第26話『あおいと愛実でお風呂-後編-』
あおいちゃんの髪と体、顔を洗い終えたので、今度は私がバスチェアに座る番に。あおいちゃんに髪と背中を洗ってもらうのは初めてだから楽しみだな。
鏡越しであおいちゃんと目が合う。その瞬間、あおいちゃんは持ち前の明るい笑顔を私に向けてくれる。
「愛実ちゃん。髪と背中、どちらから洗いましょうか?」
「まずは髪からお願いします。シャンプーは……持ってきたこのリンスインシャンプーで」
「分かりました。では、シャワーで髪を濡らしていきますね。目を瞑ってください」
「はーい」
あおいちゃんの言う通りに私は目を瞑る。
目を瞑った直後、シャワーの温かいお湯がかかる。お湯の温度がちょうどいいから眠気を感じてきて。このまま眠っちゃわないように気をつけないと。
「愛実ちゃんの茶髪……とても綺麗ですね。これって地毛ですよね」
「うん、そうだよ」
「ですよね。……京都の高校に髪を黒から茶色に染めた友達がいまして。その子の茶髪も綺麗でしたけど、愛実ちゃんの方がより綺麗だと思いまして。艶やかさもありますし」
「そうなんだ。嬉しいな。……でも、あおいちゃんの言うこと分かるかも。リョウ君よりも綺麗な金髪の人って見たことないなって。理沙ちゃんがいい勝負かも。リョウ君も理沙ちゃんも金髪が地毛だからなのかもしれないね」
「私も涼我君や理沙ちゃんよりも綺麗な金髪の人は全然見たことないですね」
「そっか」
ふふっ、と私達の笑い声が浴室の中に響き渡る。共通の幼馴染だから、リョウ君絡みの話題になると盛り上がるし、楽しいな。
それから程なくして、あおいちゃんは私が持参したシャンプーを使って髪を洗い始めてくれる。優しい手つきだからとても気持ちがいい。また眠くなってきた。
あおいちゃんの髪が綺麗な理由は、この優しい手つきで洗っているからかもしれない。
「愛実ちゃん。どうですか?」
「凄く気持ちいいよ」
「良かったです。かゆいところはありませんか?」
「特にないよー」
「了解ですっ。では、こんな感じで洗っていきますね」
鏡越しであおいちゃんの姿を見ると、あおいちゃんは落ち着いた笑みを浮かべている。髪を洗ってもらっているし、髪型も普段とは違うお団子ヘアーだから、あおいちゃんが大人っぽく見える。
「あおいちゃんも髪を洗うのがとても上手だね。あおいちゃんもお母さんやお泊まりしたお友達の髪を洗って? あとは、リョウ君もか」
「そうですね。小さい頃はお母さんや涼我君の髪や背中を洗いました。小学生以降も、友達とお泊まりしたときには、こうして友達の髪を洗うことは何度もありましたね。背中も洗いました」
「そうだったんだね」
上手なのも納得だな。
あおいちゃんはリョウ君の髪と背中を洗ったことがあるんだ。羨ましいなぁ。私はお見舞いのときにリョウ君の体を拭いたことくらいだもん。一緒にいる時期の違いもあって、10年間一緒にいる私が未経験で、幼稚園の頃に1年間一緒にいたあおいちゃんが経験していることはまだまだありそう。
あと、友達とお泊まりをして一緒にお風呂に入ったら、髪や背中を洗う子って多いのかな。それとも、私達が珍しいのか。男女差とかもあるかもしれない。
「愛実ちゃん。泡を洗い流しますので、目をしっかり瞑ってください」
「はーい」
あおいちゃんの言う通りに、私は両目をしっかりと瞑る。その直後にシャワーのお湯がかかり始めた。
泡を洗い流すときのあおいちゃんの手つきや、タオルで髪を拭くのも優しくて。これからも、あおいちゃんと一緒にお風呂に入るときは毎回頼んじゃおうかな。そう思えるくらいに気持ち良かった。
「これで髪の方は終わりですね」
「ありがとう、あおいちゃん。とても気持ち良かったよ」
