彼女の誕生日 (NTR注意)
今日は待ちに待った真衣の誕生日。朝から俺はそわそわしていて落ち着けない。一応プレゼントは真衣の家で渡すことに決めたのだが、どのタイミングで渡すのがいいのかまだ決めきれていない。
サプライズ的な感じがやっぱりいいよなぁと思いつつも、真衣の迷惑になるのも嫌なので無難に渡した方がいいのか。色々と考えても、なかなかこれといった答えは出せないなぁ。
「どうした明彦?」
教室でも延々と考えてそわそわとしている俺が気にかかったのか、夏樹が心配そうに話しかけてきた。
「ああ夏樹。いや、これは真衣には内緒なんだけど、実は……」
「あーそういえばあいつの誕生日か。で、プレゼントを渡したいと。いいねぇ、彼氏してんじゃん」
「夏樹は彼女いた時どう渡してたんだ? 参考がてらに聞かせてくれよ」
「俺? 別にこれといったものは渡してないぞ。あ、でもぜってーヤってるかな」
「……え? 何を」
「セックスだよ。愛情の確認がてらな」
聞きなれないその言葉を聞いて、俺はつい硬直してしまう。そ、そうか……夏樹はモテるし、もうそういうことしてて当然か。でも、彼女の誕生日にプレゼントも渡さずにそんなことするって、俺には考えもつかなかった。
「ああそうか。お前真衣とはヤってなかったな」
「ま、まぁまだそういうことは……」
あれ、夏樹にそんなこと話した覚えなんかないのにどうして断言するんだ? 俺らの関係性を見ればわかるってことなのか?
「あの快楽を知らないのはほんと、お前損してるよなぁ」
「そ、そんなに?」
「ああ。特に胸がでかいやつとやるのは最高だな!」
意気揚々に語る夏樹を見ていると、ふわふわしていた性行為に対する憧れがちょっと明確になった気がする。でも、俺にはまだそれをする気分にもなれないな……いざという時の責任も取れるわけじゃないし。
「なになに、何話してるの?」
「な、なんでもない!」
下品な話をしているところに、真衣がやってきた。すかさず俺は誤魔化してその場を流そうとする。夏樹も察したのか、それ以上続きを話すことはなかった。
「ぶー、私に話してくれてもいいじゃん。ケチ」
「た、大した話じゃないから。そうだ真衣、今日は手伝い早めに終わりそう?」
「今日? あー……え、えっと……今日も長くなりそう、かな。だから明彦、今日も待たなくて大丈夫だよ」
「そう? わかった」
真衣も色々と大変だろうし、無理に早めに終わらせて欲しいとはいえないよな。それじゃあ、俺も部活が終わった後に真衣の家に行くことにするか。
「ほんと、真衣もイロイロと大変だよなぁ」
「そ、そりゃあ文化祭の準備とか……うん。でも明彦、文化祭終わったら時間空くからさ! 約束通りピザいっぱい食べよ!」
「ああ! それじゃ、真衣も頑張ってるし俺も執筆頑張るよ!」
それから放課後。俺は懸命に執筆に勤しんでいた。というのも、真衣にプレゼントを渡すのがめちゃくちゃ緊張するのでそれを忘れるために集中している。
「先輩、いつにも増してタイピングは早いですね」
「真衣にプレゼント渡すの緊張しててさ。何かしてないとおかしくなりそうなんだよ」
「へぇ。でしたらいつも私が何かプレッシャーかけたほうがいいですかね?」
「それはやめてくれ。花蓮のそれは怖そうだから」
「そうですか。ところで先輩、実はもう6時なんですよ」
「え!?」
集中しすぎていたのか、俺はすっかり時間を失念していていつの間にか学校が終わる6時になっていた。おいおい、危うく学校が消灯されるまで残ってしまう勢いだったぞこれ。
「は、早く言ってくれよ!」
「すみません、集中している先輩の姿がとてもかっこよかったので」
「嘘だ、絶対あたふたするとこ見たかっただけだろ! 花蓮、すまんが今日は一人で後片付けしておいてほしい」
「仕方ないですね。貸し一つです」
ドタバタしながらも、なんとか荷物をまとめて俺は学校を後にし、真衣の家に小走りで向かう。心臓はもうばくばくしているし、緊張も半端ないんだけど、それ以上にちょっとワクワクしている。
色々悩んで選んだこのプレゼントを見て、真衣がどんな反応をするのか。笑ってくれるかな、もしかしたら泣いてしまうかな。そんな想像を捗らせながら、家の付近までようやくたどり着く。
「確かここらへんだったよな。あ、あったあった。電気ついてるしいるな」
真衣の家庭は両親共働きで一人っ子だから、家の明かりがなかったら待ってようと思ってたけど、部屋の電気がついていたのでいるっぽい。俺はチャイムを鳴らして真衣を呼び出す。
「……あれ?」
しかし、出る様子はなかった。手が離せない用事でもあるのか? それとも電気がつけっぱなしってことか? ……俺はほんの試しで、ドアを開けてみることにした。
「……開いた?」
いないのであれば鍵が閉まっているはずのドアが開く。そして、下駄箱には二足、靴があった。
「……え」
衝撃を加えられた風船のように、心臓がバクっと破裂しそうな勢いで飛び跳ねる。気のせいだと思いたい、思いたいけど……。男物の靴は、夏樹が履いているものと同じだった。
「……ど、どうして?」
なぜそれがあるのかという疑念と同時に、ある一つの仮説が俺の頭に過ぎる。そんなこと、あるわけない、あってたまるかと信じたかった俺は、自分が考えた仮説を否定するために、真衣の部屋へ静かに向かった。
嘘だよな。そんなことあるわけない。そ、そうだ……ないに決まっている。真衣は俺の彼女で、夏樹は俺の親友で……そ、そんなことが……あ、あるわけ……。
「……んんっ……あっ……ああっ」
けれど、現実は容赦無く降りかかってくる。真衣の部屋に近づくと、聞き覚えのある声が、聞き覚えのない喘ぎ声を出しているのが聞こえてきた。嫌だ嫌だ嫌だと心は叫ぶけれど、声は止むことはない。それでも、わずかの可能性にかけて俺はほんの少し、横開きである真衣の部屋の扉を開け、隙間を覗く。
「あっ……んんっ……夏樹……いいよ……気持ちいい……!」
白いチョークを叩きつけたかのように、頭の中が真っ白になる。心臓はもういつ破裂してもおかしくないと言えるぐらい、激しい動悸を繰り返し、足はもう木偶の坊とかし、ブルブルと震えることしかできなかった。
それも全て非情な現実が、俺の目に写ったから。だって、そこにはベットの上でお互いを抱きしめながら、一心不乱に快楽を貪る真衣と夏樹がいたのだから。
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