第134話 ストーンゴーレム戦

「【ロックバレット】!」

「【ウィンドスラッシュ】!」

「【フレイムランス】!」

「【アイシクルランス】!」


 俺、風音さん、弓月、アリアさんが放った四色の攻撃魔法が、巨大石像へと一斉に突き刺さる。


 だがそいつ──ストーンゴーレムは、そのダメージをなんら気にした風もなく突進してきた。


 俺は盾と【ファイアウェポン】の炎をまとった槍を構え、ストーンゴーレムに向かって駆け出す。


 風音さんもまた、炎を宿した二振りの短剣を携え、巨大モンスターに向かって疾風のように駆けていく。


 弓月とアリアさんは、後方から魔法による支援だ。


 アリアさんが使える水属性魔法は、土属性と同等以上に治癒魔法に長けた属性なので、今回は回復役を任せることにした。


 その分だけ、俺がアタッカーとしての実力を発揮できる。


「弓月! 残りHPは!」


「544/750っす! がっつり削れてるっすよ!」


「よし! 弓月は【フレイムランス】をバンバンぶち込んでくれ!」


「了解っす!」


 相当に硬いかと思ったが、初手の魔法攻撃でそれだけ削れたなら上出来だ。

 これなら案外、楽に倒せるかも──


「──大地くん、来るよ!」


 風音さんの声。


 目前に迫った巨大な動く石像が、手にしたハルバード状の武器を、俺に向かって振り下ろしてくる。


 その両腕と武器には、スキルの輝きが宿っていた。

 特殊能力にあった『二段斬り』だろう。


 ストーンゴーレムの動きは、一見は鈍重そうに見えるが、ボスだけあってガーゴイルなどと比べれば格段に速い。


 こっちも【クイックネス】の効果は受けているが、余裕で回避できるような攻撃ではない。


「ぐっ……!」


 巨大ハルバードの刃で袈裟斬りに斬られたかと思うと、直後には、切り返した刃で二度目の斬撃を叩き込まれていた。

 俺の【三連衝】と似たような、半ば自動的な連続攻撃。


 その攻撃は俺のアイアンシールドの防御をあっさりとぶち破り、さらに鎧や【プロテクション】の防護をも突破してダメージを与えた。


 だがいくつもの防護が重なっただけあって、重傷ではない。


 対して『二段斬り』を放った直後のストーンゴーレムには、わずかな隙ができていた。

 俺はその隙をついて踏み込み、攻撃を仕掛ける。


「お返しだ、【三連衝】!」

「やぁああああっ!」


 風音さんもまた、同時に斬りかかっていた。

 どうやらすでに一度攻撃を入れているようで、これが二手目のようだ。


 炎をまとった三本の武器による、合計五発の攻撃が一瞬にして叩き込まれる。


 ガガガッと、ストーンゴーレムの体に、溶岩のごとく溶かされたような打撃痕ができた。


「──おっと!」


 攻撃後の風音さんが、横っ飛びに回避行動。


 直後、ストーンゴーレムの巨大ハルバードが、風音さんが元いた場所に振り下ろされる。

 スキルの輝きを宿した二段攻撃は、見事に空を切っていた。


「ダイチさん、回復しますわ! 【ハイドロヒール】!」

「残りHP268っす! 【フレイムランス】!」


 アリアさんの上級治癒魔法が俺の体に降り注ぎ、俺の負傷を完治させた。

 一方では弓月の攻撃魔法がストーンゴーレムに再度直撃し、ダメージを与える。


「残り156! ──先輩、風音さん!」


「よし──【三連衝】!」

「こっちも、お返し!」


 俺と風音さんの、さらなる物理攻撃ラッシュ。

 その結果──


 ストーンゴーレムの巨体が、ざぁっと黒い靄となって消滅。

 かなり大きめの魔石が地面に落下した。


 どうやら撃破に成功したようだ。


 メチャクチャ硬いかと思ったけど、実際に戦ってみたらそうでもなかったな。

 うちのパーティの火力、相当に高いのかもしれない。


 戦闘風景も、かなりの安定感だったように思う。

 アリアさんというもう一人の回復役がいると、俺の立ち回りが楽になるな。


「あ、レベル上がったみたい」


 風音さんがぽつりとつぶやく。

 どうやらトドメの一撃は、風音さんが持っていった判定のようだ。


 ところで──

 その声が、ちょっと大きかったのだ。


「うん……? レベルが上がった、ですの……?」


「「「あっ」」」


 風音さんのつぶやきが、アリアさんに聞こえてしまっていた。


 ……どうしようか。

 俺たちが限界突破中の身であることがバレてしまう。


 実は風音さんは24レベルでした、とかでもいいんだけど、わざわざ嘘をつくのもなぁ。

 面倒くさいから、正直に話してしまってもいい気がしてきたな。


 一方では、ストーンゴーレムを倒したことにより、ボス部屋の奥の扉がゴゴゴゴッと音をたてて開いていく。


「えっと……とりあえず、出ましょうか」


「え、ええ。そうですわね」


 ひとまず誤魔化して、この場を発つことにした。


 なお、ボス部屋の扉の先には小部屋があり、その床には転移魔法陣が描かれていた。


 四人で転移魔法陣に乗ると、いつものように真っ白な光と浮遊感に襲われ──

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