第123話 サンディ2

「レン様はコボルトテイマーですのよ。城の中でコボルトを召喚すれば、コボルトが城内を一気に制圧出来るわ」


「コボルトが? 言ってもコボルトでしょ。コボルトが何匹いたところで、たかが知れてるわ」


(俺だけじゃなく、コボルトの悪口まで言い始めたか……)


「リリス、良いよ。サンディさんが優秀な軍師だとしても、初見の他国の国王に、敬語も使えないどころか平気で悪口を言う、礼儀も知らない人を仲間にする気は無い」


「私も賛成ね。リリスの知り合いじゃ無ければ首を落としているわ」


「そうね。ここは何の魅力もない小さい領地だけど、蹂躙してあげましょうか?」


「俺もこの女のさっきからの物言いに、頭に来てるんだよなぁ」


「同意」


 エリー、ダリア、フェルダー、ゲイルがレンを肯定し、サンディを睨む。


 ロジーナはどうでも良い顔をして成り行きを見守っていた。


「へぇ、遣れるもんならやってみなさいよ」


 サンディは挑戦的な目をして、ニヤニヤ笑っている。


「リリス、行くぞ」


 レンはサンディの挑発に乗らず背を向けた。


「ふん」

 フェルダーも背を向けるとダリア、エリー、ゲイルも背を向けた。


「私も仲間に加えるのは反対かな、挑発して私達の実力を見たいのか、レンの度量をはかってるのか知らないけど、初見の相手に優秀な軍師がする事じゃないわ。何よりモフモフに失礼よ」


 ロジーナがリリスにそう言って背を向けるとサンディがレン達に声を掛けた。


「ぎりぎり合格よ。力になってあげるわ」


「俺からしたらあんたは余裕で不合格だ」


 レンは歩みを止めずに背を向けたまま答えた。


「ちょっと、ちょっと待って下さいな」


 リリスがレン達を引き留める。


「彼女はこれからのレン様の覇道に必要な人材ですのよ。お怒りはご尤もですが、どうか気を静めてくださいまし」


 リリスがレンの前に回ってレンが舘を出て行くのを止めた。


「はぁ、取り敢えず俺達がミノス王城を制圧するのをリリスと一緒にここで待ってろ。話はそれからだ」


「レン様、丿インを召喚してくださいまし」


「ん、丿イン? ………まあ、いいけど。 召喚!」


 ボルゾイのコボルト・丿インが召喚された。


「ワォン?」(襲撃? ワン)


 現れて首を傾げる丿イン。


「きゃあ! なになに、なによ。この愛らしい生き物は? シュッとして、なのにモフモフ。モフモフなのね、ああ、モフモフだわ」


 サンディは丿インに抱き着き恍惚の表情で呟いている。


(ああ、コイツもポンコツだったか)


「ワォン?」(この女の人誰?)


「ふふふ、サンディの好みは丿インだと思っていたのですよ。ぴったりど真ん中だったみたいですね」


「ワォン」(なにか周りに潜んでるワン)


「ん、召喚!」


 レンは丿インの言葉を聞いてコボルト達を召喚した。


ゴールデンレトリーバーのツヴァイ、

ドーベルマンのドライ、

フラットコーテッドレトリバーのフィア、

シベリアンハスキーのフンフ、

セントバーナードのツヴェルフ、

ワイマラナーのアハト

の6匹だ。


「周り潜んでいる奴らを捕まえろ。殺すなよ」


コボルト達はクンクン匂いを嗅ぐと一斉に四方に駆け出した。


「ああ、あっちにもモフモフ、こっちにもモフモフ………」


あたふたするサンディ。


「どうなのよ! これがレン様のコボルトですわ!」


両手を腰に当て胸を張るリリス。


「これがコボルトなのね。モフモフ! 究極のモフモフだわ。おみそれしましたああ」

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