第14話 油断
「さぁてどうやって引っ張り出すかな」
紫焔はスコープを覗きながら言った。
「さすがにさっきのでだいぶ警戒されてっからな。射線が通らないところにいやがる。俺の方に来てくれんのが一番いいけどさすがに来ねぇよな」
紫焔はスコープから目を話さずに言った。
「しゃあねぇか……あの村の連中皆殺しって言ってたし、紅花が出てくるまで暇つぶしでもすっかな」
紫焔は紅花を狙うのをやめて、標的を変えた。
「さぁてどーれーにーしーよーおーかーなー」
スコープ越しに狙いを変えながら、誰を狙撃するか決めようとしていた。
すると一人の男が屋根に上ってこっちを見ている。
「あ?なんだあいつ?こっち見てる?そんなわけねぇよな。ここから二キロは離れてるぜ」
紫焔は鼻で笑いながらそいつを見ていた。
「ちょうどいい。最初はあいつに決めた」
紫焔は屋根の上にいる男に狙いを定めた。
スコープを覗いて集中力を高めると、屋根の上にいる男は紫焔を狙って弓を引いている
『あいつ……こっちを狙ってんのか?弓でこの距離は無理だろ』
紫焔が引き金を引こうとしたとき男は矢を放った。
その矢はぶれることなくまっすぐ進み、スコープを覗いていた紫焔の目を貫いた。
「ぐあっ!」
紫焔の目から血があふれ出す。
撃たれた場所を手で抑えながら紫焔は思考を巡らせる。
『何が起こった……まさか、あいつの放った矢が当たったのか?!いやあり得ない!銃での狙撃ですら命中率の低い二キロの距離をあんな弓で届かせることなんて出来やしない』
紫焔は予想外のことに動揺して足を滑らした。
「クソッなんで僕が!」
木の上から落下するなか、紫焔の右目には矢を放った後の男の姿が焼き付いていた。
紫焔の体は地面にたたきつけられた。
「なんで……なんで僕が撃たれてるんだ……僕は銃であいつは弓だぞ!射程距離は確実に僕の方が長いはずなのに……なんで……なんでだよ」
紫焔は這いずりながら応援を呼ぼうと通信機に手をかけた。
「チッ、早く応答しろよ……僕は……こんなところで死ぬわけにいかないんだ……あいつに……復讐するまで……死んでたまるか……」
紫焔は独り言をずっと言っていた。
「残念だったな隊長さん」
背後から声がして紫焔が振り向こうとしたら辺りに血しぶきが舞った。
「おま……え……は……」
紫焔は土の上に横たわり、二度と開くことのない目を閉じた。
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