第10話 柴咲さんの家にお見舞いに行こう

 


 先日、俺は同僚の柴咲さんからココアをぶっかけられた。

 原因は俺の言動にあったので、彼女を責める気はない。

 同僚の間でセクハラ疑惑をかけられたもしたが、柴咲さんが弁明したことで事なきを得ている。


 汚れたYシャツとインナーについては彼女が洗濯を買って出たのだが、残念ながら汚れは落ちなかったらしい。

 柴咲さんからは平謝りされ、クリーニングに出すからもう少し時間をくれと言われたが、安物にそこまでするつもりもなかったので処分することにした。

 処分は彼女の方でしてくれるということで任せたのだが――



「……この映像はどうやって?」


「ドローンで撮影しました」



 最近の忍者はドローンも使うらしい。

 普通に盗撮だと思うのだが、忍者にそれを言っても不毛な気がする。



 映像の柴咲さんは、俺のYシャツをクンカクンカしながらベッドでゴロゴロしている。

 こんな映像が撮られてると知ったら悶死モノだろう。



「主様は、この映像を見てどう思いますか?」


「どう、とは?」


「詩緒ちゃんのことを軽蔑しますか?」



 軽蔑……? 確かに少し変態的ではあるが、別に軽蔑したりはしない。

 むしろ、同僚の可愛い女性社員が俺の臭いで悶えていると思うと……



「興奮するな」


「……主様も、変態の素養がありますね」



 いや、これは俺に限った話ではない。

 男は大体変態なのである。



「でも安心しました。主様が、詩緒ちゃんのこと嫌いにならなくて」


「ん、どうして俺が柴咲さんのことを嫌わなくて安心するんだ?」


「だって、詩緒ちゃんとは友達ですから。友達には幸せになって欲しいじゃないですか」



 俺が柴咲さんを嫌わないことで、彼女が幸せになる……?



「あ、その反応、もしかして、詩緒ちゃんがこんなにしゅきしゅきオーラ出してるのに、まだ気持ちに気づいていないんですか?」


「いや、彼女が好きなのは俺自身ではなく、俺のに……」



 おいが好きと言おうとして、ギリギリで踏みとどまる。

 いくら友人とはいえ、流石に性癖を暴露されたくはないだろう。

 しかし、実際は彼女の言ってることが正しく、俺が間違っている可能性も否定はできない。

 俺の恋愛経験は皆無に等しいからだ。

 これは、柴咲さんに直接確認した方が良いかもしれない。



「……そういえば、今日柴咲さんは?」


「お休みです。昨日、あんな恰好のままで寝ちゃったので、風邪でもひいたんだと思います」


「それは心配だな」


「じゃあ、今日お見舞いに行きますか?」



 見舞いか……

 それもアリかもしれない。

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