第121話 急変

 もう少しでオミランに入ると言う時、コボルト達が声を出す。


「ワン?」(ん? ワン)

「ワォン」(烏だワン)

「ガウ!」(飛行機ワン?)

「わんわん」(いや、ヤタだワン!)


 飛行機はこの世界にないだろう。


「ヤタ?」


「どうかしましたか?」


 リリスはレンに問い掛ける。


「ヘレナの眷属である八咫烏のヤタが来たらしい」


 レンが竜車の窓を開けると、八咫烏のヤタが竜車の中に入って来て、レンの前で足を見せる。


 ヤタの足には手紙が括り付けてあったので、レンはヤタの足から手紙を外し手紙を読んだ。


「え!」


 レンは驚きの声をあげて、手紙を読み進める。


「何が書いていたのかしら?」


 リリスがレンを心配そうに見た。


「直接読んでみた方が良い。アハト! 竜車を止めてくれ」


 レンはリリスに手紙を渡し、御者をしているワイマラナーのコボルト・アハトに竜車を止めるよう指示をした。


「見ても良いのですね」


 リリスはそう言って手紙を受け取ると読み始めた。


「え! 嘘………、そんな………」


 リリスの手紙を持つ手が震えている。


「どうしたのよ?」

「何があったの?」

「悪い知らせね」


 ダリア、エリー、ロジーナも心配そうにしており、竜車が止まったのでフェルダー達も竜車の元へ集まってきた。


 レンが竜車から降りると、ダリア達も竜車から降りた。


「ミノス王国でクーデターがあった。首謀者は庶子の王子で、国王と王妃は死亡。リリスの実の弟達も末の弟を除いて殺された。末の弟は偶々王妃の実家にいて、保護されているらしい」


「うはぁ、こりゃリリスも狙われるな。しかもこっちに来てるのはミノス王国にバレバレだ」


 フェルダーはレンの言葉に反応した。


「オミラン王国襲撃は中止してミノス王国襲撃に切り替える」


「多分待ち構えているぞ」


「ああ、分かってる。だがリリスの両親の敵討ちだ。やるしかないだろう」


「覚悟があるなら良い、行くか」

「行きましょう」

「行くしかないね」

「ぶっ飛ばしてやろうよ」


 フェルダー、ダリア、エリー、ロジーナがレンに応える。ゲイルも無言で騎竜の向きを変えた。


 竜車もUターンさせてもと来た道に引き返そうとするレン達。


「ちょっ、ちょっとまって下さいな。私の為に無謀な事は止めてくださいまし。一度アレスに帰るでいいじゃないですか」


 竜車からリリスが降りて来てレンの手を掴む。


「どうせ、オミランを攻める為に来たんだ。それがミノスになってもそう変わらないよ」


「そう、有難う。そうでしたら王都に行く途中で寄って欲しいところがありますわ」


 リリスはレンの決意の表情を見て、止められない事を知り、申し訳ない気持ちと嬉しい気持ち、悔しい気持ち、悲しい気持ちなどがゴチャゴチャになって、表情を上手作れない。


「取り敢えず、コボルトは送還する。お前らと一緒だと一目瞭然だからな」


「ワォンワォン」(マスターが心配ワン)

「ガウガウ」(一緒に行くワン)

「ワンワン」(大丈夫ワン)

「バウバウ」(敵が来たら倒すワン)

「ウォンウォン」(マスターの護衛ワン)

「ガフガフ」(腹が減っても頑張るワン)

「わんわん」(リリスが心配ワン)


 フィアが、ドライが、ツヴァイが、フンフが、丿インが、アハトが、ツヴェルフがそれぞれ反対するが。


「駄目、後で召喚するから、帰りなさい! 送還!」

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