異世界でいろいろ経験したら、現実世界で美少女にモテまくるんじゃね?

白金豪

第1章

第1話 転機


 岡西中学校のある休み時間。


「おらっ」


「ぐっ」


 中森潤一(なかもり じゅんいち)はクラスの陽キャである今田俊輔(いまだ しゅんすけ)にトイレで暴力を振るわれていた。


 この暴力はここ最近はじまったものではなく、90日以上前から行われていた。


 暴力は多種多様であり、肩パンや腹パン、蹴りなどを毎日、潤一は受けていた。


 潤一は抵抗せずにただ顔を歪めるだけだった。


 やり返したら何をされるか分かったものではない、無抵抗でただただ今田からの攻撃を受け続けていた。


「あー。ちょっと休憩」


 今田は痛そうに腹を抑える潤一を見下しながら、トイレの壁にもたれ掛かった。


「それにしても気持ちいいわ。お前ほど人間サンドバックになれる奴はいないんじゃないか」


 はははっと汚い笑みと笑い声を上げる今田。


 潤一は腹の痛みから返答することができなかった。


 今田の蹴りが潤一のみぞおちを直撃したのだ。


「ちょっと気になったことがあるんだけどよぉ。お前って好きな人いんの?」


 今田は苦しむ潤一の肩を上靴で軽くつついた。


 しかし、潤一からの反応は無かった。


 未だに腹の痛みが引かなかった。


「おい!無視すんな!コラ!!聞こえてんだろ!」


 今田は声を荒げながら、潤一の肩を踏みつけた。


「ううっ!?」


 潤一の肩に言葉にできない鈍い激痛が生まれた。


 今田は追い打ちを掛けるように、ぐりぐりと上靴で潤一の肩を擦ってきた。


「・・・丸井さん。丸井三波さんだよ」


 潤一は苦しい状況ながらも、何とか言葉を紡いだ。


 これ以上、激痛に襲われることだけは避けなければならなかった。


「ほぉ。丸井三波ねー」


 今田は足を潤一の肩から離し、トイレの床に付けた。


 丸井三波は、潤一と今田が通う岡西中学校の女子生徒であり、学年でもかわいいため人気があった。


「そうか。わかった。今日はもう冷めたわ。こんぐらいでいいや。ご苦労さん」


 今田は床に正座した状態の潤一を見向きもせず、トイレをご機嫌な様子で退出した。


 その2日後、今田俊輔と丸井三波が付き合ったことが学年中に広まった。


 今田が自分から告白し、三波がオッケーを出し、交際が始まったらしい。


 潤一はその事実を知り、強いショックを受けてしまった。 


 その結果、潤一は不登校になってしまった。


 母親に学校に行くように説得されても決して気持ちは前に進まなかった。


 そして、不登校になって1週間が経ったある日、潤一が目を醒ますと、そこには現実世界とは全く異なる漫画や小説で登場する異世界の光景が彼の視界に拡がっていた。

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