「いえいえ。綺麗な茶髪を洗えて幸せでした」
「ふふっ。髪を纏めるからちょっと待っててね」
私はいつもと同じやり方で洗った髪をお団子に纏めて、持ってきたヘアグリップで止めた。
「髪をお団子に纏めた愛実ちゃんも可愛いですね。ラーメンを食べる際にポニーテールにしていたときも思いましたが、うなじが見えて大人っぽいです」
「ふふっ、ありがとう。次は背中だね」
私は持ってきたボディータオルを濡らし、シトラスの香りがするボディーソープを泡立てていく。馴染みのあるボディータオルからいつもと違う香りがすると、お泊まりに来たんだなって実感する。
「はい、あおいちゃん」
「分かりました」
あおいちゃんにボディータオルを渡し、彼女に背中を洗ってもらい始める。
あおいちゃん……背中を洗う手つきも優しいな。丁寧さが伝わってきて。あおいちゃんの肌が綺麗なのは、普段からこういう洗い方をしているからなのかも。
「愛実ちゃん。洗い方はどうですか?」
「優しくてとても気持ちいいよ。自分で洗うよりも気持ちいいかも」
「ふふっ、褒めてもらえて嬉しいです。愛実ちゃんの肌はとても綺麗ですから丁寧に洗おうと心がけていまして」
「あおいちゃんに肌のことで褒めてもらえて嬉しいな。あおいちゃんは肌がとても綺麗だし」
「ありがとうございます。この力加減で背中と腰も洗っていきますね」
「はーい」
それからも、あおいちゃんに背中を洗ってもらう。
背中……本当に気持ちいいな。これも、麻美さんやお友達の背中を洗ったことで培った技術なんだろうなぁ。
洗いやすくするためか、あおいちゃんの手が背中に触れる。それがちょっとくすぐったくて。
そういえば、友達の中には髪や背中を洗っているときに、背中を指でなぞったり、胸や脇腹に指をツンツンしたりしてくる子がいたな。不意打ちだったから、変な声を上げちゃうときもあって。浴室だからその声が響いて。ちょっと恥ずかしかったな。
「どうしました? 顔がちょっと赤くなっていますが」
「前に友達と入ったときのことを思い出して。髪や体を洗ってもらっているとき、背中や胸や脇腹にいたずらされて、変な声出ちゃったなって」
「ふふっ、なるほどです。私もそんなことがありましたね。そういう友達と一緒に入ると、ちょっと緊張しますよね」
「だよね。……ち、ちなみにリョウ君ってそこら辺はどうだったの? 幼稚園の頃だけど」
昔のことでも、リョウ君のことを知りたい。
「涼我君はそういうことはしない子でしたね。むしろ、私が涼我君にいたずらして、お母さんに怒られることがありました」
「そうだったんだ」
やっぱり、リョウ君はそういういたずらはしない子だったんだね。
あと……あおいちゃんって、リョウ君にいたずらしていたんだ。小さい頃の話だし、今は違うかもしれないけど、今の話を聞いて体がこわばってしまう。
「ま、愛実ちゃん! 安心してください! 今はそういったいたずらはしませんから」
あおいちゃんは苦笑いでそう言ってくる。
「……しないでね」
「もちろんです。……続けますね」
それからも、あおいちゃんに背中や腰を洗ってもらう。
シトラスの香りがするボディーソープで体を洗っているから、何だか……リョウ君に洗ってもらっている感じがしてきた。そう思うと結構ドキドキしてきて。
「愛実ちゃん、大丈夫ですか? 顔が赤いですが……」
「ううん、大丈夫だよ」
また、あおいちゃんに分かってしまうほどに、顔が赤くなってしまったみたいだ。鏡に映る自分の顔を見ると、頬中心に赤くなっているのが分かった。
あおいちゃんが特に私の体にいたずらしてくることはなかった。
「愛実ちゃん。ボディータオルを返しますね」
