第46話 体育祭の競技決め

二学期が始まるとすぐに学園内は体育祭へ向けて雰囲気が変わり始める。


進学科、普通科、スポーツ科


それぞれが分かれて一学年に1000人ほどの生徒がいれば祭りとなれば盛大になる。


三学年を合同で行う体育祭と青葉祭は、青葉高校において二大イベントである。



「それでは1年A組が参加する種目を決めていきたいと思います」



これだけの人数が集まれば全競技に全員参加は難しくなり、各クラスから参加する競技へ希望を提出する。


また、参加人数が少ない競技は競技自体がなくなることもある。



「その前にいいかな?」



委員長をしている三森を遮るように、セイヤが立ち上がって声をあげる。



「はっはい。白金君。なんでしょうか?」


「みんなも知ってくれていると思うけど。僕等四人は男子応援団として体育祭のときには各種目の応援に行かなくてはいけないんだ。申し訳ないけど競技には参加できない」



えっ?そうなの?俺何も聞いてないんだけど。


俺はセイヤの発言に驚いてセイヤの顔を見る。


セイヤは俺に視線を向けて納得した顔で「分かってる」みたいな顔で頷いて席についた。


いやいや、俺がわかんないんだけど。



「はい。承知しています。男子応援団の皆さんは青葉高校の誇りですから、生徒会や各運動部連からも是非にと嘆願書が届いたそうです」



え~俺の知らない間に話しが進んでる。

これでも団長だよ?副団長である参謀で話がまとまり過ぎじゃない?



「はい!」


「はい。座敷さん」


「男子応援団とは?」



転校生である座敷露は、まだ男子応援団の活躍を見たことがないのか?

最近じゃセイヤのSNS発信が好評でnewtubeとかにも配信され出したのになぁ~YO!HEY!とか自主作成の音楽も結構再生数を稼いでるってユウナが言っていたな。



「ふふふ、座敷さん。それを教えることはできません。

青葉生徒として、男子応援団を知らない者はおりません。

ですから、知らないことが恥なのです」


「なっ!ぐっ卑怯!教えてくれてもいいはず?」



見た目小学生の座敷を三森がイジメているように見える。


そういうのはよくないな。



「座敷、これだ」



俺は自分のスマホを座敷に見えるように手渡す。



「ん?ありがと。これは!!!」



俺がスマホを差し出すと座敷は食い入るように見つめ出した。

いいことをしたと思って、顔を上げればクラスの女子がめっちゃガン見していた。

三森に至っては唇を噛みしめて出血している。


え~なんかすごい表情してるけど大丈夫か?



「登録した。ついでに私の番号も入れた」


「えっ?番号?」



言われて連絡先にツユちゃんと記載が増えていた。



「ツユちゃん?」


「そう。私のことはそう呼んで」


「おっおう」



俺が返事をするとクラス中から威圧のような背筋が寒くなる重圧を感じて辺りを見る。

先ほどまでこちらを見ていたクラスメイトたちは視線を正面に向けて、一番後ろにいる俺からは表情は見えない。



三森ですら、黒板の方を向いて俺にはわからなかった。



しばらく困惑しているとセイヤから声をかけられる。



「ヨル……無防備過ぎ。それと座敷さんを構うのはほどほどにね」



セイヤから忠告を受けている間も、座敷ことツユちゃんは、自分のスマホを取り出して俺たちが映し出された動画を見ていた。



水泳部

バレー部

野球部

テニス部など。



夏にゲリラ応援した運動部の動画は結構な数になっていた。



「座敷さん、倉峰さん、木築さん、最上さん、報上道子ホウジョウミチコさん、天宮樹里アマミヤジュリさん、私の七人で棒倒しに決定ですね」



いつの間に決定したのか、座敷の名が出て俺は顔を上げる。


そこには六人の女子たちが殺意を込めた目で座敷を見ているように感じられた。



「……かかってきなさい」



七人に負けることなくツユちゃんは「ふんす」と鼻息を荒く挑戦に応じると口にする。


しかし……君たち同じクラスメイトだよね?なんで互いに戦う雰囲気出しているの?



しかも、棒倒しって結構荒々しいスポーツだったような気が……小さなツユちゃんが参加して潰されないのだろうか?



「ヨル……ぐるぐる考えているみたいだけど。こういうときは口を出さない方がいいよ。女性たちには女性たちの女の戦いっていうものがあるんだよ」



先ほどに続いてセイヤから忠告されて、俺はもう自分の出番ではないのだと理解した。



それ以降は、クラスメイトたちが各々の参加種目へ参加希望を出して話し合いは滞りなく終わりを告げた。



「ヨル君……ヨル君……」



ふと、名前を呼ばれているような気がして顔を上げればツユちゃんが俺を見ていた。



「えっ?」


「ヨル君。やっと気づいた」


「あっごめん。呼んでた?」


「うん。呼んでた。ちょっとお願いがある」


「お願い?」



ツユちゃんから話しかけられて、帰ろうとしていたクラスメイトたちの足が止まる。



「どうした?」


「学校案内してほしい」


「学校案内?俺が?座敷の?」


「そう。ヨルが、ツユちゃんの」



見た目小学生、中身お嬢様?のツユちゃんからの要望を聞くべきか?セイヤをチラリと見る。



「いいんじゃない。ヨルって学校のこと知らなさすぎだし。この機会に一緒に探検してきたら?」



探検と言われてワクワクする気持ちと、セイヤに子供扱いされている気がして複雑な気分になる。



「ダメ?」



上目遣いに小首を傾げる見た目小学生女子、ハァー断れる気がしねぇ。



「いいぜ。俺も詳しくないから、一緒に探索する形になるが」


「それでいい。行こ」



いきなり手を握られて引っ張られる。

それほど力が強いわけじゃないので、強引さは感じないが俺は溜息を吐きながら彼女の手に従った。




「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」




教室から暴走モードに聞こえるような雄たけびが聞こえてきた。



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あとがき。


ツユちゃんはカエル娘ではありません。


某アニメキャラとは全くの別人です(笑)





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