第60話 次男アキツナ
ヒダ国が隣国との戦争の準備をしていた。今回は嫡男ヨリツナも出陣する。国王と嫡男は出陣に関する打ち合わせを国王の執務室で行っていた。
そこに現れた次男アキツナ。
「戦争で回復薬が必要になるでしょう。レンに任せた開拓村には大量の回復薬があると聞いています。供出させましょう。私が出向きます」
「ふむ………」
国王ヨショリは考えて。
「良かろう。行って来い」
「父上!」
嫡男ヨリツナが止める間もなく断を下す国王。
「有難き幸せ」
伏せた顔でニヤリと笑うアキツナは、踵を返し国王の執務室を後にした。
「宜しいのですか? 兄弟同士争う事になりますよ。今は戦力は外に向けるべきでは?」
「くくく、アキツナが上手くやればそれで良し。上手く出来なければレンが頭角を表すだけだ。競わせるのも経験だろう」
国王は窓の外に目を向ける。
アキツナは辺境の街に到着し、領主と面談していた。
「アキツナ様、ようこそお出で下さいました」
「ふん、こんな汚い街にあまり用はないんだが、仕方なく来たぞ。兵は貸して貰えるんだろうな」
「はい。準備しておりました」
全ては辺境の街の領主の計画通りだ。兄弟喧嘩ならば王家が息子を殺されたと言う大義名分は使えない。
(ふははは、兄弟喧嘩ついでに村を占領して、兄弟ともに殺してしまえば………、そしてそのまま村を占領してなし崩し的に村を手に入れるのだ)
「おいおい、こんなところにいつまでも居させるつもりだ。サッサと寝室に案内しろ。酒と女も上等なのを用意してるんだろうな」
そんな領主の腹の中は露知らず、アキツナはブツブツ文句を言っている。
(ふん、コイツの言葉もあの村を手に入れるまでの我慢だ)
翌日、500人の辺境の街の兵を連れてアキツナが開拓村に向かった。
「はぁ、こんな田舎に住んても何も面白い事はねえな」
アキツナは騎竜の竜車に揺られて酒を飲む、隣りには昨日一晩をともにした女の子を連れて………。
「もうじき村が見えて来るはず───」
村を囲う巨大な防壁が見えて来て言葉を無くす兵。
「ああ、お前は初めて来たのか。ここは下手な城塞都市より守りがかたいからな」
「こんな、場所を攻城兵器なしに攻略できるのか?」
「大丈夫だ。王子が王家の命令で来ているのだ。中に入れない訳がない。中に入っちまえばこっちのもんだ」
「中に入れば。あのクソ生意気な王子も殺っちまっても良いんだろ?」
「しっ、余計な事は喋るな。聞かれたら不味い」
「ああ、すまん。酒を飲んで、戦場に女を連れてきやがって、あのクソ王子は必ずぶっ殺してやる………」
そんな話を兵達がしてるとは露知らず、アキツナは窓の外から見えた防壁を見詰めているた。
「良いね、良いねぇ。あの城塞都市が俺のモノになって、莫大な金も手に入るのか、態々こんな田舎まで来てやった甲斐があるってもんだ」
とアキツナはニヤニヤしていた。
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