第4話

 冒険者は、冒険者ギルドに所属する者を指し冒険者ギルドの規約に違反すれば罰せられる。ランクによって格付けされ、各々のランクによって月にこなす最低ラインの仕事量が決まっていた。

 最初はFランクから。また指名があれば、余程でなければ受けるのが基本だ。


 「つまり、入ってすぐに抜けるようであれば、クレット家に傷がつきますよって事ね。冒険者も信用第一なのは変わらないのよ。入ったなら最低ラインの仕事は受けてもらう事になるわ。あなたにしたらはした金でしょうけどね」


 ちょっと嫌味も含めて言われたけど、今回だけで終わりって事にはならないか。困ったなぁ。僕にこなせるのか……。


 「それと、マコトのオーブの事だけど、ただで貸し出しはできないわ。いえ、普通はないの。わかるでしょう?」

 「え? じゃ冒険者になっても意味がないんじゃ……」

 「至急借りたいって事よね? だったら依頼をこなしてもらいましょう」

 「え! そうしたいけど時間が……」

 「あなた、自分の意見だけ通ると思っているの?」

 「う……」


 そうだけどさ。時間がないからここに来たのに。


 「別に大したことない仕事よ。初心者がよく行うお仕事」

 「え? 本当ですか?」


 シーダーさんが頷く。


 「廃墟になった鉱山跡があるのを知っている?」

 「モンスター鉱山ですか?」

 「そうね。その名の方が有名ね。そこは、冒険者ギルドが買い取った場所で魔石が採れるの。魔石が採れると言う事は、魔素があるって事。そしてそこにはモンスターがいるって事よ」

 「………」


 モンスターか。それを退治するのが冒険者の仕事だもんね。


 「そ、それを退治してこいという事でしょうか?」

 「いえいえ。魔石を持って帰って来てほしいの。これいっぱいにね。もちろんそこに入れるのは、冒険者のみ。だから冒険者にならないのなら貸し出しは無理」

 「わかりました。頑張ります」

 「そう。言っておくけど、ずるはさせないわよ。一人こちらから監視をつけるわ」

 「え……」


 ずるって魔石を買って来るって事? なるほどそういう手もあったのか。いやいや、ちゃんと採りに行くさ。


 「わかりました。付けてもかまいません。でも一度帰って用意してもかまいませんか?」

 「えぇ、その間に行く者を探しておくわ」

 「ありがとうございます。感謝します」

 「では、手続きをしてしまいましょう」


 僕は、用紙に名前を書き込んだ。その後、判別オーブに手をかざす。魔法などを見るらしい。


 「魔法やスキルはないようね。でもあなた魔力持ちなのね。はい。これが冒険者カードよ。あなたは貴族であるけど、冒険者でもあるの。それを忘れないでね」

 「あ、はい……」


 チェーンがついていたので首から下げたプレートには、ルトルゼン・クレット/Fランクと表示されていた。


 「細かい規約はこれに書いてあるから、落ちついたら読んで下さい。ではお待ちしております」

 「はい。失礼します」


 僕は急いで家に戻って支度をする。鉱山跡地なら暗いかもしれないからランプ系も持って、一応軽食も。卒業の時に貰ったポーションも……。って、ちょっとワクワクしてしまっている。卒業したその日からこれらを使う事になるなんて。

 万が一の事を考え、近場でもこれらを持っていくようにと言われた。一応、実践はないけど、モンスターの事も習った。これも役に立つかもしれない。

 モンスターは、魔素が沢山ある場所に発生すると言われ、普通はそこら辺にはいない。でも峠など越える時に稀に現れる事がある。父さんの話だと、まだ遭った事はないらしいけど。居そうな場所へ近づかなければ、出会う事もない。それなのに、自ら向かう事になるとは。人生何が起こるかわからないな。

 そうだ。もう一回注いで行こう。


 「これから鉱山跡地に行きます。無事に戻って来られますように」


 魔力を注ぎながらそう言うも、そんなお願いしても仕方がないが祈らずにはいられなかった。


 冒険者ギルドに戻ると、青髪の青年フリードさんが待っていた。彼が、僕の監視役。ランクD。特別な人なのかと思ったけど、僕と一緒に行ってもいいという人が彼だけだったらしい。

 シーダーさん曰く、誰も名乗りを上げなかったらこの話はなかった事になる所だったという。彼には感謝しかない。けど、なぜだろうか。彼が僕に向ける視線は、周りの者より険しい気がするのは――。

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