第132話 九頭竜2

「あの大蛇おろち強いな。うちのコボルト達がなかなか倒せないぞ」


「ああ、あいつは九頭竜ね。大蛇おろちの中でも、9つの首を持つSランクの魔物よ」


 レンの質問にヘレナが答える。


「九頭竜? って事はドラゴンの一種?」


「違うわよ。蜥蜴よ蜥蜴。騎竜と一緒よ。ドラゴンはもっと強いわよ」


「そっかぁ。でもなんか硬そうだな。マチェットが効いてないみたいだ」


「そうねぇ。傷を与えられているのは、フェルダーの光の剣と、……ゲイルの槍、ロジーナの剣、ドライの魔剣ぐらいかな? いずれも致命傷にはなっていないようね」


「ふむ」


 レンは腰に差しているオリハルコンの剣を抜いた。


「丿イン、これ持って九頭竜を斬って来い。オリハルコンなら九頭竜も斬れるだろう」


 レンは丿インにオリハルコンの剣を渡した。


「ウォン?」(いいの?ワン)


「ああ、良いよ。ここはヘレナとサンディがいるから、大丈夫だろう」


「そうねぇ。サンディもいるしね。サンディは結界を張れるんでしょ?」


「はい。レン様に傷一つつけさせない所存です」


「だそうだ。行って来い」


「ウォンウォン」(倒して来るワン)


 丿インも九頭竜討伐に参戦した。


 九頭竜にダメージを与えられる武器が増えて、戦況はコボルト達に傾いて来たようだ。



(そろそろ倒せるかなぁ)


 レンはボーッとコボルト達が九頭竜と戦う様子を見ていた。


 すると横たわっていた白首がピクリと動き、目を見開いた。


 そして、レンとヘレナを見ている事に気付く。


 白首が口を大きく開いた。


(ヤベぇんじゃないか?)


 レンは咄嗟にヘレナの前に立ち、両手を広げてヘレナを庇う。


 白首の喉が膨らみ明らかに何かを放出する前兆に見える。


「ちょっとぉ、退きなさいよ」


 ヘレナも白首に気付きレンを退かせようとする。


 もう一人、いや一匹も白首の様子に気付いた。ブラッドハウンドのコボルトだ。


 ブラッドハウンドのコボルトは、レンの前に駆けて来てレンを庇う。


「おい! そこを退けええ! ん? あれ? ………どうした。何事もないぞ」


「助太刀致す」


 男装の麗人ヴァイシュラが白首の首を斬り落としていた。


「あ、有難う」

 レンがヴァイシュラに礼を言うと、


「なんの、主を思う忠義の心に打たれたまで、どれ片付けて来ようか」


 その後は圧倒的だった。


 ヴァイシュラはまるで九頭竜が次にどう動くか分かっている様に、いや、それ以上の動きだ。


 始めてフェルダーやコボルトと連携したにも関わらず、フェルダー達の動きを全て把握している様に、危険は未然に防ぎ、連携が更にスムーズになる様に、戦いの全てを把握している。


 まるで九頭竜もフェルダー達もヴァイシュラの手のひらの上、ヴァイシュラの思い通りに動いているようだ。


 ヴァイシュラは明らかにこの場の戦いを支配していた。


 そしてあっという間に九頭竜は倒された。


「ぐ、軍神………」


サンディが呟く。

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