第42話『あおいと愛実と理沙でお風呂-後編-』

「さあ、あおい。バスチェアに座って」


 愛実ちゃんと理沙ちゃんの体と顔が洗い終わったので、私が理沙ちゃんに髪と背中を洗ってもらう番になりました。

 理沙ちゃんの言う通り、私はバスチェアに座ります。ついさっきまで愛実ちゃんが座っていたので、愛実ちゃんの甘い残り香が感じられて。だからか、座り心地がとてもいいです。


「気持ちいい……」


 愛実ちゃんは全て洗い終わったので、一足先に湯船に浸かっています。お湯が気持ちいいのか、愛実ちゃんはとてもまったりとした表情に。ゴールデンウィークでも、涼我君の家の湯船に浸かったとき、愛実ちゃんは気持ち良さそうにしていましたね。愛実ちゃんと理沙ちゃんと一緒に入るのが楽しみです!


「あおい。髪を洗い始めるわよ」


 鏡越しに私を見ながら、理沙ちゃんはそう言ってくれます。そんな理沙ちゃんは優しい笑顔になっていて。


「お願いします。シャンプーは私が持ってきたこのリンスインシャンプーでお願いします」

「分かったわ。シャワーで髪を濡らすから目を瞑って」

「はいっ」


 私が目を瞑ると、程なくして頭にシャワーのお湯がかかります。お湯の温度がちょうど良くて気持ちいいです。バイトの疲れもありますから、眠気も誘ってきて。

 髪を濡らすのが終わると、理沙ちゃんに髪を洗ってもらい始めます。理沙ちゃんの優しい手つきと、愛用しているシャンプーの甘い香りに気持ちが癒やされます。さらに眠気に誘われますが、眠ってしまわないように気をつけないと。


「あおい。洗う強さはこのくらいでいいかしら?」

「いいですよ。凄く気持ちいいですっ」

「良かった」


 そっと目を開けると、鏡越しに理沙ちゃんと目が合って。その瞬間、理沙ちゃんはニコッと笑いました。可愛いです。


「かゆいところはない?」

「特にありません」

「分かったわ。……この匂い……普段、あおいの髪から香ってくる匂いだわ。甘くて結構好きなのよね」

「私も好きだよ」

「いい匂いよね」

「うん」


 鏡には笑顔で頷き合う理沙ちゃんと愛実ちゃんが映ります。髪の匂いが好きだと言われると嬉しいのと同時に、ちょっとドキッとしますね。

 涼我君は私の髪の匂い……どう思っているでしょうか。汗の匂いはいいと言ってくれましたが。髪の匂いもいいと思ってもらえていたら嬉しいですね。


「ありがとうございます。理沙ちゃんも髪を洗うのが上手ですね」

「ありがとう。愛実を含め、友達とお泊まりするときは一緒にお風呂に入って、髪を洗いっこすることが多いからかしら」

「上手だから、理沙ちゃんもお泊まりしたときは、理沙ちゃんと一緒にお風呂に入ることが多いよ」

「そうなんですね。私も理沙ちゃんの髪洗いを体験できて嬉しいです」

「ふふっ。私もあおいの綺麗な黒髪を洗えて嬉しいわ」


 髪を褒められると嬉しいですね。自然と頬が緩んでいくのが分かりました。

 それからも、私は理沙ちゃんに髪を洗ってもらいます。本当に気持ちいいです。理沙ちゃんと一緒に泊まると、愛実ちゃんが理沙ちゃんとお風呂に入るのも納得ですね。


「あおい。泡を落とすから目を瞑って」

「はーい」


 あおいちゃんの言う通りに目を瞑ると、程なくしてシャワーのお湯が頭にかかります。

 泡を洗い流し終わった後は、持参したフェイスタオルで理沙ちゃんに拭いてもらいました。拭いているときの手つきも優しくて。何だか、理沙ちゃんがお姉さんのように思えてきます。


「はい。拭き終わったわ」

「ありがとうございます」


 洗い終わった髪をお団子の形に纏めていきます。そんな私を見てか、愛実ちゃんと理沙ちゃんは「おおっ」と声を漏らします。


「鮮やかな手つきね」

「そうだよね。纏める姿を見るのは2回目だけど声出ちゃった」

「あたしも」


 ふふっ……と愛実ちゃんと理沙ちゃんの笑い声がユニゾンになって浴室の中に響き渡りました。その声は聴き心地のいいもので。

 髪が洗い終わったので次は背中を洗ってもらうことに。

 私は持参したボディータオルを濡らして、この浴室にあるピーチの香りがするボディーソープを泡立てます。いつもはローズの香りのボディーソープを使っているので、使い慣れているボディータオルからピーチの甘い香りがすると不思議な感じです。


