side《邪神様》の信者 金 ー 5

《東堂麗華》




 今日は……私にとって勝負の日だ。



 卒業式……それは高校という枠組みを離れる儀式で、そして私にとって次なるステップへ進む通過点。




「ヨル~!!!」



 卒業生代表である私は、最後の思い出を大好きな人に捧げたい。




「大好きだよ~~~!!!」




 ヨルを好きな女の子はたくさんいるけど。


 負けるつもりはない。


 私は絶対にヨルの一番になってみせる。




「以上をもって卒業生代表 東堂麗華の挨拶を終えたいと思います」



 だからこそ、どんな時でも遠慮なんてしない。



 三年生たちが出て行くのを最後まで見送ってから最後に出て行く。



「ヨル君。君にはこれまでたくさん楽しませてもらった。高校卒業後はタワーに私もお世話になると思うからよろしく頼むよ」



 キヨエさんがヨルに挨拶をしているのを待ち、他の子たちも男子応援団に別れを告げている姿を見る。



 最後となった……ヨルと握手を交わす。



「ヨル。私と出会ってくれてありがとう。私を助けてくれてありがとう。

 あなたがいたからこそ私は晴れ晴れとした気持ちで青葉高校を去ることが出来るわ」




 本当にヨルにはたくさんのものを与えてもらった。


 体育祭、青葉祭、そして家の事情まで解決してもらった。


 高校最後の一年は多くの思い出に彩られている。




「それと……今晩だけは私だけの彼氏でいてね」




 私は卒業式という名目で、ヨルと彼女たちにお願いをした。



 卒業式の日だけは、ヨルと二人で過ごしたいと。



 他の彼女たちにも了承を取り、今日はヨルと二人で過ごす。




「ああ。分かっているよ。午後からは俺はレイカだけの彼氏だ」




 ヨルの言葉が嬉しくて、抱き着いてしまう。




「ありがとう。ヨル。愛しているわ!」


「ああ。俺も愛してるよ」




 二年生、一年生が卒業式の片付けをしてくれている間に、私は先生方やクラスメイトたちに挨拶をして最後の時を惜しんだ。



 そして、一度自宅に帰ってヨルを迎えに行く車に乗り込む。



 今日の衣装はキヨエさんが用意してくれた衣装で……



「本当にこれを着るの?」


「もちろんです。男性を悩殺するための衣装だと広告されていました。

 ヨル君は他の男性と違って、お嬢様の胸を好ましく思われています。

 ならば、他の子たちでは出来ない。方法でヨル君を虜にするしかありません」


「そうね。うん。わかったわ。私は私の武器を使う」



 促されるままに、服に袖を通して上からコートを羽織る。


 足元はブーツを履いて冬の対策を終えて、車へと乗り込んだ。


 今日は夜景の綺麗なスイートルームを予約している。


 専属のシェフが目の前で料理を披露してくれる。



「いくわよ」


「はっ!」



 セリーヌの運転する車に乗り、ヨルの家にお迎えに向かう。



 ヨルにはドレスアップをお願いしたので、タキシードにオールバックに髪型を整えたヨルが駐車場へ現れる。


 キヨエさんの開けた扉から入ってきたヨルは、一輪のローズを私に渡してくれる。



「改めて卒業おめでとう。レイカ」



 彼に似合った衣装や髪型にドキドキしていたのに、さらにお花のプレゼントなんてなんだかズルいわね。



「随分と、カッコイイのですね」


「そうかな?一応自分なりに考えてみたんだ」


「自分で?」



 てっきり、ツキちゃん辺りに促されたのかと思いました。



「ああ、ドレスコードってよくわからないから、セイヤに聞いて服と髪型を整えてみたんだ。変かな?」



 ヨルは不安そうに髪をいじって聞いてくる。


 他の彼女ではなく、友人に聞いたのは私への配慮だ。



「いいえ。カッコいいです」


「よかった。花はキザかなって思ったけど。プレゼント用意する時間がなくて、帰り道でみつけてこれかなって」



 高価な物ではないけれど……ヨルが私を思って選んだ姿が思い浮かべられて嬉しい。



「ありがとう。嬉しいわ」


「へへ」



 恥ずかしそうに笑うヨルが可愛い。


 話をしている間にホテルに到着してしまう。



 駐車場から直行でスイートルームへと上がれるエレベーターに乗って扉が開く。

 その階には一つだけしかない扉が私達を出迎えてくれる。



「さぁ行きましょう」



 ここからはヨルと私の二人だけ。


 セリーヌもキヨエさんも、他の彼女たちもいない。



 扉を開くと都心を一望できる景色が広がっている。



「うわ~凄いな」



 ヨルはタワーマンションに住んでいるので見慣れた景色かもしれない。


 だけど、このホテルからは特別な夜景が見えることが有名なのでこのホテルを選んだ。



 雰囲気が一番大事。



「ヨル」



 私は部屋に入ったことでコートを脱ぐ。



「えっ!」



 キヨエさんが用意してくれた服の名前は……童貞を殺すセーター



 胸元からお腹にかけてパックリと開き、さらに背中もほとんど素肌が見えている。



 隠れているのは胸元と腰元だけでほとんど素肌と言ってもいい。



「どう……かしら?」



 昔から胸が大きくて男性から嫌悪の目で見られてきた。


 それは私という存在を否定しているようで悲しくなる。



 だけど、ヨルは私の胸に対して……



「うっうん。綺麗だよ。凄い服だね」



 先ほどから興奮して、視線が胸へと注がれている。



 ああ……やっぱりヨルは、私の胸を性的な目で見てくれている。



「ヨルに私を見てほしい。印象に残りたい!」



「凄いインパクトだと思うよ!」



 ヨルは赤面して、視線を逸らしてしまう。



「ヨル、視線を逸らさないで!もっと私を見て……そして……触れて」



 私はヨルへ近づいていく。



 ヨルの手を掴んで持ち上げる。


 掌は大きく私の胸へと導く。



 大きくて醜いと思ってきた胸に、ヨルの大きな掌が埋まっていく。



「スゴッ!柔かくて、温かい」



 ヨルが私の触れている。



「んん!」



 気持ちいい。


 それだけで幸せな気持ちになる。



「好きにして」



 セーターの中へヨルの手が入ってきて、私の胸を自由に動かしていく。



 そのたびに今まで感じたことのない幸福が心に満ちていく。



「ハァハァハァハァ」



 息が荒くなる。



「来て」



 私はそのままヨルをベッドへ導く。



 清めは着替える前に済ませている。



 私達は夕食の前にヨルと共にベッドへ入った。

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