休み。さすがに1人で食事をするのは寂しい。


よし!

意を決して、近くにいた令嬢たちに声を掛ける。


「あの、私も一緒にお昼ご飯を食べてもいいかしら?」


そう伝えたのだが…


「あ…えっと…ごめんなさい。私たち、別の人たちとも約束しているの。それでは、失礼いたします」


そう言うと、すごい勢いで去って行った。さすがに断られるなんて思っておらず、ショックだ。ふと周りを見ると、そそくさと皆教室から出て行ってしまった。1人教室に取り残される。


どうしよう…

お兄様やお姉様のところに行こうかしら。でも、そんな事をしたらきっと2人とも心配するわ。


仕方ない、今日は1人で食べよう…


そう思い、お弁当を持ってテラスに行くが、皆が楽しそうに食事をしていた。さすがにこの中で1人で食事をする勇気はない。


1人お弁当を持ってトボトボ歩いていると、誰もいない場所にやって来た。どうやら校舎の裏側の様だ。ここなら1人で食べてもよさそうね。


早速お弁当を広げた。今日のお弁当はおにぎりと卵焼き、唐揚げ、魚の味噌煮、さらにお味噌汁だ。お味噌汁は冷めない様に、特殊な容器に入っている。この特殊な容器も、私が開発したのだ。


どのお料理もとても美味しいはずなのに、なぜだろう。全然美味しく感じないわ。私、これからずっとこうやって1人で過ごすのかしら?


そう思ったら、悲しくて涙が出て来た。

ダメよ、こんなところで泣くなんて。もし誰かに見られたら恥ずかしいわ。でも…

どうしても涙をとめる事が出来ず、1人静かに涙を流したのであった。

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