食レポ。
「…………お、上で金皿来た。多分オオトロ!」
さぁ食べようと気合いを入れたところで、その気合いに応えるかのように金色のお皿が流れて来た。
ふふ、これは運命。だから取らなきゃ。
「……それ、おいし?」
「僕は凄い好き。むしろコレを食べる為に来たとさえ言える」
「じゃぁ、ねまも」
オスシが二つ、数え方は確か『カン』だったかな? オオトロが二カン乗った金皿が三皿連続して流れて来たので、二皿取る。
本当は三皿取ろうと思ったんだけど、現場をモニターしていたシリアスから『警告。総取りは他の利用客に商品が届かなくなる為、マナー違反かと思われる。連続した皿は少し残す事を推奨する』と言われたので残した。
そうか。そうだよね。僕も楽しみにしてたオオトロが三皿も有ったのに、全部一人に持って行かれたらちくしょう! って成るよ。
「ふふ、ふひひ、おしゅしだぁ〜♪︎」
「…………また、こわれた」
「壊れて無いやい!」
僕はネマに、オスシはソイソースを付けて食べると教えながら、実演する。
備え付けられた小皿を一つ取って、これまた備え付けのソイソースボトルからちょろろーってソイソースを注ぐ。
チョップスティックでも良いけど、素手で摘んで食べても良いらしい。僕は今回、素手で行こうと思う。
脂が乗って照明を照り返す魅惑のオオトロを摘んで、ライスでは無く魚の方、『ネタ』と呼ばれる切り身にソイソースが着くように小皿に付けて、ちょんちょん…………。
「…………はむっ。…………うんみゃぁ」
「……ね、ねまもっ」
「ふぃ、
お口の中で甘い脂が溶けだし、しかし身が完全に溶けて消えるなんて無粋な真似はしなかった。
魚の旨味をまだまだその身に蓄えたネタを噛み締めると、繊細な食感がプツプツと何かが切れた事を教えてくれる。
でもそんな事は、噛んだ事で更に溢れ出した脂と旨味の前では些事である。
いや、違う。このプツプツ感は、ネタの脂と旨味を真に楽しむ為にあるアクセントだった。
全てが溶け合って、更にライスとソイソースまでが共謀して僕の舌をイジメ抜く。
脂と旨味がソイソースの塩気と風味に混ざる事で姿を変え、甘く優しかったポロンちゃんが酸いも甘いも噛み分けたポポナさんに成長してしまった様な大変身。
そこを更に、更に、全てを受け入れてしまう魅惑のライスが後押ししつつ、食べ応えまで与えちゃったからもう大変。
何が大変かって、僕の食欲である。こんなん無限に食べたいやろ。
「…………うみゃぁ」
「……おぃひぃ」
取り敢えず欲望に負けた僕は、ベルト下のベルト、アンダーベルトとでも呼ぼうか、それを利用する為のタブレット端末を操作した。オオトロ四皿追加デース☆
ネマと僕で二枚ずつ。
「…………な、なんだよあの食レポッ! くそっ、食いたくなるっ」
「アナタ? ダメよ?」
お隣さんに被害が出てた。と言うか僕の感想って口に出てしまってたのか。え、ポポナさんとポロンちゃんのくだりも聞こえてた? うわ恥ずかしっ…………。
申し訳無いから一皿くらいはプレゼントして差し上げたいが、此処の会計システムだとお皿ごとを送り付けるのは嫌がらせだろう。奢れてないし。
「…………らでぃあ、おすすめ、くれ」
「〝くれ〟じゃねぇよデコスケ野郎。とうとう敬語どころか命令形使い始めたなお前。僕のオススメはマグロとサーモンだ。カルボルトさんからは子供っぽいとか言われたけど、僕はコリコリ系よりしっとり系の方が好きなんだ」
「……………………? ねまたち、こども。こどもらしい、もんだい、ある?」
「…………せやった。僕、子供じゃん」
ネマからメッチャ不思議そうな顔された。そうじゃん。子供なんだから子供っぽくて良いじゃん。子供が子供っぽく無かったら何っぽければ良いんですかね?
まぁ良いや。取り敢えず、僕は自分の好きな物を注文したりベルトから取ったりして、バンバン皿を積んで行く。お隣のパパさんは羨ましそうにしてる。
すると、僕にアンダーベルトの使い方を教えてくれた子がムズがり始めた。
「ねぇパパぁ、ぼくもあれたべたい」
「ぐっ…………!」
自分だって食いたい。そんな気持ちが溢れる「ぐっ……!」だった。
しかし、アレってどれだろう。僕は弟君を見ながら、テーブルの上のオスシを順に指さして行く。
反応したのは五枚目の皿。ふむ、チュウトロか。
僕は弟君に手招きし、意味を悟った弟君は輝かしい笑顔で此方へ、可愛くトテテテテと歩いて来た。
急に席を立った子供にご両親が気が付いて止めようとするが、僕はその前にチュウトロをチョップスティックで掴んでソイソースに付けて、男の子のお口に入れてあげた。
「おいひー!」
「さっき教えてくれたお礼だよ。ありがとね」
「うん! おにーちゃんも、ありがとー!」
良い子である。
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