第120話 ネタあかし

部屋中に響く銃声音……俺は走馬燈を思い出すように彼女たちの顔が浮かんでは消えていく。


俺は死んだ……うん?


「はいはい。そこまでだ」


「スピカ?」


「やらせない」


「ヒナタ?」


スピカがクイーンを捕まえ、ヒナタが拳銃を蹴り上げた姿勢で立っていた。

撃たれた拳銃の弾は天井へ向かって放たれている。


「どうして?」

「最初からいた」

「そうじゃな、男性の涙は尊いのぅ~」


ヒナタは淡々と、スピカはニヤニヤとして俺を見てくる。


「えっ?えっ?でも、誰も居なかったはずじゃ?」


ツキやタエを探して家の中を探したはずだ。


「隠れる場所はたくさんある」

「まぁ他の者も、モニターで見ておるよ」


そう言われて天井を見れば、隠しカメラがあるそうだ。


「みんな……いるのか?」

「おるな」

「いる」


スピカとヒナタが同時に頷く。


一気に恥ずかしさが込み上げてくる!!!


「そろそろ来てやったどうじゃ?」


スピカがカメラに向かって呼びかける。

ヒナタはその間にクイーンの意識を刈り取り暴れていた動きを黙らせる。


「兄さん。ごめんなさい」

「ヨル~大丈夫だよ。私はヨルの味方だよ」


ツキとユウナが入ってきて、すぐに謝ってくれる。


「ヨルが無事で本当によかったです」

「こんなことは二度としたくないわね」


タエが泣きそうな顔で俺を心配して、ランが髪を掻き上げながら額の汗を拭う。


「ヨル君が無事で本当によかったよ」

「ヨルが無事。よかった」


テルミはホッと息を吐き、ツユちゃんに抱きつかれる。


「そうね。これで全て解決かしら?」


最後に現われたレイカを見て、俺は固まる。


「えっ?」

「何かしら?」

「だって、レイカは俺に愛想を尽かして……」


レイカは深々と溜息を吐いて、彼女たちがレイカのために道を空ける。


俺の前にやってきたレイカが、俺の頬をつねった。


「確かに、最近のあなたは少しだけ調子に乗っていたと思うわ。そんなことで私があなたを見捨てると思うのかしら?」

「えっ?痛い……」

「いい、ヨル。マリア・クイーンに会ったあなたは催眠にかけられていたのよ」

「さいみん?」


頬をつねられて上手く話せない。


「ええ。だから、クイーンと二人会おうとするし、クイーンを優先して話を進めようとしていたの。だけど、あなたの異変に私たちはすぐに気づいた。だから一芝居うつことにしたよ」


「芝居?」


「ええ、あなたが私たちを失っても自覚を取り戻さなければ終わり。ショック療法よ」


それは今までのことを思い出す。


クイーンが現われる前と後。


レイカが、スピカを落とせと言った後からの記憶が確かに曖昧で、クイーンに会ってから彼女が気になって気になって仕方なくなっていた。


どうやって彼女と会うのか、会うために他の彼女たちが邪魔で、スピカたちにも手を出させないようにして……


「理解できたみたいね」


つねられていた頬を離される。


「あなたは世界を取りたいなんて言う人じゃないわ。【邪神様】も私たちと方を並べるために始めたのでしょ?」


レイカが困った顔をして俺を見下ろす。


「ごめん。俺、どうかしてた」

「そうね。ヨル。私は優しいあなたが好きよ。他の男性と違って女性を一人の人間として対等に接してくれる。ヒットマンをしていたヒナタを受けれたあなたも、少しおバカだけどあなたのために動くスピカも、そんなあなただから惹かれたのよ」


俺は彼女たちに向かって頭を下げた。


レイカは俺を見放してはいなかった。


ふと、倒れているクイーンへ視線を向ける。


昨日までは、クイーンとレイカを左右に並べて侍らせている自分を想像していた。


それなのに今では、クイーンへの気持ちは全て無くなっていて、彼女たちへの申し訳なさで埋め尽くされている。


レイカが言うように、これがクイーンが仕掛けた催眠なのだとしたら本当に恐ろしい状況だったんだと納得せざる終えない。


「さて、クイーンのことはこちらで処理させてもらうつもりだ」


スピカがクイーンを抱き上げる。


「スピカ?」

「裏のことは裏の者に任せるがいい。【邪神様】、後日この間の埋め合わせはしてもらうぞ」

「あっああ」

「約束じゃ!」


これまでおバカに見えていたスピカは頼もしい背中と共に部屋を去り、本当に彼女たちだけの空間になる。


「ヨル」


レイカに呼ばれて俺は直立不動の姿勢で立ち上がる。


「はい!」


「彼女の増やすことは認めます。でも、ちゃんと愛してあげられる女性で、わたしたちのことも受け入れる人しかダメよ」


レイカの言葉に俺は視線だけを向けて彼女たちを見る。


みんな少しだけ怒った顔をしていて、俺は勢いよく頭を下げる。


「ごめん。これからは気をつけて行動する!」


何度目になるかわからないけど。


俺はもう一度彼女たちに誠心誠意謝罪を口にする。


「はい。それじゃあ今からお仕置きタイムね」


レイカの言葉で俺が顔を上げると、彼女たち全員が服を脱いで裸で立っていた。


「えっ?」


「みんな、やっておしまいなさい。ヨルは私たちに奉仕しなさい!」


これがお仕置き?思ってのと違うけど……


本当によかった……


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あとがき


これにて第六章完結となります。


次の第七章で【貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう】も最終章となります。


これまで長らく読んで頂きありがとうござます。


どうぞ最後までお付き合い頂ければ幸いです。


また、新作の投稿を始めております。

面白い話が書けたと思っておりますので、どうぞ読んでみてくださいね。


【あくまで怠惰な悪役貴族】をどうぞよろしくお願いします。





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