第35話 ノズチ5

 ノズチの素材をマジックバッグに入れて村に持ち帰ってジュリアに渡した。


「有難う! これで最高のマジックバッグと戦闘服を作ってあげるわ」


「戦闘服?」


「そうよ、ノズチの食道でレンとヘレナの服を作ってあげるわ」


 なんとなく嫌な感じがしたレンはジュリアに確認する。


「ジュリアさんって装飾が苦手なんですよね」


「そうね。でも格好いい服を作ってあげるわ」


「い、いや。服を作ってくれるのは嬉しけど、デザインは定番の普段着と同じにしてください」


(ジュリアさんは自信満々だけど、自信満々だけに出来上がりが不安だ)


「それでノズチを解体して全てを持って来たけど、胃袋と食道以外はいらないの?」


「いらない」


「ヘレナ、他に使い道がないのかな」


「う〜ん。皮はそこそこの値段で売れると思うけど肉は捨てるしかないかなぁ。角も牙も骨もないから後は素材はないなぁ」


「肉はコボルトにあげよう。謎肉として食料になるだろう。皮は街に売りに行くか」


 レンはヘレナとの会話を終わらせて、ジュリアに向き直る。


「ところで、マチェットの作成を先にやってもらえないかなぁ防衛優先だから」


 レンはノズチの素材を嬉しそうに品定めしているジュリアの様子に不安になって確認した。


「ああ、マチェットね。もう仕込みは終わったわよ。この子達が勝手に作るわ。コボルトの中でも賢い3匹らしいよ。覚えも早かったわ」


 ジュリアはコボルトに錬金術を仕込んでいたらしい。なんて早業。


 ジュリアの横に賢そうな3匹のコボルトがいた。


 ボーダー・コリーのコボルト、プードルのコボルト、シェットランドシープドッグのコボルトの3匹だ。


「わん!」(任せてワン)

「わんわん」(作ったワン)

「わんわんわん」(簡単だったワン)


「おお、任せたよ。みんなの武器を早急に、………丁寧に作ってくれ」


「わん!」(頑張るワン!)


 数日後、普段着と変わらない戦闘服を着たレンが、ノズチの皮を売るためドラッヘに乗って街に行く事にした。武器の材料になる鉱物も買って置きたい。


 今回はフィア、アインス、ツヴァイ、フンフに防衛を任せて、護衛にドーベルマンのコボルト・ドライとワイマラナーのコボルト・アハトを連れて行く事にした。


 ヘレナから貰った従魔の首輪をしていて、滑らかで手触りは最高だが、短毛の比較的モフモフ度が低い二匹だ。


 だが、戦闘力はピカ一。護衛には最適だ。


 ヘレナとドラッヘに二人乗りで、その後をドライとアハトがついてくる。ドライとアハトは走るのも速い。


 ヘレナはテイマーズギルドに用事かあるらしいのでついて来るそうだが、ドラッヘに騎乗出来ないレンは助かる。


 レンは数日ドラッヘの騎乗練習をしたが、まだ乗りこなせていない。


 村にはアンナさん、バークさん、ジュリアさんの人間3人もいるので、何かあったときは判断して貰う事にして、3人の言う事は聞くように厳命している。


 道中は何事も無く。無事街に着いた。


 冒険者ギルドの前でレンはドラッヘから降りた。


「護衛はいらないの?」


「ドラッヘもいるし、私は大丈夫よ。それよりレンは弱いんだからしっかり守られなさい。ドライ、アハト頼んだわよ」


「ガウガウ」(任せてワン)

「ガフガフ」(頑張るワン)


「分かったよ。じゃあ、気を付けてね」


「レンが気を付けてね」


「はぁ」


レンはドライ、アハトとを伴い、冒険者ギルドに入っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る