第34話
「はい? 勇者、もう魔王城に着いたの?」
「はい、最速便の伝達でそのような内容のお手紙をいただきました」
「見せてもらえる?」
「はい」
ルミナスが今日も今日とて部屋でくつろいでいると、相変わらず金髪と碧眼の綺麗なキアラが一通の手紙をもって入室してきた。
彼はキアラが差し出した手紙を受け取り、開く。恐らく異世界の文字なのだろうがなぜか読めるその手紙には、このようなことが書かれていた。
『拝啓 ルミナス様へ
本日もまた魔王城は暗闇に包まれた良き天気です。
さて、ご挨拶もこのくらいに本題なのですが、助けてください。勇者が本気で殺しにかかっています。出来るだけ早くお願いします。
敬具 いつだかの
「ああ、いつだかの
「そちらに関しては相変わらずないですね。やはり、魔王様もお強き方。きっと自信がおありなのでしょう」
「それもそうね。でも、
思い出すのは、顔がない癖に喋ったり表情の変化を見せるあの
「あら? そう言えば
「ルミナス様? 大丈夫ですか?」
考え込み、小言でぶつぶつというルミナスを心配に思ったのか、キアラがルミナスの顔を覗き込むように言った。
「あっ……え、ええ、大丈夫よ。ただ、魔王城の門番は知り合いでね。魔王城内部で最初のボスであるいつだかの
「ルミナス様に心配されるようなお方……羨ましいですね。ですが、その方もお強いのでは?」
「そのはずよ。それこそ、初めて会った時にはわたくしでも殺されると思ったほどにね」
「そ、そうなんですか!?」
「あの時に感じた覇気は間違いなく本物よ」
間違いではないが、正解でもない気がする。
「で、でしたらなおさら心配なさる必要はないのでは? それほどまでにお強い方ならば安心ではないでしょうか」
「まあ、それもそうね。きっと、
ルミナスが視線をずらして窓の外を見れば、すでに夕暮れ時。
体調の悪いルミナスは早寝早起き+三食の時間をしっかりと定めて生活しているため、そろそろ夕食を食べて寝る時間だった。
「そうですね。その際はお供させていただきます」
「明日の当番は……キアラだったわね。ええ、お願いするわ」
「はい。では、キアラはこれで失礼します。すぐに今日の当番のミティムが食事をお持ちするかと思いますので、少々お待ちください」
「ええ。手紙ありがとうね」
「恐悦至極にございます」
小さくお辞儀をしてから、キアラは優雅に部屋を出て行った。
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