「お母さん！」

　店長の後ろに居たのは、三十代後半の女性だ。激務に疲れていた顔をしていたが、酒井を見た瞬間に意識が戻ったように周りへと頭を下げた。

「申し訳ありません！娘が、皆さまにご迷惑をかけたと聞きましたので！」

「いえいえ！逆にうちの娘が倒れそうになったところを助けてもらいましたから、頭を上げてください！」

　頭を下げたままの酒井の母親へ、京川の父親は頭を上げるように促す。結の父親のおかげで、酒井達へ文句を言う気はすっかり無くなっていたのだ。

「うちは娘が、あなたのお子さんを脅してこのコンビニの品物を無理やり買わせていたんです！さらにお金も脅し取ろうとしていましたので、その分もお詫びします！」

　作高の父親も、母親と一緒に頭を下げながら誠意を持って詫びた。それを見た酒井の母親は「いえいえ…」と返事をすると、急に前へ倒れそうになったのだ。

「―！？」

　一足早く動いたのは、ずっと父親の隣で様子を見ていた結の母親だ。少しよろめいた酒井の母親を、しっかりと受け止めたのだ。

「お怪我は、ありませんか？」

　落ち着いた、その優しい声に、酒井の母親は「すみません…」ともらす。

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