第4話『笑顔を見られて良かった。』
ゼリーを食べて元気が出たのもあり、あおいは俺と愛実からノートを借りて今日の授業分を写し、明日提出する課題をすることに。愛実と俺もあおいの側で、今日の授業で出た課題を終わらせることにした。
たまに、今日の授業内容や課題のことであおいから質問を受け、あおいと座っている場所が近い愛実が中心となって教えていった。
「これで、明日提出の課題も終わりました! 何度も教えていただきありがとうございました!」
ノートを写し終わり、明日提出の課題も終えたあおいはとても嬉しそうな様子でお礼を言った。
「いえいえ。あおいちゃんの力になれて良かったよ」
「そうだな。あと、愛実ほどじゃないけど、あおいに教えたことで今日の授業の復習をできたからな。こちらこそありがとう」
「いえいえ」
あおいは快活な笑顔でそう言った。授業のノート写しと課題が終わったから、あおいも授業についていけるんじゃないだろうか。
課題と今日の授業の復習が終わったので、夜にする勉強は明日の授業の予習だけでいいかな。
壁に掛かっている時計を見ると、今の時刻は午後5時40分。道本達がお見舞いに来るまでちょっと時間があるので、週末の間に放送された3人とも好きなラブコメのアニメを観ていく。
あおいはノート写しや課題をして疲れたとのことで、ベッドで横になって観ている。疲れたと言っていたし、ノート写しや課題をしている間に咳を何度かしていたけど、今は楽しそうにアニメを観ているから大丈夫そうかな。
あおいと再会してから、3人で一緒にアニメを観ることがいっぱいあるし、今日はあおいが学校を欠席した。だから、こうして3人でアニメを観ると、楽しいと同時に何だか安心できる。
キャラクターやストーリーのことについて話しながら観たので、あっという間に30分が過ぎていった。
「今週のエピソードも面白かったな」
「そうだね、リョウ君!」
「面白かったですよね! リアルタイムでも観ましたが、何度観ても面白いです」
アニメそのものが面白かったのはもちろんだけど、愛実とあおいが面白かったと言ったのもあり、満足度が凄く高い。
「あおいちゃんとも楽しくアニメを観られるくらいに体調が良くなって嬉しいよ」
「そうだな」
「お二人と一緒に観るのが楽しいですから、私も嬉しいです。あと、横になりながらアニメを観たので、これまで、体調を崩してなかなか眠れないときにアニメを観たのを思い出しました」
「そっか。俺も風邪を引いたときは、そういうことをしてたな。特に小学生の頃は」
「私もあるよ。そういうときって時間の進みが遅いし、部屋が静かだから何だか寂しくて。だから、テレビを点けて好きなアニメを流してた」
「愛実ちゃんの言うこと分かります。アニメを観ると何だか安心しますよね」
「うんっ」
「2人の言うこと分かるなぁ」
アニメを観ると気持ちが安らいで眠れたり、逆に楽しくてずっと観てしまったり。体調を崩しているけど、平日の日中からアニメを観られる特別感があっていいんだよな。
3人でアニメの話で盛り上がっていると、
――ピンポーン。
家のインターホンが鳴った。今の時刻は午後6時20分なので、きっと道本達がお見舞いに来たんじゃないだろうか。
「理沙ちゃん達でしょうか」
「きっとそうだと思う」
「今の時刻からしてそうだろうな」
愛実と俺がそう答えると、あおいはワクワクとした様子になる。学校を休んだので、海老名さん達と会えるのが楽しみなのだろう。
それから程なくして、
――コンコン。
と、部屋の扉がノックされた。
『理沙です。部活が終わったからお見舞いに来たわ』
『道本だ。お見舞いに来たぞ』
『鈴木も来たぜ!』
部屋の外から道本達のそんな声が聞こえてきた。やっぱり、来訪したのは道本達だったか。それもあってか、あおいは嬉しそうな様子に。
どうぞ、とあおいが言うと、部屋の扉が開かれ、制服姿の道本達が部屋の中に入ってきた。その際にこんばんは、と夜の挨拶を交わし、俺と愛実とあおいは道本達に「お疲れ様」と部活をしてきた労いの言葉を掛けた。
