side覇者 ー 1

【マリア・クイーン】


生まれながらにして世界の頂点に立つということは、別にそれが当たり前であれば事実として受け入れるだけだ。


友人?そんなものが必要なのだろうか?一度、同じく富める者と邂逅したことがあったが、自分の母の功績を自慢げに話していた。


なんとつまらない人間なのかと思ったことがある。

自分自身が掲げる功績がないのかと……そう思って、自分は当たり前のように何でも手に入れることが出来る。


だからこそもしも、手に入らない物があれば絶対にほしいと願うようになった。


テレビで見たオモチャ。

知らないオバサンが身に着けていた宝石。

インターネットで見た古代の遺物。


それらはお金と権力があれば手に入れることが出来てしまった。


成長するにつれて、男性が少ないことを知り。

少ない男性をどれだけ私の手元に集めらるかという遊びをしたことがある。


ただ、集めるだけ。


これはコレクションだ。


街で見かけた男性。

学園で通う子の兄。

男性の婚約者が出来たと喜んでいた見ず知らずの女性の婚約者。


私が望めばどんな男性であっても手に入れることが出来た。


だけど、男とは……つまらない生き物だ。


私の立場や権力を知ると、すぐに尻尾を振り媚びへつらってくる。


権力だけでなく。私は美貌も世界一であることを自負している。

肉体的にも美だけでなく身体能力も優れ、頭脳は飛び級で博士号を取れてしまうほどであった。


私が発明した物で、簡易受精器がある。


男性をコレクションして研究した結果。


男性から排出される精子を培養して、簡単に女性を受精させることが出来る機械だ。

今までの体外受精よりも女性へのリスクが減り妊娠確率を跳ね上げた。

亡くなった男性の精子なども細胞さえ存在してればクローン培養して、受精させることが出来るという優れものであった。


これによって男性の必要性は減り。

女性への負担を軽減できるとようになった。


優れた頭脳によって世界への貢献を果たした私は……世界をつまらないものだと思った。


もって生まれた世界一の富みと、生まれながらにして頭脳と美貌、身体能力を併せ持ち完璧な人間。


それはあまりにもつまらない……そんな折だった。


暇つぶしに見ていた日本という島国の動画。



「今回の新曲は前回とは変わって、貴様らに我の美声をゆっくりと聞かせてやろうと思う。そのため曲を聞く際はイヤホンかヘッドフォンをつけて陶酔するが良い」



イヤホン?あったからしら?


私は部屋を探してヘッドフォン見つけたので、曲が流れるのを楽しみに待った。



「それでは存分に酔いしれるがいい。ササヤキ」



画面が切り替わり、ラジオ番組のようなスタジオに彼がマイクに向かって言葉を発する。

それは……聞いてはいけないデビルの発声。


日本語に疎い私は何を言っているのかは理解できない。


だけど、セクシーなボイスが私の耳を通り抜けて脳を溶かしていく。

下腹部が疼く感覚!ホルモンを爆発させる。

あふれ出す液体に下着を濡らし、今まで味わったことのない幸福感が全身を駆け巡る。



「よう。どうだ新曲は?」



いつ終わったのかわからない。

彼が歌声から、話し声に変わって私へ問いかけている。

だけど、言葉を発することができない。



「うん?どうした下僕ども、俺の美声に聞きほれたか?」



今……何かを発してしまえば全ての余韻が失われてしまうのではないという恐怖と……この瞬間を失いたくないという喪失感が言葉を発することを躊躇わせる。



「この後は質問タイムにしようと思っていたが、どうやら俺の美声でやられちまったみたいだな。今日はここまでだ」



どうやら私と同じ状態になった者達が世界中にいるようだ。

反応がなかったため、彼はライブを終わると言う。


「じゃあ、今からもう一度PVを流すからダウンロードしてくれよな」


もう一度、同じ曲が聴ける!!!

私はヘッドフォンを取り付け、さらに大量のタオルを用意する。

PVが終わった後は、私はダウンロードを即行で購入して一晩中聞き続けた。


「行くしかないわね……日本へ」


久しぶりに私は欲しいものを見つけてしまった。


つまらない世界に輝きを……フリーダムライフはスパイスを求めて……日本へと私は来日した。


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