見えない彼女のモーニングコール

じぇいそんむらた

第1話 頼んでいないモーニングコール

俺こと田中玲斗は社会人2年目。

今日俺は、大学時代から住んでいた賃貸から、より会社に近い駅の物件へ引っ越した。

憧れだった風呂トイレ別室内洗濯機置場あり、駅から徒歩10分とまずまずの立地である。


引っ越しは無事に終わり、明日土曜は一日中片付けだな……と覚悟を決めて眠りについたのだった。


***


「おはようございます……朝ですよ……起きて……」


耳元でささやく声が聞こえる……しかも、可愛い女の声。俺の意識は、その声によって眠りから呼び戻された。

いや待て、一人暮らしの男の部屋に女の声がするわけがない。変な夢でも見たんだと思い、再び眠りにつこうと試みる。だが、眠りに入っていない、夢なんて見ようはずがない今も、なぜか声はしつこく俺を起こそうとする。


「なんだよ……もう……」


しぶしぶ目を開けた俺。だがその途端、声は聞こえなくなる。当然、女の姿もない。


「……変な夢」


もう一度寝るか、と思ったが、眠気が吹き飛んでしまったようだ。仕方ない、諦めて起きることにした。

スマホをみると6:02の表示。せっかくの土曜

に早起きしたこと、そして段ボールの山。それらは、俺の目覚めをうんざりさせるには充分だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る