12.エレベーター

突然、鈍く不自然な音が鳴った。周囲はざわつく。

どうやらエレベーターが止まってしまったようだ。

すぐさま管理会社に連絡を入れる。

みしり、みしり、ワイヤーだろうか、音が鳴る。

予測される未来に対して困惑の声を上げる者、おたつくだけの者、できることはあるだろうに何もしない愚か者どもを横目に救急車と警察にも連絡を入れた。

二度目に鳴った大きな音は、明らかに致命的であろうことが察された。

10から始まったデジタル数字はみるみるうちに減っていく。

最終的に大勢の悲鳴の中で轟音が鳴った。

救急車は不要だったかもしれない。

私の周囲の悲鳴に反し、目の前の箱は静かだったのだから。

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