第97話 入団面接
いつもの部室には椅子とテーブルが並べられて、面接会場のような作りへ模様替えを行っている。
雰囲気づくりが大切だということで、四人はスーツ姿で全員が眼鏡をかけるようにした。
「これ意味あるのか?」
「雰囲気雰囲気」
ヨウヘーはノリノリで、ボディーガードをしてくれているタエなどは頬を赤くしていた。
「まぁいい。それで?何人ぐらい来たんだ?」
「えっとね。全員で20名ぐらいかな?」
「へぇ~結構来たんだな」
「newtubeとかの影響だと思うよ。それにそこから男子応援団にはそぐわないと思った人には事前に落選通知を出したけどね」
セイヤが色々と動いていたのは知っていたけど。
そんなことまでしてくれていたとは頭が下がる。
「色々ありがとな」
「どういたしまして」
セイヤと笑いながら会話をしていると、入部希望者たちが入ってきた。
「失礼します」
先頭を歩くのは小金井綺羅だった。
金髪の髪に青い目をした美しい容姿の少年。
身長こそ俺と変わらないほど高いが、容姿はまだまだ子供と言った感じだ。
「失礼」
次に入ってきたのは、黄色い髪に可愛い系の容姿。
背は低く体つきも細い。
ただ、見覚えのある顔に首を傾げる。
「しっ失礼します」
最後に入ってきた子も背が低い。
顔が見えないのが気になるが、チラリと見えた顔は綺麗な顔をしている。
「皆さん。良く来てくださいました。それでは面接を始めますので、おかけください」
セイヤの進行で、三人が用意された椅子へと腰を降ろす。
「まずは、皆さんの自己紹介と志望動機をお願いします」
セイヤの呼びかけて、小金井綺羅から立ち上がる。
「1ーA組。小金井綺羅です。志望動機は、掲示板で見て」
「おっいいねぇ~フィーリングって奴だな」
ヨウヘーのフォローに小金井が頷く。
「君は本は好きか?」
「本ですか?あまり読んだことはないですが」
「どんな本なら読んだことがある?」
「えっ?う~ん教科書ぐらいしか」
ハヤトの質問に答えた小金井に全員が驚いた顔を見せる。
「冗談?ではないのか?」
「冗談?」
ハヤトの言葉に意味がわからないとキラが不思議な顔を見せる。
「いや、すまなかった。君には私のおススメの本を提供しよう」
ハヤトの方が折れて話を終わらせる。
「小金井君ありがとう。それじゃ次の方」
セイヤの進行で、キラが腰を降ろして次の男子が立ち上がる。
「2ーB 黄島豊……です。志望動機は、妹が行ってみたらどうかと打診を受けたからだ」
敬語なのか、タメ語なのか悩むような話し方なのは、同じ二年だからだろう。
「黄島君は芸能関係を目指しているらしくて、ヨウヘーの音楽とか、ヨルの活動に興味があるらしいよ」
「へぇ~そうなのか?」
セイヤの補足に俺が黄島を見れば、たじろいだようにリアクションをする。
いちいち動きのデカい奴だと思いながら見ていると……
「そっそんなに見つめないでくれ」
「うん?うん。悪い」
俺の謝罪に黄島は顔をそらせる。
「うむ。芸能関係を目指しているってことは【邪神様】のことも知っているのか?」
「ああ、もちろんだ」
「正体も?」
ヨウヘーの質問に黄島は俺を見る。
「ああ」
「そうか……なら、合格だな」
「うん。僕も同じ意見」
ヨウヘーとセイヤの中で合格が出たなら、俺とハヤトが不合格を告げることはない。
「黄島君ありがとう。座って。それじゃ最後だね」
セイヤの声で黄島が座り、最後の一人が立ち上がる。
「桃田……ま……まさきです」
「桃田まさき?」
俺が聞き返す。
前髪で顔が見えない小柄な少年は何度も頷いた。
「1-Bです。どうき……はnewtubeを……見て」
たどたどしくはあるが、最後まで言い切った。
桃田に俺は大丈夫かとセイヤの顔を見る。
「彼は……まぁ仮入部でどうかな?無理だと思えば退部してもらえばいいし」
「なんだ?セイヤ。何かあるのか?」
ヨウヘーも何かあると思ったのかセイヤに問いかける。
「う~ん。ちょっとカオル先生からの推薦でね。面倒を見てあげてほしいと言われたんだ」
「カオルちゃんか~まぁそれなら仕方ないか~先生枠ってことだな」
カオル先生には顧問としてお世話になっているので、誰も反対するつもりはない。
「よし。三人とも合格だ。ようこそ男子応援団へ。俺は団長の黒瀬夜だ。何かわからないことがあれば何でも聞いてくれ」
俺が立ちあがって三人へ質問はないか問いかける。
そうすると三人とも手を上げた。
「うん?質問があるのか?なら、質問したい相手の名前を言って質問をしてくれ。まずは、キラ」
「はっはい」
自己紹介をした順番に当てていくことにした。
「あの。黒瀬先輩は……他の男性と違うように思います。何かしているのですか?」
「他と違う?う~ん。何が違うのかわからないが、そうだな。違いがあるとすれば筋トレだろうな」
「筋トレですか?」
「ああ。男だからまずは筋肉だろ」
俺は筋肉をアピールするポーズをとる。
何故か、桃田に顔を背けられた。
「次は黄島」
「……ああ。アイドルは好きですか?」
「うん?それは全員に聞いているのか?俺は好きだ!女性のアイドルは輝いているし、男性も目的のために努力をしていると思うかな」
「……ありがとうございます」
俺の答えに満足したのか、黄島はすぐに座ってしまう。
「じゃあ、桃田」
「はっはい……歌を歌えますか?」
「おう。応援歌を歌うぞ。それにお前たち三人には女子を応援するダンスなんかも勉強してもらうつもりだ。これでいいか?」
「はっはい!」
意外にも大きな声で返事をする桃田に俺は頷いて他にはないかと三人を見る。
「まぁ今日はこの辺にしておくか、追々質問や気になることは先輩たちに聞いてくれ。誰も嫌がることなく答えると思うから。心からお前たちが男子応援団に来てくれたことを歓迎する」
俺が締めくくると全員が立ち上がる。
「応援団の返事は【押忍】だ!いいな!」
「「「「押忍」」」」」
俺の声に七人が声を揃えて返事をする。
「よし。今日は解散!」
面談はこれにて終わりを告げて、新しい仲間が男子応援団に加わった。
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