「理沙ちゃん、道本君、鈴木君、お見舞いに来てくれてありがとうございます!」
「いえいえ。あおいの顔が見たかったし」
「海老名の言う通りだな!」
「桐山とはいつも学校で話しているから、こうして顔を見られると安心できるし。それに、誰かが欠席したときはこうして部活の後にお見舞いに行くのは恒例だから」
「そうね、道本君。あおい、体調の方はどうかしら? 夕方に麻丘君から体調が良くなってきているってメッセージをもらったけど」
「普段に近いところまで治ってきました。愛実ちゃんには汗拭きとお着替えをしてもらいましたし、涼我君にはぶどうゼリーを食べさせてもらいましたから。3人でアニメも観ましたし、より元気になりました」
あおいはニッコリと笑いながら言う。
確かに、愛実と俺がここに来たときよりもあおいは元気になっているように見える。ノート写しと課題をやった後は疲れていた様子だったけど、ベッドで横になりながらアニメを観たことでその疲れが取れたように見える。
あおいの今の話を聞いてか、道本達はほっとした様子に。
「良かったわ」
「1学期の麻丘みたいに、1日で良くなって安心した」
「そうだな! じゃあ、明日は学校で会えそうだな!」
「はいっ。明日からはまた学校に行けると思います」
あおいは爽やかな笑顔でそう言った。この様子なら、あおいの言うように明日からはまた学校へ通えそうだ。
海老名さんはスクールバッグとエナメルバッグを床に置くと、ベッドまで行き、あおいのことをそっと抱きしめた。
「あおいの家だけど、今日もあおいの笑顔を見られて良かった。いつも元気なあおいが、体調を崩して欠席したのが凄く心配だったから。それに、あおいが休んだのは今回が初めてだったし。あおいは隣の席に座っているから、本当に寂しかったわ」
神妙な面持ちでそう言う海老名さん。
今日の学校でのことを思い返すと、海老名さんは寂しそうだったり、心配そうだったりしていた表情を見せることが何度もあった。隣の席に座る友達がいないのは寂しいよな。あおいはいつも元気で笑顔を見せることが多いから、海老名さんが凄く心配になる気持ちもよく分かる。
「ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした、理沙ちゃん」
あおいは静かな笑みでそう言い、両手を海老名さんの背中に回した。
「愛実と麻丘君から聞いたわ。昨日は一日ずっとバイトしたり、課題を一気に片付けたりして疲れが溜まっていたのよね。それに加えて、好きなアニメを観るために夜遅くまで起きていたって」
「は、はい。そうです」
「それじゃあ、体調を崩すのも無理ないわ。これからは気をつけるのよ。一日バイトした日の夜にアニメを観たいときは仮眠を取るとか、課題はこまめにやっておくとかするといいかもしれないわ」
「そうですね。体調を崩してしまわないように気をつけます」
申し訳なさそうな様子であおいはそう言った。ただ、海老名さんが優しく頭を撫でたので、あおいの顔には再び笑顔が戻る。
そういえば、俺がジョギングのし過ぎが原因で風邪を引いたときも、海老名さんは俺に注意してくれたっけ。その日の体力や予定に応じて、走る量を変えなきゃいけないと。ちゃんと注意して、こうすればいいんじゃないかとアドバイスしてくれる海老名さんはとても友達想いだと思う。
「私の部屋でこうして6人でいられて嬉しいです。みなさん、お見舞いに来てくれてありがとうございました!」
あおいはいつもの明るい笑顔でお礼を言った。学校ではこの6人で話したり、お昼ご飯を食べたりすることが多いからな。あおいの部屋だけど、この6人が一堂に会すことができて良かったよ。
「俺も嬉しいよ、あおい」
俺がそう言うと、あおいはニッコリと笑いかけてくれる。
俺達と同じ気持ちなのか、愛実達も笑顔で頷いていた。
それから少しの間、6人で談笑する。あおいの部屋だけど、この6人で楽しく話せて良かった。
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