「はい、理沙ちゃん。背中をお願いします」

「分かったわ」


 私は理沙ちゃんにボディータオルを渡して前を向きます。

 それからすぐに、背中にはボディータオルの柔らかな感触が。理沙ちゃんに背中を洗ってもらい始めます。髪のときと同じく、優しい手つきで気持ちいいです。


「あおい、どうかしら?」

「とても気持ちいいです。髪だけじゃなくて、背中を洗うのも上手ですね」

「ありがとう」

「……あおいの背中、白くてとても綺麗よね。スベスベしているし。この柔らかいボディータオルを使っているからかしら」

「あっ、私も前にお泊まりしたときに思った」


 愛実ちゃんも反応したので鏡を見ると、愛実ちゃんと理沙ちゃんが頷き合っているのが見えました。


「小さい頃からボディータオルは柔らかめのものを使っていますね。今使っているそのボディータオルに出会ってからは、ずっとこのシリーズを使っています」

「そうなのね。肌触りいいし、あたしもこれを使ってみようかしら」

「あとで教えますね」

「ありがとう」


 何年も使っているボディータオルを使ってみようかなと言われると嬉しいですね。

 その後も、理沙ちゃんに背中を洗ってもらいます。腰も洗ってくれていますね。本当に気持ちいいです。これを今までに何度も経験している愛実ちゃんが羨ましくなるほどです。


「あおい。背中と腰を洗い終わったわ」

「ありがとうございます。あとは自分で洗いますね」

「分かったわ。じゃあ、あたしもお先に湯船に入っているわ」

「分かりました」


 理沙ちゃんは私にボディータオルを返すと、両手を洗って、愛実ちゃんのいる湯船に入っていきました。愛実ちゃんと向かい合う形で肩まで浸かります。


「あぁっ……気持ちいい」

「それは良かった」

「夏でもお風呂は気持ちいいわね。あと、これならあおいも入れそう」

「入れそうだよね」

「そうですか。……急いで体と顔を洗いましょう」


 2人の待っている湯船に入りたいですから。私もお風呂大好きですし。

 肌が傷まない程度に、普段よりも手早く体の前面と顔を洗いました。そんな私の姿が面白いのか、愛実ちゃんと理沙ちゃんは声に出して笑っていました。


「よし、これでOKですね。じゃあ、私も入りますね」

「うんっ、どうぞ」

「じゃあ、愛実とあたしの間に入って」


 理沙ちゃんがそう言うと、理沙ちゃんと愛実ちゃんは浴室の端に寄って私が入るスペースを作ってくれます。この広さからして、私も入れそうな気がします。

 2人の作ったスペースに足を踏み入れ、浴室の扉の方を向いてゆっくりと湯船に腰を下ろします。その際、2人の脚に当たってしまいますが、特に苦戦することはありませんでした。


「入れましたね!」

「そうだね!」

「ちょっと感動したわ」


 愛実ちゃんと理沙ちゃんは私の方を向きながら嬉しそうに言ってくれます。愛実ちゃんの部屋で、3人一緒に入れるのかどうか話題になったので、実際に入れると分かって胸が熱くなります!

 愛実ちゃんと理沙ちゃんも入っているのもあると思いますが、お湯が肩まで浸かっています。お湯の温もりがとても気持ち良くて癒やされますね。


「とても気持ちいいですっ! バイトの疲れが取れますね」

「あおいちゃんも気持ち良くなってくれて嬉しいよ」

「そうね。このお風呂には何度も入ったことがあるから、あたしも嬉しいわ」

「ふふっ。あと、お二人の脚からも温もりが感じられるのも気持ちいいですよ。私は特に狭さは感じませんが、お二人はどうですか?」

「大丈夫だよ」

「あたしも。あと、あおいのお尻や太ももの感触がいいわ」

「ふふっ、そうですか。狭く感じていなくて良かったです」


 2人もこのお風呂で一緒に気持ち良くなれますから。


「3人でお泊まりしますから、3人一緒に湯船に入れたらいいなって思っていたんです。それが実現できてとても嬉しいです! 今年の夏の思い出がまた一つ増えました」

「あおいちゃんがそう言ってくれて嬉しいよ。このお風呂で友達と3人一緒に入るのは小学生以来だからね。久しぶりにできて嬉しいな」

「脚を伸ばして入るお風呂もいいけど、友達と一緒に体が触れながら入るお風呂もいいわね」

「そうですか。嬉しいですっ」


 2人にとっても、この時間が思い出になってもらえると嬉しいですね。

 その後は、これまでのお泊まりエピソードや、昨日行ったコアマのことなどで話が盛り上がって。この3人での初めての入浴はとても楽しい時間になったのでした。

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