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隣の家から自宅へ帰ってきたが、お母さんは夜勤の為、真っ暗だった。勿論、出迎える声もない。
僕も黙って玄関を上がる。
時計を見ると11時を回っていた。明日も学校なので、2階の自室へ向かう。
僕の部屋は4畳半の和室で、日焼けして白くなった畳が敷き詰めてある。部屋の窓際にある机は、父さんが大学から貰ったもので、一般家庭には似つかわしくないものだった。
僕は押入れから布団を出し、畳の上に敷くと、押入れの棚に上がる。そして、天井の点検口を開き、いつものように屋根裏へよじ登った。
屋根裏は僕の秘密基地である。
小学4年生の時の夏。沸き立つような雲を見上げた時に、ふと自分の家の切妻屋根が目に入った。すぐ2階へ駆け登り、自分の部屋の押入れの中に点検口を見つけた時は胸が高鳴った。
その日から2年かけて、屋根裏を改造した。
剥き出しだった
材料は全部近所の大工さんや材木屋、工場……
一番高い所で、140センチメートル程の高さだが小柄な自分には十分だったし、意外と広いとさえ感じている。
そこにコツコツ集めた自作の筋トレマシーンが並んでいる。ここでの筋トレが僕の日課の一つである。早朝には10キロメートルのランニングも行なっている。
筋トレとランニングを始めたのは、6年前秘密基地を見つける前からだった。
僕は幼少の頃、テレビでやっていた特撮ヒーロー「エアジャスティス」が好きだった。
ジャスティスは白の特殊スーツを見に纏い、エアジェットで空を飛びまり、怪人から人々を守るのだ。
大きな事件が十数年起きていない日本で、ヒーローなんて存在は必要ない。でも僕はその強さに賢さに憧れた。
父さんが死んでから、その憧れがより強くなったように思う。きっと、ジャスティスに父さんの面影を感じているのだろう。
秋葉家に世話になり、お母さんを助けてあげられない自分が嫌だった。1日でも早く立派になりたかった。
だから、沢山勉強をしトレーニングを積んだ。しかし、ヒーローはその姿を他人に見せてはならない。日夜、陰で努力しなければならない。
ジャスティスも普段は普通の小学校教諭を演じており、自分の本当の姿は隠していた。(終盤では世間にバレてしまうのだが)
現代に於いて、正義の味方は必要なくなっていた。形式だけの自衛隊、個別識別システムに寄りかかり捜査をしなくなった警察。
この国は平和になり過ぎた。自衛の
それでも僕はヒーローに憧れている。
いつか、お母さんを、秋葉夫妻を、こやちゃんを守れる男になりたい。
僕は幼い頃から憧れたヒーローになりたい。
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