「ありがとう」
「じゃあ、私は……湯船に浸かっていましょうかね。体も洗い終わりましたし」
「いいよ」
私がそう言うと、あおいちゃんは「はいっ」と元気に返事する。
あおいちゃんは両手を洗って、一人で湯船に浸かった。その際、彼女は「あぁっ……」と可愛らしい声を上げた。
「気持ちいいですぅ……」
甘い声色でそう言うと、あおいちゃんはまったりした表情に。胸元のあたりまでお湯に浸かって気持ちいいのだろう。そんなあおいちゃんを見たら、早くお風呂に入りたくなってきた。
あおいちゃんと談笑しながら、体の前面と顔を洗っていった。
「……よし、これで大丈夫かな。あおいちゃん、私もお風呂に入るね」
「どうぞ~」
あおいちゃんはそう言うと、脚を折り曲げて私の入るスペースを作ってくれる。
私は湯船の中に入り、あおいちゃんと向かい合う形で浸かった。あおいちゃんも一緒だからか、肩付近までお湯に浸かる形に。
まさか、誰かと一緒にリョウ君の家のお風呂に入る日がまた来るとは思わなかった。しかも、その人がリョウ君のもう一人の幼馴染のあおいちゃんだなんて。
あと、湯船の広さは少し余裕があるくらい。昔のお泊まりで智子さんと一緒に入ったことがあるけど、あのときはもっと湯船が広く感じた。一緒に入っている人は違うけど、私の体も成長したんだって思える。
「お湯が温かくて気持ちいいね」
「気持ちいいですよね。お昼は温かい日が多いですが、夜は肌寒く感じる日はまだまだ多いですからね」
「そうだね。この温かさが気持ち良く感じられる日はしばらく続きそう」
「ですね」
あぁ……と、あおいちゃんと声が重なる。それが何だか面白くて、あおいちゃんと笑い合った。
出会ったときから思っていたけど、あおいちゃんの笑顔って可愛いだけじゃなくて綺麗さも感じられる。それに、今はデコルテあたりまでお湯に浸かっていて、髪型もお団子ヘアー。湯船に浸かっているからか頬も普段より赤くて。だから、今のあおいちゃんは今までで一番と言っていいほどの艶やかさを感じられる。
「涼我君の家のお風呂にまた入れる日が来るなんて。しかも、涼我君の幼馴染の愛実ちゃんと一緒に入る日が来るとは思いませんでした」
「私も同じことを思ったよ」
「ふふっ、そうですか。お互いに涼我君の家にお泊まりしたことがありますもんね」
「そうだね。あおいちゃんと一緒にリョウ君の家でお泊まりできて、こうして一緒にお風呂に入れて嬉しいよ」
「私もです!」
あおいちゃんの笑顔が嬉しそうなものに変わった。今の笑顔は可愛い方が強いかな。
きっと、これからもあおいちゃんとはたくさんお泊まりして、一緒にお風呂に入るんだろうなぁ。そんなことを思いながらあおいちゃんを見ていると、あおいちゃんの視線がさっきよりも下がっているように見える。……この角度からして。
「どうしたのかな、あおいちゃん。視線が下がっているけど」
「……綺麗で大きな胸だなと改めて思いまして」
やっぱり、胸を見ていたんだ。服を脱ぐときも私の胸を見ていたもんね。あおいちゃんらしい。
「あの……もし嫌でなければ、胸をちょっと触ってもいいですか?」
「……あおいちゃんならいいよ。もちろん、優しく触ってね」
「ありがとうございますっ」
そうお礼を言うあおいちゃんが、さっきよりも嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。
あおいちゃんが触りやすいように、私は膝立ちの体勢となる。
あおいちゃんも膝立ちの体勢となった。こうして見てみると、あおいちゃんもなかなかの大きさの胸の持ち主だと思うんだけどな。あと、正面から見ると、くびれがとてもはっきりしていると分かる。凄い。
「では、失礼します」
あおいちゃんは両手をゆっくりと伸ばして、私の両胸にそっと触れた。誰かに直接触られることなんて全然ないから、触れた瞬間に体がピクッと震えてしまった。
おおっ、と感嘆の声を漏らしながら、あおいちゃんは私の胸をじっと見つめている。両手が触れているのもあってちょっと恥ずかしい。
「とても柔らかい触り心地ですね。大きいですし、形も綺麗ですし、いい匂いもしますし。友達の中でも最高の胸です」
「ふふっ、ありがとう」
「素晴らしい胸の持ち主ですし……愛実ちゃんのことを
「それは止めてっ。恥ずかしいから」
目を輝かせて胸を褒めてくれるのは嬉しいけど、乳神って呼ばれるのは恥ずかしい。せいぜい、心の中だけにしてほしい。私の胸を崇めてもいいから。
「愛実ちゃんがそう言うなら言わないでおきましょう」
「うん。言わないようにね」
春休みに教えた私の胸のサイズも言いふらさないでくれているし、きっと大丈夫だと思う。
「……それにしても、どのようにすれば愛実ちゃんのように胸が大きくなるのでしょうか? コツでもあるんですか? 母親の真衣さんも大きいですから遺伝でしょうか?」
「バストアップ目的で何かしたことはないから詳しくは分からないけど……遺伝の影響はそこまで大きくなくて、生活習慣によるものが一番大きいって聞いたことがあるよ。あと、よく寝たり、鶏肉や大豆を使った料理を食べたりするといいって」
「なるほどです。覚えておきましょう」
あおいちゃんは嬉しそうにそう言った。
遺伝の影響はそこまでなないとは言ったけど、母親の麻美さんは胸が大きいし、あおいちゃんの胸が大きくなるポテンシャルはあると思う。
あと、お泊まりや修学旅行で友達と一緒にお風呂に入ると、今のあおいちゃんみたいに、胸を触ってきたり、胸が大きくなるコツを訊いてきたりしたことが何度もあったな。顔を埋めてくる子もいたっけ。
「愛実ちゃん、ありがとうございました。幸せな触り心地でした」
「いえいえ。……私もあおいちゃんの脇腹を触ってもいい? くびれが凄いし」
「いいですよ。ただ、脇腹はちょっと弱いので、優しく触ってもらえると嬉しいです」
「分かった」
両手を伸ばして、あおいちゃんの両脇腹にそっと触れる。いい触り心地。
弱いと言っていただけあって、私が触れた瞬間にあおいちゃんは体をピクつかせて「んっ」と可愛らしい声を漏らした。顔を見上げると、あおいちゃんは頬をほんのりと赤くしてはにかんでいて。可愛いな。
「触られると分かっていても、実際に手が触れるとくすぐったいですね」
「ふふっ、漏れた声が可愛かったよ。……肌はスベスベで、筋肉の固さも感じるね。中学時代はずっとテニスをしていたからかな」
「それはあるでしょうね。あと、高1のときはファミレスのバイトをしていたので、それが運動になったのかもしれません。あとはストレッチを習慣にしていて」
「そうなんだ。凄いなぁ。私は油断しているとすぐにお腹がぷにっとなっちゃって。そうならないように、私もストレッチしているんだけどね」
「そうなんですか。もしよければ、お風呂を上がったら、私がいつもやっているストレッチメニューを教えましょうか?」
「お願いしますっ」
スタイルのいいあおいちゃんのやっているストレッチなら、今までよりもお腹がぷにっとしてしまうことが減るかもしれない。
再び肩のあたりまで湯船に浸かり、リョウ君との思い出話を中心にあおいちゃんと談笑する。あおいちゃんとの初めての入浴はとても楽しい時間になったのであった。
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